会社を辞める?続ける?決断できないときの判断のヒント・対処法

「会社を辞めたい」という気持ちがありつつもなかなか決断できないとき、何を基準に「会社を辞めるか?続けるか?」を判断するといいのでしょうか。迷いの要因をあぶり出し、これからのキャリアを前向きに考えるためのヒントを組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

まずは、会社を辞めたい理由を改めて整理する

会社を辞めるか、続けるかを判断する上で、まずは「辞めたい」と思う理由や、背景にある不満や不安を整理してみましょう。その内容に応じて、可能な対処や、本当に辞める決断をするかどうかは変わってくることがあります。

例えば、株式会社リクルートの調査(※)によると、転職前・現在共に正社員・正職員で20〜50代の転職経験者の退職理由上位には次の内容が入っています。

  1. 仕事内容への不満(29.7%)
  2. 人間関係への不満(29.2%)
  3. 賃金への不満(27.5%)
  4. 労働条件や勤務地への不満(23.3%)
  5. 成長機会がない(14.8%)
  6. 会社の将来性や雇用安定性への不安(12.7%)

(※)出典:株式会社リクルート「就業者の転職や価値観等に関する実態調査2022」
https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/assets/20220922_hr_01.pdf

会社を辞めたい理由別の対処法

先述したとおり、辞めたい理由によって、その理由や不満・不安を解消する方法は異なります。先ほど紹介した6つの退職理由ごとに、対処法や不満・不安の解消策を紹介します。いずれの方法も、まずは現職で実行可能かどうか考えてみましょう。考えた結果、難しい場合は「辞める」という決断をするのも一つの手でしょう。

「仕事内容への不満」が辞めたい理由の場合

まずは、仕事内容の何に不満を抱いているのか、より具体的に分析しましょう。例えば、「仕事量が多い」「自分には荷が重すぎる仕事を任されてしまっている」「やりがいを感じられない」「仕事が単調すぎる」「スキルアップできない」「十分な評価を受けられない」「成果が出ない」「先のキャリアを描けない」など、不満のありかが明らかになってくるでしょう。

そうして明らかになった不満は、現職で解消可能か、改めて考えてみましょう。例えば「上司に相談して仕事量や目標設定を見直す」「社内公募などを活用して部署異動を図る」「社内研修などを活用して資格取得やスキルアップを図る」などの手段を取れそうでしょうか。現職でまだできることがあると思えるようなら、アクションを起こしてみてもよいかもしれません。

「人間関係への不満」が辞めたい理由の場合

この場合も、まずは人間関係の何に不満があるのか、具体的に分析しましょう。例えば、「職場でのコミュニケーションが少ない」「仕事の進め方についての考えが周囲と合わない」「そもそも社風が合わない」など、不満のありかを明確にするのです。

そうして明らかになった不満は現職で解消可能なのか、改めて考えてみましょう。例えば「上司や同僚と対話を図る」「自身の考え方を少し変えてみる」「上司にチーム変更を相談する」「社内公募などを活用して異動を図る」などの手段を取れそうでしょうか。これらの方法にトライできそうだと思えるなら、アクションを起こしてみてもよいでしょう。

「賃金への不満」が辞めたい理由の場合

この場合も、まずは賃金に関して具体的にどのような不満を自分が抱いているのか分析してみましょう。例えば、「賃金が仕事内容に見合っていない」「成果が正当に評価されていない」「同業他社に比べて賃金水準が低く、昇給に伴う上昇率も低い」「必要な金額をもらえていない」など、さまざまな背景が考えられます。

そうして明らかになった不満は、現職でアクションを起こすことで解消できそうか確認してみましょう。例えば「上司や人事に評価の要点を確認する」「上司と目標設定について目線合わせをする」「自身の強みをより発揮できる部署に異動する」などの方法により、適切な評価を得て賃金アップが実現する場合があります。あるいは、昇進・昇格や資格取得によって希望する金額をもらえるようになるのであれば、それらを目指して目標を設定し、行動することも一つの方法です。

「労働条件や勤務地への不満」が辞めたい理由の場合

この場合も、具体的な不満のありかを分析します。例えば「残業が多い」「有給休暇が取りづらい」「通勤時間が長い」「始業時刻が早い」「リモートワークなど、柔軟な働き方ができない」「副業ができない」「転勤が多く将来設計が困難」など、さまざまなものが考えられます。

そうして明らかになった不満は、現職で解消可能か確認してみましょう。例えば「上司や同僚と調整してリモートワークの頻度を高める」「勤務地や職務・勤務時間等を限定した雇用形態に転換する」「仕事の生産性を高められるよう自身や自部署の仕事の進め方・仕組みを変える」「社内公募などを活用して部署異動を図る」など、不満の内容に応じたアクションを取れそうであればトライしてみましょう。

「成長機会がない」が辞めたい理由の場合

この場合も、具体的な不満のありかをまずは分析しましょう。例えば、「仕事内容や任される役割が変わらない」「研修制度やスキルアップ支援など、社内の育成の仕組みが不十分」「目指すキャリアにつながる仕事・職種がない」「社内公募やジョブローテーションの制度がない」など、成長機会がないと感じている要因を分析するのです。

そうして明らかになった不満は、現職で解消可能か確認してみましょう。例えば「上司と面談して目指すキャリアや成長を共有し、必要な経験・スキルの確認や目標のすり合わせをする」「ロールモデルを社内で見つけるサポートをしてもらう、助言をもらう」などは、現職でできるアクションの一つです。また、副業や資格取得によって目指すキャリアに必要な経験・スキルを身につけるなどの方法もあるでしょう。

「会社の将来性や雇用安定性への不安」が辞めたい理由の場合

この場合も、不安のありかをまずは明らかにしましょう。例えば、「業界全体では伸びているが自社の業績が振るわない」「全社業績は安定しているが所属部門では売上が伸び悩んでいる」「事業縮小やリストラなどが行われている」「ガバナンスやリスクマネジメント不全により不祥事が生じている」「離職率が高い」「昇進・昇格・昇給が難しい状態が続いている」「賞与が業界平均などと比較して少ない」「新しい技術や制度を取り入れず組織が硬直化している」など、不安のありかはさまざまです。

その上で、その不安は現職で解消可能か考えてみましょう。例えば「上司などに事業戦略やリスクマネジメントなど会社の方針や見通しを確認する」「社内の成長部門への異動を図る」「業績貢献や組織改善への提案や取り組みを行う」「現職だからこそ得られる経験・スキルの最大化を図る」などのアクションが考えられます。

会社を辞める決断をした場合に、次のキャリアに向けて準備したいこと

不満や不安を解消する手段として、現職でアクションを起こすのではなく、またはアクションを起こしたが解消できず会社を辞める決断をした場合、次のような準備を進めていくといいでしょう。

退職に向けた段取りを確認する

退職までに何を、どのくらいの期間でやるべきか、いつごろ退職したいか、そのためにはいつまでに退職の申し出をすべきかなど、やるべきことの洗い出しと退職までの段取りの確認・検討を進めましょう。

その際、次の点を押さえておくと、より段取り良く退職に向けて動き出せるでしょう。

  • 就業規則を確認し、退職の申し出や退職届の提出など、退職受理までに掛かる期間を把握しておく。
  • 業務の引き継ぎを行う期間や有給休暇の消化期間も踏まえて、無理のない退職希望日を伝える。
  • 今後の関係性を踏まえて、また、自分も納得のいく状況で退職できるよう、退職時期は繁忙期を避けたり、前向きな退職理由を伝えたりして、できるだけ円満退職を目指す。
  • 就業規則のボーナス支給時期、退職金、年末調整などの項目も確認しておく。

転職に向けた準備を進める

次のキャリアステップとして他社への転職を視野に入れていて、退職後、すぐに企業への応募を始めたい場合、在職中に次の準備を進めておけると、退職後スムーズに転職活動を進められるでしょう。

  • 転職活動の進め方やスケジュールの目安を確認しておく。
  • 自己分析や業界・企業の情報収集、応募書類の作成などを少しずつ進めておく。
  • 家族・パートナーなどに相談する必要がある場合は相談しておく。

もちろん、退職後に情報収集から始めても構いませんし、退職準備と並行して企業への応募を始めても構いません。

いずれの場合も、辞めたい理由を分析した際に明らかになった不満や不安をもとに、転職によって実現したい状態や働き方を考え、ポジティブな転職理由として捉え直すことで、納得度の高い出会いにつながることもあります。

なお、退職準備と並行して企業への応募を進めていく場合、次の点を実践すると、業務と並行して進めやすくなるでしょう。

  • 転職ないし退職したい時期から逆算して活動計画を立てる。
  • 転職先で実現したいことや転職の目的を明確にした上で、仕事内容や収入、待遇等の希望条件とその優先順位をある程度決めておく。
  • 業務時間外や休日などを有効活用して転職準備や面接の時間をつくる。
  • 在職中の企業での人間関係を有効に保つ。

会社を辞める判断に迷ったら転職エージェントやスカウトサービスを使ってみることも一案

転職エージェントに相談してみると、さまざまな不安の解消につながる情報やアドバイスを得られる可能性があります。希望条件にマッチする求人の紹介を受けられるほか、自身では想定していなかった業界や企業で経験・スキルが活かせることがわかるケースもあります。

また、スカウトサービスに登録しておくと、求人企業や転職エージェントから直接スカウトを受け取ることができます。どのような企業が自身の経験・スキルを求めているのかがわかり、今後のキャリア構築や転職の方向性がつかめるかもしれません。

リクルートダイレクトスカウトは、リクルートが運営する会員制転職スカウトサービスです。リクルートの求職活動支援サービス共通の『レジュメ』を作成すると、企業や転職エージェントからあなたに合うスカウトを受け取ることができます。レジュメは経験やスキル、希望条件に関する質問に答えるだけで簡単に作成可能です。一度登録してみてはいかがでしょうか。
アドバイザー

粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。