退職してから転職活動を始めるのは不利?退職後・在職中の転職活動のメリット・デメリットと進めるポイント

採用面接の様子

現職を退職してから転職活動をすることについて、「選考で不利になる可能性はないのか?」などと不安を覚える方は少なくないでしょう。その実態や、退職後に転職活動をするメリットとデメリット、退職後の転職活動をスムーズに進めるポイントなどについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

退職してから転職活動をしても、不利にはならない

前職を退職した状態で転職活動をしている求職者について、採用活動を行っている企業がネガティブに見ることはほとんどありません。企業によっては、求める人材に合致すれば、早期に入社してもらえる人材として評価される場合もあります。

また、株式会社リクルートが2022年に13,240人の就業者に対して行った調査(※1)でも、転職前と転職後ともに正社員・正職員である20〜50代の転職経験者のうち、「前の勤務先を退職した後に、現在の勤務先が決まった」人は44.1%を占めており(n=3,998)、およそ5人に2人は、退職後に転職先が決まっているという実態があります。

ただし、離職期間が1年などの長期に渡る場合は、企業からスキルの陳腐化や仕事への意欲、転職先が決まらない要因などについて懸念や疑問を抱かれるケースがあります。このような点も含めて、退職後の転職活動と在職中の転職活動、それぞれのメリット・デメリットなどを把握し、自身の状況と照らし合わせてどちらを選択するのがベターかを検討することが重要です。

出典(※1):株式会社リクルート「就業者の転職や価値観等に関する実態調査2022」

退職してから転職活動をするメリット・デメリット

それでは、まずは退職してから転職活動をするメリットとデメリットを見てみましょう。

メリット

退職後に転職活動を行う主なメリットには、次の3つが挙げられます。

・転職活動に集中して取り組める

・面接の日程を調整しやすい

・内定後、入社日を調整しやすい

転職活動には、情報収集や応募書類の作成、1社につき複数回にわたる面接など、様々な面で時間が必要です。退職後は、在職中に比べて時間の面でも体力の面でも余裕があるため、これらに集中して取り組むことができるでしょう。

また、平日の昼間などの面接にも対応しやすいという点もメリットです。中途採用の選考では、早ければ応募から数日で面接を実施するケースもあるため、こうした急なスケジュールにも対応しやすいでしょう。中途採用は募集人員そのものが少なく、選考を進めた順に採用枠が埋まっていく可能性もあり、できる限り早く選考を進めておくほうが有利になることもあります。

さらに、内定後には、在職中と異なり退職交渉や退職日の決定をする必要がないため、入社日に関する内定先の要望に応えやすいでしょう。企業によっては、事業計画や採用計画に添って働き始めることができる人材を採用したいケースもあります。

デメリット

退職後の転職活動には、以下のようなデメリットもあります。

・安定した収入を得られない

・離職期間が長期化した場合、企業から業務にあたっての影響がないか確認される場合がある

離職中は安定した収入を得られないため、生活への不安や焦りからミスマッチの企業を選んでしまうケースがあります。

また、転職活動の期間の目安は、一般的に3カ月程度とされていますが、希望に合う企業から内定を得られず、長引くケースもあります。その結果、離職期間が1年などの長期に渡った場合、企業から「その期間に何をしていたのか」「スキルが陳腐化していないか」「仕事への意欲が低いのではないか」「転職先が決まらなかった背景には何らかの要因があるのではないか」などの疑問や懸念を抱かれ、企業から業務にあたっての影響がないか確認される場合があります。

在職中に転職活動をするメリット・デメリット

次に、在職中に転職活動をする場合のメリットとデメリットも見てみましょう。

メリット

在職中に転職活動を行う主なメリットには、次の3つが挙げられます。

・収⼊面の不安がない

・ブランクなく次の仕事に就ける

・現職にとどまる選択肢がある

在職中の場合、希望の企業から内定を得られず、転職活動期間が長引いたとしても、現職の給与で定期収入を得ることができるため、収入面に不安を覚えずに納得がいくまでじっくりと転職活動に取り組むことができます。

また、在職中に転職活動を行えば、ブランクなしで次の仕事に就けることも、メリットの1つと言えるでしょう。

さらに、「現職にとどまる」という選択ができる点もメリットと言えます。希望に合う転職先が見つからないケースもありますし、様々な企業を見る中で「現職の職場のほうが待遇や環境が良い」と気付くケースもあります。

デメリット

一方、在職中の転職活動には、以下のようなデメリットもあります。

・現職の業務と並行して行うため、活動時間が限られる

・退職時期と入社時期の折り合いがつかない場合がある

在職中の場合、現職の業務と並行して転職活動を行わなければならないため、転職活動に割くことのできる時間が限られ、集中もしにくいと言えます。現職の業務時間内に面接を設定することが難しい点もデメリットと言えるでしょう。

また、希望する企業から内定を得ても「現職を退職する時期」と「内定先が求めている入社時期」の折り合いがつかないケースもあります。入社予定日に間に合わせるために、自己都合のみで退職予定日を決めようとすれば、現職の職場とトラブルになる可能性もあるでしょう。

転職活動をスムーズに進めるためのポイント

退職後・在職中を問わず、転職活動をスムーズに進めるためのポイントとして、次の5つが挙げられます。退職後と在職中のどちらであれば、ポイントを押さえて転職活動を進められるかも、判断材料になるでしょう。

転職したい時期から逆算して計画する

先述したとおり、転職活動にかかる期間は、準備から内定・入社まで一般的に3〜6カ月程度とされています。これを踏まえた上で、転職したい時期や、現職を退職しやすい時期から逆算して計画を立てると、よりスムーズに転職活動を進められるでしょう。引き継ぎのしやすさなども考慮して、現職の繁忙期や、担当プロジェクトの終了時期なども踏まえて考えることがポイントです。

転職の目的を明確にし、希望条件に優先順位をつける

転職先で実現したいことや、転職の目的を明確にした上で、仕事内容、収入、待遇、ワーク・ライフ・バランス、社風・企業文化、キャリア形成などにおける希望条件を考えておきましょう。その上で、それぞれに優先順位をつけておくと、並行して複数の企業の選考を受ける際に比較・検討しやすくなります。また、内定を承諾するかどうかを迅速に判断する際の材料としても役立ちます。

準備を疎かにしない

転職の目的の明確化や希望条件の優先順位づけに加えて、自身のキャリアの棚卸しを行い、今後のキャリアに生かすことのできる経験やスキルを整理することも転職準備として重要です。加えて、企業研究なども行い、求める人物像と自身の強みやスキル・経験が重なる部分も整理しましょう。

そして、応募にあたっては、キャリアの棚卸しや企業研究で得た成果をもとに、アピールできる内容を応募書類に的確に表現します。また、面接に向けては、よくある質問に対する回答内容を整理し、自分の言葉で話せるように準備しておきましょう。

在職中の場合、転職活動中であることを公にしない

在職中に転職活動を行う場合、職場に知られないよう内密に進めることが基本です。転職活動をしていることが知られると、社内で居心地が悪くなったり、現職にとどまる判断をしづらくなったりする可能性があります。

在職中の企業での人間関係を良好に保つ

在職中に転職活動を行う場合、退職交渉の際にトラブルにならないよう、日頃から職場の人間関係を良好に保つことも重要です。応募企業がリファレンスチェックを実施する可能性も踏まえ、留意しておきたい点です。

退職してからの転職活動が向いているケース、向いていないケース

先述したメリット・デメリットや、転職活動をスムーズに進めるためのポイントも踏まえて、退職してからの転職活動が向いているケースと向いていないケースを挙げるとすると、あくまで一例ですが、次の状況にある人などがあてはまります。

退職してからの転職活動が向いているケース

次の状況にある人などは、退職してからの転職活動が推奨される、あるいは、向いている場合があります。

・現職が多忙すぎて、転職活動をまったく進められない

・現在の職場でさまざまなハラスメントがあり、心身の不調を引き起こす可能性があるが、将来的にも解決が難しい

・転職活動の流れやスケジュールのある程度の把握や、転職で重視する条件の検討、キャリアの棚卸し、希望する業界・職種・企業の情報収集などの下準備がすでにできている

・離職期間中の生活費の確保など、経済的なリスクヘッジができている(雇用保険の基本手当(失業保険)も加味しつつ、数カ月分の生活費の余裕があることが目安)

・家族やパートナーの理解を得られている

・セルフコントロールに自信があり、退職後、ブランク期間を必要以上につくらずに転職活動に切り替えられる

退職してからの転職活動は向いていないケース

一方、退職してからの転職活動が向いていない人としては、次の状況にある人などが挙げられます。

・離職期間中の生活費に不安がある

・「とりあえず退職したい/区切りをつけたい」など、在職中にできる準備をせず、勢いで、あるいは無計画に退職しようとしている(情報収集や自己分析、応募書類作成などは在職中でも可能)

・家族・パートナーの強い反対がある

・セルフコントロールに自信がない(企業から業務にあたっての影響がないか確認される場合がある)

転職活動の第一段階である、転職で重視する条件の検討やキャリアの棚卸し、希望する業界・職種・企業の情報収集、応募書類に記入する内容の整理には、一定の時間が必要です。そして、これらは在職中にも進められることであるため、これらに割く時間をまったく確保できない場合やハラスメントなどにより心身の不調をきたしそうな場合を除き、できれば、在職中に進められると、退職後すぐに企業への応募や選考に注力できるでしょう。

退職してから転職活動をする場合の注意点

退職してから転職活動をする場合、注意点として次の4つが挙げられます。

生活費を最低数カ月分は準備しておく

自己都合で退職する場合、雇用保険の基本手当(失業保険)を受給できるようになるまで2カ月以上かかります。この点を踏まえ、金銭面の不安を抱かずに転職活動に注力できるよう、少なくとも数カ月分の生活費を準備しておくと良いでしょう。

あるいは、転職先がすぐに決まるとは限らないことを考慮すると、雇用保険の基本手当(失業保険)と合わせて半年分程度の生活費が用意できていると、より安心でしょう。

誰かに相談しながら転職活動を進める

誰にも相談せずに一人で転職活動を進めていると、どうしても自分の興味・関心に合致する企業や業界だけに目が向きがちになります。その場合、とくにハイクラス層は職種やポジションごとの募集人数が少ないケースも多いため、なかなか内定を得られないケースも出てきます。

自分の興味・関心だけでなく、これまでのキャリアを基に少しピボットするような選択肢や、自分では気づかなかったスキル・経験の生かし方を知るためにも、転職エージェントや、周囲にいる転職経験者に相談することをお勧めします。プロの視点や、転職経験のある他者の視点を知ることで、転職市場の相場観や、自分の認識とのズレなども把握できるでしょう。

応募チャネルを複数持つ

先述したとおり、とくにハイクラス層の場合、職種やポジションごとの募集人数が少ないため、希望する条件に合った仕事や企業に出会いづらい、あるいは、出会ってもなかなか内定を得られない場合があります。

したがって、情報収集や応募のチャネルを複数持ち、自分に合う求人に出会う機会を増やすことをお勧めします。転職エージェントやスカウトサービス、リファラル採用、ビジネスSNS、企業ホームページへの直接応募など、活用できるチャネルは積極的に活用しましょう。

ブランクが長引く場合、理由を誠実に伝える

様々な事情により、ブランクが長引く場合もあるでしょう。ブランクが不利になるかどうかは応募企業次第ですが、1年以上など長期にわたる場合、「その期間に何をしていたのか」と疑問を持たれる可能性があります。

その場合、理由を誠実に伝えましょう。プライベートな事情の場合、自身が伝えられる範囲で構いません。

また、転職活動がうまくいかないまま時間が経ってしまった場合、その理由を自分なりに振り返り、反省点や課題、改善のために取り組んでいることなどを伝えると良いでしょう。併せて、ブランク期間に成長した点や変化した点、スキルアップのために努力していることなども伝えて就業意欲の高さをアピールすることも大事です。

転職活動の進め方に迷ったときは、転職エージェントの活用を

転職エージェントでは、求職者に代わって求⼈情報を選定し、スキルや希望に合った企業を紹介します。退職後だからこそ、第三者に自身のキャリアや経験、培ってきたスキルを踏まえた選択肢の提示を受けられると、より広い視野で今後のキャリアを考え、選択肢を幅広く持つことができるでしょう。

また、履歴書や職務経歴書の作成サポートを受けたり、面接対策をしてもらったりすることも可能です。必要に応じて活用できると、転職活動の後押しになるでしょう。

リクルートダイレクトスカウトは、リクルートが運営する会員制転職スカウトサービスです。リクルートの求職活動支援サービス共通の『レジュメ』を作成すると、企業や転職エージェントからあなたに合うスカウトを受け取ることができます。レジュメは経験やスキル、希望条件に関する質問に答えるだけで簡単に作成可能です。一度登録してみてはいかがでしょうか。
アドバイザー

粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。