
「毎日の長時間勤務に疲れた」「仕事が忙しすぎてプライベートの時間が取れない」、そのような悩みを解消する方法の一つが転職です。
しかし、「転職すれば理想の働き方は叶う?」「本当にプライベートとのバランスは取れる?」など、不安に思う方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、転職によって勤務時間や働き方がどう変わるのか、実際に転職を経験した方のお声をもとに解説します。
目次
現代の働き方はこんなに進化している!

現代の働き方は、IT技術の急速な発展や社会の多様化に伴い、確実に進化を遂げています。
テレワーク(※)や週3~4日勤務、フレックスタイム制やフリーアドレスなどを導入する企業が増え、場所や時間に縛られにくい柔軟な働き方も選べるようになってきました。
※「テレワーク」と「リモートワーク」は一般的には同じ意味の言葉として使用されています。ただし、「リモートワーク」という言葉の定義はありませんが、「テレワーク」は「ICT(情報通信技術)を利用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」として総務省が定義しています。この記事では「テレワーク」という言葉を使用させていただきます。
限定正社員(多様な正社員)として、勤務地、職務、勤務時間などを限定する働き方も普及しつつあります。
とはいえ、実際に柔軟な働き方ができている人の割合は、まだまだ低いのが現状です。
例えば、国土交通省が公表した「令和5年度のテレワーク人口実態調査」によると、雇用型テレワーカーの割合は全国で24.8%となっており、コロナ禍以降はむしろ減少傾向も見られます。
また、厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査」によると、フレックスタイム制を導入している企業は全体の6.8%にとどまり、その背景には「経営層の理解が不十分」「長時間労働が前提の社内文化が根強い」「顧客対応など業務特性上フレキシブルな制度が導入しづらい」など、さまざまな理由があるようです。
しかし、将来的な労働人口の減少が見込まれる日本では、労働者が自分に合った働き方を選択できる、柔軟な社会が必要とされています。
「通勤時間を短縮してストレスを減らしたい」「子育てや介護と仕事を両立したい」「趣味やスキルアップの時間を確保したい」といった労働者の多様なニーズに応えることは、企業としても優秀な人材の確保・定着、さらには労働者の能力アップ、人脈形成などにもつながり、生産性や業績の向上が期待できるでしょう。
テレワークやハイブリッドワーク(オフィスワークとテレワークを組み合わせた働き方)、フレックスタイム制などが一層普及することで、地方への移住や副業・兼業といった選択肢も増え、働き方は今後もより一層進化・多様化すると考えられます。
なお、テレワークは、在宅勤務、サテライトオフィス勤務、モバイル勤務をまとめた概念です。この記事では在宅勤務を中心に説明していますが、サテライトオフィスやモバイルワークも同様に考えていただければと思います。
勤務時間・働き方に不満や悩みはありますか?

勤務時間や働き方に不満を抱えていても、なかなか声を上げられない方は多いものです。
続いては、実際に不満や悩みを抱えている方から寄せられたリアルな声と、社会保険労務士の玉上氏によるアドバイスを紹介します。
「定時退社が推奨とされているのに、実際は帰れない…」
私の職場では「定時退社を推奨」とされています。しかし、実際には業務量が多すぎて、定時で帰れることはほぼありません。周囲の上司や同僚も当然のように残業しているため、自分だけ早く帰るのは気が引けてしまいます。また、業務時間外のメール対応も求められ、夜や休日でもスマホを手放すことができません。プライベートの時間にも仕事のことを考えなければならず、心が休まらないのも不満です。改善を求める声は上がっているものの、なかなか変わる気配がなく、転職も視野に入れて考えています。
(東京都 30代 男性)
【社労士のアドバイス】
定時で帰れないといった、業務時間外や休日のメール対応の恒常化は、人員配置や組織としての仕事に対する考え方・スタンスに、問題がある可能性が高いです。また、休日に対応する体制が整っていない労務環境も問題です。
場合によっては、「メールの待ち時間」が「使用者(会社)の指揮命令下にある時間」として、労働時間と扱われる可能性も考えられます。
定時で帰れない点や、休日中の連絡について上司に相談し、それでも難しいようであれば、転職も一つの選択肢となるでしょう。
「シフト制なのに希望が通らず、連勤ばかり…。」
飲食業界で働いていますが、慢性的な人手不足の影響で希望休がほとんど通りません。特に土日や祝日は出勤を求められ、気が付けば10連勤以上していることもあります。遅番と早番が連続することも多く、十分な睡眠が取れないまま仕事に向かう日も多いです。人員補充をお願いしても「求人を出しているけど応募が来ない」と言われるだけで、改善の見込みがありません。このまま働き続けるのは体力的にも厳しく、長く続けられないと感じています。
(大阪府 20代 男性)
【社労士のアドバイス】
「希望休がほとんど通らない」とのこと、希望休が通るか否かは、法律で定められていませんが、使用者は、少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければならないと法律で定められています。(労働基準法35条)
また、10連勤以上勤務や、遅番と早番の連勤が続くといったケースでは、体調への影響が懸念されます。
そのため、上司や会社に相談しても改善が見込めない場合は、転職を検討するのも一つの方法でしょう。
「フレックスタイム制ではあるものの、利用しづらい雰囲気」
フレックスタイム制の職場で働いています。基本的に勤務時間は11〜20時で、コアタイムは11〜16時です。定時より早く帰る場合は上司に相談しなければならず、仮に早く帰れるとしてもほかの社員はほぼ定時まで残っているため、フレックスタイム制を利用しづらい雰囲気があります。忙しい月は残業も45時間を超えていて、23時頃まで残業することもあり、退勤後はろくに家事もできず、お風呂に入って寝ることしかできません。
(東京都 20代 女性)
【社労士のアドバイス】
フレックスタイム制は、コアタイムを除き始業・終業時刻を労働者が決定できる制度であり、就業規則で次のように明記されているはずです。
「フレックスタイム制が適用される従業員の始業・終業時刻は、従業員の自主的決定に委ねるものとする」。
すなわち「定時より早く帰る場合は上司に相談する」こと自体が就業規則違反です。
「利用しづらい雰囲気」にのまれて無理を重ねる前に、職場の上司・同僚や人事部に相談することが大切です。
「テレワークを希望していたのに…」
転職時に「テレワークが可能」と聞いていたため、自由な働き方ができると思って入社しました。しかし、実際には「対面のほうが仕事が進む」という理由で、ほぼ毎日出社するよう指示されています。リモートで働く人に対して「本当に仕事しているのか?」という疑念の目が向けられるため、在宅勤務を希望する社員も減っています。テレワークを前提に転職したのに、結局は出社しなければならない状況にストレスを感じています。
(福岡県 40代 男性)
【社労士のアドバイス】
テレワークについて、どのような規定になっているのか、一度、貴社の就業規則をチェックしてみてください。一般的には、次のような定めになっていると思います。
(以下の就業規則は厚生労働省の「テレワークモデル就業規則」によるもので「在宅勤務」として記載されていますが、、サテライトオフィス勤務、モバイル勤務を含む「テレワーク」について同様の定めがされていることが多いと思われます。)
「在宅勤務の希望者は、所定の許可申請書に必要事項を記入のうえ、1週間前までに所属長から許可を受けなければならない。会社は、業務上その他の事由により、前項による在宅勤務の許可を取り消すことがある」。
就業規則のとおり、場合によってはテレワークが認められないこともあり得ます。確実にテレワークができる職場を望まれるようであれば、どの程度テレワークができるのかを事前に確認し、転職も選択肢として検討されるのも一つでしょう。
【転職経験者の声】ワーク・ライフ・バランスはどう変わった?

転職によって働き方が大きく変化した方も多数います。
今回は転職経験者5名の方に、転職前と転職後の違いや、どのようなメリットを感じているのかを具体的にうかがいました。
転職経験者の声①
前職では通勤に片道1時間半かかり、満員電車のストレスに加え、制服着用のため早めに出勤しなければならず、着替えの時間も無給でした。
転職後は、自宅から30分で通える会社に勤務し、私服OKのため出勤前の余計な準備が不要になりました。
残業代も適正に支払われるようになり、業務量も調整してもらえるため、プライベートの時間を確保しやすくなりました。
睡眠時間も十分に取れ、家事や資格勉強にも時間を割けるようになり、生活の質が大きく向上したと感じています。
(東京都 30代 女性)
転職経験者の声②
フレックスタイム制の会社に転職し、ワーク・ライフ・バランスが格段に良くなったと感じています。
自分の判断で退勤時刻を決められるので、プライベートな用事がある日や疲れている日は早く退勤したり、早めに出社をして作業に集中したり、仕事にメリハリをつけられるようになりました。
おかげで趣味を楽しむ時間や、家事をする時間も確保できるようになり、毎日が充実しています。
(東京都 20代 女性)
転職経験者の声③
以前は、土日も仕事がある職場で働いていました。平日に休みは取れるものの、友人や家族と休みが合わず、旅行やイベントに参加するのが難しい状況でした。
転職をして、土日祝休みの会社に入社しました。土日祝がしっかり休めるので、友人と予定を合わせやすくなり、家族とも過ごす時間が増えました。
趣味のキャンプやスポーツにも取り組めるようになり、ストレス発散もできています。仕事のモチベーションも上がり、充実した日々を送っています。
(神奈川県 20代 男性)
転職経験者の声④
前職は、医療系の職場でシフト制の勤務でした。
早番と遅番が混在しており、生活リズムが整わず常に疲労感を抱えている状況です。人手不足で休日出勤や残業も多く、家族との時間を確保できない状況が続いていました。
現在は、固定時間制で働ける会社に転職しました。定時退社が基本で、急なシフト変更もなくなり、生活リズムが安定したと感じています。
休日もきちんと取得できるため、子どもと過ごす時間が大幅に増えました。健康面でも良い変化があり、ストレスも軽減され、仕事のパフォーマンスも向上しています。
(大阪府 40代 男性)
転転職経験者の声⑤
前職は営業職で、勤務時間が長く、休日も電話対応が必要でした。
クライアント対応があるため、自分の都合でスケジュールを調整することが難しく、精神的な負担も大きかったです。
転職後は、テレワークが可能な職場に入り、フレキシブルな働き方ができるようになりました。
通勤時間がなくなった分、家事や趣味の時間が増え、仕事の効率も向上しています。休日は仕事を完全に切り離せるので、リフレッシュする時間をしっかり確保できるようになりました。
(福岡県 30代 女性)
効果的なタイムマネジメント:仕事の生産性を上げる時間活用術

ワーク・ライフ・バランスを実現するためには、「限られた時間をどう使うか」が大きなポイントになります。
効率的な働き方を身に付ければ、残業を減らして生産性を高めることができ、仕事とプライベートとの両立がしやすくなるでしょう。
ここでは、タイムマネジメントの基本と具体的なテクニックを紹介します。
タイムマネジメントの基本的な考え方
タイムマネジメントとは、限られた時間を最大限に活用し、効率的に業務を遂行することで生産性を高める時間管理の方法です。
1日や1週間、さらには1ヶ月単位で計画を立て、どのタスクを先に行うか、どこで休憩やオフの時間を確保するかを明確にしておきます。
タイムマネジメントのスキルを高めることが、ワーク・ライフ・バランスの実現につながります。
具体的な時間管理テクニック
タイムマネジメントを実践するうえで重要なのは、タスクの「見える化」と「優先順位付け」です。
タスク管理ツールを使うと、タスクごとの期限や進捗を一元管理でき、漏れや重複を防ぐことにつながります。
会社から利用を許可された端末にて、スマホアプリやクラウド連携を活用すれば、外出先でも状況を把握しやすくなるでしょう。
効果的なタイムマネジメントのメリット
効果的なタイムマネジメントを身に付けると、日々の業務効率が高まり、残業時間の削減やプライベートの時間確保につながります。
優先順位を明確にすることで不要なストレスを減らし、集中力や生産性が向上するでしょう。
限られた時間を最大限に活用することで、自己啓発や趣味などの活動に充てられる時間が増え、ワーク・ライフ・バランスの充実につながります。
その結果、仕事へのモチベーションも高まり、キャリアアップにも良い影響が生まれるはずです。
勤務時間を理由に転職を決めた後の流れ

現在の職場での勤務時間に不満を感じ、転職を決意した場合、次の職場で理想の働き方を実現できるかどうかを慎重に判断することが重要です。
転職によってワーク・ライフ・バランスを改善できる可能性はもちろんありますが、事前に十分な準備と情報収集を行うことで、より満足度の高い転職が実現できるのではないでしょうか。
続いては、転職を実現させるための流れを解説します。
転職のメリット・デメリットを考える
転職には多くのメリットがありますが、同時にデメリットも考慮する必要があります。
【メリット】
・新しい環境でワーク・ライフ・バランスが向上する
・残業時間が減れば、プライベートな時間が増える
・職場のストレスが軽減され、心身ともに健康的な働き方ができる
【デメリット】
・新しい職場に適応するまでの期間が必要
・人間関係の構築に時間がかかる
・転職活動には時間と労力が必要
メリットだけに目を向けるのではなく、転職後の課題についても考えたうえで、慎重に決断することが大切です。
転職の目的を明確にする
転職を実現させるためには、「なぜ転職をしたいのか」をはっきりさせることが重要です。
長時間労働を減らしたい、フレックスタイム制やテレワークを活用したい、休日を確保してプライベートを充実させたいなど、転職の目的は人それぞれです。
目的が明確であれば、転職活動の方向性がぶれにくくなり、希望に合った職場を見つけやすくなるでしょう。
候補先の企業の労働条件を確実にチェックする
企業が労働者を募集・採用するときには、労働条件の明示が義務付けられています(労働基準法第15条)。
労働条件通知書や雇用契約書などで希望の労働条件が満たされているか、あいまいな点がないかなど確実にチェックしましょう。
契約期間、就業の場所、従事すべき業務の内容、始業・終業時刻(フレックスタイム制の場合はその旨明記されている)、休日、休暇、賃金などが書面で示されるはずです。
求人広告などではスペースの関係で詳細が記載されていないことはありますが、原則として面接などで求職者と最初に接触するまでに、すべての労働条件を明示すること、面接などの過程で当初明示した労働条件が変更となる場合は、変更内容を明示することなどが企業に義務付けられています。
企業の制度だけでなく実態をリサーチする
求人情報には「残業少なめ」「テレワーク可」といった魅力的な文言が並んでいます。
しかし、実際には業務量が多すぎて定時退社が難しかったり、形式だけのテレワークでほとんど活用されていなかったりするケースもあります。
転職活動では、企業の制度だけを見て判断するのではなく、実態をしっかりとリサーチすることが大切です。
企業の口コミサイトで社員の声を確認したり、転職エージェントを利用して内情を聞いたりすることで、よりリアルな情報を収集しましょう。
自分のスキルや経験を活かせる職場を探す
勤務時間や働き方だけを重視して転職すると、仕事内容や給与面でのミスマッチが起こる可能性があります。
やりがいを感じられない仕事ではモチベーションを維持できず、給与が下がれば生活の質を落とさざるを得なくなるでしょう。
転職後の満足度を高めるためには、自分のスキルや経験を活かせる仕事であるかどうかも重要なポイントです。
希望する勤務環境だけでなく、自分がどのような分野で貢献できるのかを意識しながら、転職活動を進めましょう。
スカウトサービスを活用する
現在の仕事が忙しく、転職活動の時間が取れない場合には、スカウトサービスを活用するのも一つの方法です。
自分で求人を探す必要がなく、企業側から直接オファーを受けられるため、忙しい日々のなかでも効率的に転職活動を進めることができます。
特に、ワーク・ライフ・バランスを重視する転職では、スカウト時点で希望条件に合う企業を選んでもらえるため、ミスマッチを防ぎやすくなるでしょう。
リクルートダイレクトスカウトなら働きながら転職活動ができる!自分に合った働き方を見つけよう

転職によって、勤務時間・働き方に対する不満・悩みを解消できる可能性があります。
より良い働き方を実現するためには、転職の目的を明確にし、企業の実態をよく調べることが大切です。
忙しいなかでも効率良く転職活動を進めるには、スカウトサービスの活用も一つの方法です。
リクルートダイレクトスカウトは、希望条件やスキルを登録しておくだけで、条件に合う企業からスカウトを受けることができるため、効率的に転職活動を進められるサービスです。
オファーを送る企業は、あらかじめスキルや経験を考慮しているため、選考がスムーズに進み、理想の職場に出会いやすくなります。
リクルートダイレクトスカウトで自分に合った働き方を見つけて、理想のワーク・ライフ・バランスを実現しましょう。
玉上 信明(たまがみ のぶあき) 氏
三井住友信託銀行にて年金信託や法務、コンプライアンスなどを担当。
定年退職後、社会保険労務士として開業。執筆やセミナーを中心に活動中。
人事労務問題を専門とし、企業法務全般・時事問題・補助金業務などにも取り組んでいる。
記事掲載日 :
※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。