「あなたにとって『働く』とはどういうことですか?どのような目的・意義を持ちますか?」「あなたにとって『仕事』とは何ですか?」――面接の場でそう問われたら、どのように答えればいいのでしょうか。回答を言語化できていない場合、言葉に詰まってしまうかもしれません。面接でこのような質問をされるとは限りませんが、聞かれた場合に備えて自身の考えを整理しておくといいでしょう。自身にとっての「働くとは」を明確化することで、マッチする企業を見極めやすくもなります。働く目的を整理する方法、面接での答え方について、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目次
働く目的を整理する際の方法
自分にとっての「働くとは」を明確化するための方法として、3つのステップをご紹介します。
ステップ1:自己分析を行う
まず、これまでの経験を振り返り、キャリアの棚卸しをします。どのような業務を経験し、どのようなスキルを身につけてきたのかをすべて書き出しましょう。そのなかから、次のような経験をピックアップしてみてください。
- こだわっていたこと/大切にしていたこと
- やりがいを感じたこと
- うれしかったこと/楽しかったこと
- 自然と没頭、熱中していたこと
ステップ2:自身にとっての「働く喜び」を7つの要素から考える
ステップ1でピックアップした経験から、自身がどのようなことに対して喜びを感じるのかを明確化してみましょう。「働く喜び」を構成する7つの要素から(※P4)、自身の経験と照らし合わせて当てはまる要素を整理してみてください。それが、自身の「働く目的」と言えるものかもしれません。
※出典:株式会社リクルート「働く喜び調査 2013―2023 年の変化」(2024年4月)
https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/assets/20240423_work_03.pdf
人とつながり、信頼関係を築ける
他者と協力して仕事を進め、信頼関係を築ける。仕事を通じて出会った人と長く付き合っていける。
学びを得て、成長できる
できなかったことができるようになっていく。新たな知識・スキルを身につける。専門分野を極めていける。仕事面でも人間的にも成長していると実感できる。
必要とされている実感を持てる
役割や使命を持つことに安心感や充実感がある。役割や使命を果たすことで認められ、仲間から必要とされていると実感できる。自分の「居場所」がある。
好きなことに関われる
自身が好きなことに関われる。興味があるテーマに取り組み、好奇心を満たすことができる。
周囲の役に立ち、感謝される
顧客やパートナー、自社の仲間などの役に立ち、感謝される。自身の働きに対し「ありがとう」という言葉をかけられる。
収入を得られる
仕事内容や成果に見合った収入を得られ、経済的な安心感や満足感を得られる。得た収入を好きなことに、自由に使える。
社会的地位を得られる
スキルや業績が社外でも認められ、社会的地位を高められる。多くの人から注目され、社会への影響力を持てる。
ステップ3:転職で叶えたいことの優先順位を決める
ステップ2で複数の要素が当てはまっている場合、「今回の転職で叶えたいこと」を考え、優先順位をつけてください。
転職で実現したいことの優先順位を明確にしておくと、面接で「働くとは」という質問だけでなく、「転職理由」「志望動機」などを聞かれた際にも説得力を持った受け答えができるでしょう。
「あなたにとって働くとは」と面接で聞かれた場合の答え方
面接で「あなたにとって『働く』とは?」と聞かれた場合、「PREP法」を意識してストーリーを組み立てるといいでしょう。PREP法とは、伝えたいことを論理的・簡潔に伝えるための文章構成手法です。以下の要素の頭文字をとり「PREP法」と呼ばれています。
- Point(結論)
- Reason(理由)
- Example(具体例)
- Point(結論)
つまり、結論を最初に示したうえで、その結論に至った理由・具体例を説明し、最後にもう一度結論を述べるという流れで答えます。面接で「働くとは」と問われた場合は、まず自身が働く目的・意義を端的な言葉で伝え、その背景にある思いや経験を語りましょう。このとき、働く目的・意義を自身がこれまで体現してきた具体的なエピソードも伝えると、説得力が高まり、「自分らしさ」も伝わりやすくなります。
「あなたにとって働くとは」と面接で聞かれた場合の回答例
「あなたにとって働くとは」という質問を受けた場合の回答の一例をご紹介します。面接で、「働く目的や意義を教えてください」と問われた際の、回答の参考にしてみてください。
自己の成長のため
私が仕事において目指すのは、より大きなビジネスインパクトを生み出せる人材となれるよう、自身を成長させることです。これまでも難しい課題に直面したことを自身の成長機会と捉え、未知の取り組みに挑戦した結果、成果を挙げることができました。例えば、現職で営業部長に就任した際には、低迷していた商品のテコ入れを任されました。未経験ながらパートナーセールスの部門を新たに立ち上げ、組織作りも営業ノウハウも手探りながら、3年間で売上を5倍に拡大することができたのです。自身が成長した実感と同時に、自社・パートナー企業・クライアント企業にも事業拡大や生産性向上に貢献できたことに大きな喜びを感じました。これからも自社や顧客にインパクトや変化をもたらすことができるよう、自身がチャレンジして成長することにこだわって働きたいと考えています。
○○に貢献するため
私が働くうえでこだわるのは、組織への貢献です。人事として自社従業員がいきいきと働ける環境を整えることで、組織の活性化、ひいては業績拡大につなげることにやりがいを感じています。現職では、自社の有志社員と外部の専門家を組織して従業員向けのキャリア相談チームを作り、キャリア面の悩みの解消や目標達成の支援をする取り組みを行いました。結果、◯年間で延べ◯名がキャリア相談に参加し、利用満足度は◯%、エンゲージメントスコアが◯%アップし、高業績者や管理職昇進者も複数生まれています。現場部門と共にある人事となった実感があり、感謝の言葉をもらうこともよくあります。
これからも人事としての専門性を活かし、自社従業員がより充実して働けるように貢献をすること、それを通じて組織に貢献することが、私にとっての働く目的です。
世の中を便利にするため
私がITエンジニアの道を選んだのは、世の中のムダをなくして便利にすることに面白さを感じたからです。実際、私が手がけたプロダクトが、企業のDX推進に役立っていると実感しています。現職では経理部門向けのITツール開発を担当しています。そのツールは◯○業界の大手企業に導入され、1年間で経理部門の残業時間が月に◯時間削減、ルーティン業務の担当者数も◯%減らせたことで、大幅なコスト減につながりました。その企業では、より戦略的な業務に集中できるようになったとのことで、顧客が求めていたあるべき姿を実現でき、大きな達成感を得ることができました。これからも課題の解決や変革に貢献するプロダクトを生み出すことにこだわり、世の中を便利にしていきたいと考えています。
面接で、「働くとは」を答える際の注意点
「働くとは」という質問に答える際には、注意も必要です。以下のようなポイントを意識しておいてください。
転職理由や志望動機との一貫性を意識する
面接では多くの場合、「転職理由」と「志望動機」を聞かれます。これらの質問への回答と「働くとは」の回答につながりがないと、一貫性を保てなくなる可能性があります。働く目的を「社会への貢献」と語りつつ、応募企業への志望動機を聞かれたときに「成果に応じた報酬制度が魅力だから」に終始した場合、「どちらが本心なのだろう」と疑問を抱かれるかもしれません。
「働くとは」「転職理由」「志望動機」、この3つに一貫性を持たせてストーリーを組み立てましょう。
応募する仕事との共通点を意識する
自身の一方的な思いやこだわりを伝えるだけでなく、応募企業側のニーズを意識することも大切です。「働くとは」についての考え方を採用担当者が聞いたときに、採用ポジションで活躍するイメージを描けるようにしましょう。
そのためには応募企業を研究して、その企業が人材に求めている要素をつかむ必要があります。ただし、企業が発信する情報に自分を寄せすぎないように注意してください。本来の自身の働く目的・価値観と異なる回答を用意しても、説得力に欠けたり、採用に至ってもミスマッチが生じたりする可能性があるからです。
面接対策が不安な場合は、転職エージェントやスカウトサービスの利用も検討を
面接対策に不安がある場合は、転職エージェントに相談して面接対策のアドバイスを受けるという方法があります。また、スカウトサービスを利用して転職エージェントからスカウトが届いた場合も、同様に面接対策のサポートを受けられることがあります。面接対策だけでなく、応募書類の添削や面接の日程調整など、転職活動全般をサポートしてもらえるので、不安がある場合は転職エージェントやスカウトサービスの利用を検討してみましょう。
粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。