ハローワークを通じて転職活動を行っている人は、一定の条件を満たすことで「失業保険」が給付されます。では、内定が出てすでに転職先が決まっている人は、失業保険を受け取ることができるのでしょうか。ここでは、失業保険の受給要件について触れたうえで、転職先が決まっている人が失業保険を受け取れるかどうかについて社会保険労務士の村松鋭士氏が解説します。
源泉徴収票とは?
源泉徴収票とは、1月1日~12月31日の1年間に支払われた給与・賞与などの支給額と、そこから差し引かれた社会保険料、源泉徴収(天引き)した所得税額などを証明するための書類です。
企業は、1年間の給与支払額が確定すると、個々の社員に対して「年末調整」を行います。年末調整とは、本来徴収すべき所得税の1年間の総額を再計算し、源泉徴収した合計額とあらためて比較したうえで、過不足分を調整する作業のことです。その計算結果を社員別にまとめて源泉徴収票を作成し、翌年1月末までに交付します。
社員が年の途中で退職した場合、その年の1月から退職日までの情報をもとに源泉徴収票を発行します。退職時点までの給与支払額、源泉徴収税額、社会保険料額を記載し、退職日から1カ月以内に交付することが所得税法第226条に定められています。
転職先企業に源泉徴収票を提出する理由
転職先の企業に前職の源泉徴収票を提出する理由は、前職に在籍していた期間の源泉徴収票を確認し、前職分と現職分の給与支払額や控除額を合計して年末調整をする必要があるからです。
年末調整は、1年間の給与や控除額をもとに計算されるものであり、年の途中で退職した前職の企業では、年末調整を受けることができません。そのため、自ら確定申告を行うか、転職先で前職分を合算して年末調整をしてもらうかのどちらかで対応することになります。
なお、源泉徴収票は、正式に入社が決定した段階で提出するのが一般的ですが、企業によっては、内定前の段階で源泉徴収票の提出を求めるケースがあります。源泉徴収票を見れば、前職での給与支給額の正確な情報がわかるため、これを参考にして年収を決めることがあるからです。また、年収アップの交渉を行っている求職者に対し、前職での待遇を把握するために源泉徴収票の提出を依頼するといったケースもあります。
源泉徴収票の提出が不要なケース
転職先企業に提出することが多い源泉徴収票ですが、なかには不要となるケースもあります。前職での給与の支払いが前年中にすべて終わり、入社日と同じ年に一切支払いを受けていない場合、合算して年末調整を行うことがないため、基本的に提出する必要はありません。
ただ、ここで注意したいのが、12月に退職したケースです。例えば、2020年12月に退職し、2021年1月に12月分の給与が支給された場合、「源泉徴収票は必要ない」と考えてしまうかもしれません。確かに2020年分の源泉徴収票は必要ありませんが、2021年に支払いを受けていることから、転職先には2021年の源泉徴収票を提出する必要があります。
前述した通り、たとえ年末調整に支障がない場合であっても、内定前の年収を決める時などに、源泉徴収票の提出を求められることがあります。「転職先での年末調整が必要でないから」という理由で廃棄したり、不注意で紛失してしまったりすることがないよう、前職の企業から発行された源泉徴収票は大切に保管しておきましょう。
源泉徴収票が間に合わない場合は?
退職者に対する源泉徴収票の交付は、最後の給与額が算出された時点で発行可能となるため、最後の給与支払い日の前後で渡されるのが一般的です。ただ、状況によっては「前職の企業が源泉徴収票をなかなか発行してくれない」といったケースもあるようです。
企業では、10~11月頃に年末調整業務を開始することが一般的です。そのため、年末近くに転職した場合、前職の源泉徴収票を早めに入手できないと、新たな職場での年末調整業務に間に合わない可能性があります。そのため前職の企業には、早めに源泉徴収票を交付してほしい旨を事前に伝えておくようにしましょう。
また、どうしても年末調整業務に間に合わない場合は、前職・現職の源泉徴収票をもとに、自分自身で確定申告を行い、払い過ぎた税金などの還付を受けるという方法もあります。
源泉徴収票がもらえない場合は?
前職の企業からなかなか源泉徴収票が発行されない場合は、連絡を入れて状況を確認し、改めて発行を依頼するようにしてください。源泉徴収票は、その年の翌年の1月31日まで(年の中途で退職した方の場合は、退職の日以後1か月以内)に交付しなければならないとされています。
どれだけ催促しても発行されないときは、自身が住む市区町村を所轄する税務署に相談し、「源泉徴収票不交付の届出書」を提出します。源泉徴収票不交付の届出書とは、源泉徴収票の交付を受けられていない従業員が税務署に対して行うことができる手続きのこと。給与明細書があればその写しを添付し、税務署に届出書を提出します。この手続きが行われると、税務署から企業に連絡が入り、源泉徴収票を交付するように指導がなされます。
なかには前職の企業が倒産してしまい、源泉徴収票の交付が受けられないケースもあるでしょう。こうした場合も、源泉徴収票不交付の届出書を税務署に提出することになります。
村松鋭士(むらまつ さとし)氏
2010年に【TFS&SPIRAL社会保険労務士事務所】を開業。また、社労士事務所と併せてチームビルディングを主体とした人材育成研修やコンサルティング、コーチングを行う【株式会社スパイラル・アンド・ゴーゴー】を設立。社労士として15年以上、企業の人事労務に携わってきた経験をもとに、労務相談や人材育成研修、評価制度などを一体的に実施。
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