法人とは?意味・種類、個人事業主との違いや法人の種類ごとの特徴解説

オフィスで働く人々の様子

転職活動中、さまざまな企業を見ていく中で、「○○株式会社」「○○合同会社」「○○一般法人」など、法人の種類について気になったことがある方も少なくないでしょう。今回は、法人の種類や特徴、個人事業主との違いなどについて八雲法律事務所の弁護士・星野悠樹氏が解説します。

法人とは

「法人」とは、法人設立手続きを行ない、法律によって、人と同じように権利・義務を認められた組織のことを指します。
大きくは「営利法人」「非営利法人」「公法人」に分類されますが、具体的な例としては、株式会社や労働組合、私立学校、病院、地方公共団体など、社会的・経済的活動を行うさまざまな組織・団体が挙げられます。

法人を設立する意味

法人設立の手続きを行なった組織・団体には、物品の売買や所有、契約、裁判において、人と同じように法律が適用されます。
起業の際、会社組織を設立して法人格を認められることによって、組織そのものが権利義務の主体となることができるため、個人ではなく、会社として契約・取引などの手続きを行うことができます。そのため、個人間のやりとりによる法的なトラブルの発生を避けることができ、かつ、契約・取引などの手続きもスムーズに進めることができます。

個人事業主との違い

個人事業主は法人と違い、公的な設立手続きを必要としないため、税務署に「開業届」を提出するのみで開業できます。
また、個人事業主とフリーランスを混同するケースもありますが、フリーランスは「特定の組織・団体に属さない働き方」を表す呼び名であり、個人事業主のような法律(税法)による区分とは違うので注意しましょう。なお、フリーランスで活動する人の中には、税法上は法人格であるものの、従業員は雇わず、いわば一人社長状態である、というケースもあります。

会社、企業との違い

「会社」とは、法人の中でも会社法に基づいて法人登録をし、経済活動を行っている団体のことを指します。

「企業」とは、法人よりも大きなくくりとして、経済活動を行っている個人・団体すべてのことを指します。個人事業主も企業に該当します。
法人、会社、企業の区分については、以下の図版を参考にしてみてください。

法人、会社、企業の区分について

法人の分類

法人の分類は、公の事業を行う「公法人」と、国などから強い影響を受けない「私法人」に分かれており、さらに、「私法人」は「営利法人」「非営利法人」に分けられています。

公法人

公法人は、国もしくは公共の事業を行うことを目的とする法人を指します。

<公法人に当てはまる組織・団体>

・地方公共団体
・独立行政法人
・特殊法人

私法人

私法人は、私的な社会活動を行うことを目的として設立された法人を指します。

<私法人に当てはまる組織・団体>

・営利法人
・非営利法人

営利法人

営利法人は、構成員(社員や株主など)に利益分配することを目的とする法人を指します。株式会社は営利法人に当てはまり、「株主への利益分配」を目的としています。

<営利法人に当てはまる組織・団体>

・株式会社
・合同会社(LLC)
・合資会社
・合名会社
・有限会社

非営利法人

非営利法人は、構成員(社員や株主など)に利益分配することを目的としない法人を指します。
非営利法人の収益は、団体の目的を達成するために使われます。その名称から「利益を得てはいけない」と思われがちですが、活動収益の中から、団体を運営するための人材雇用は可能ですし、経費として人件費を支払うこともできます。ただし、得た利益は構成員に分配するのではなく、団体の活動目的を達成するために使用する必要があります。

<非営利法人に当てはまる組織・団体>

・NPO法人(特定非営利活動法人)
・公益社団法人
・公益財団法人
・一般社団法人
・一般財団法人
・学校法人
・宗教法人
・社会福祉法人

私法人の種類と特徴

私法人である「営利法人」と「非営利法人」について、どのような種類や特徴があるのかご紹介します。

営利法人

営利法人には、前述の通り「株式会社」「合同会社(LLC)」「合資会社」「合名会社」「有限会社」があります。

株式会社

株式会社は、株式の発行によって資金を集め、事業を行う法人を指します。出資者である株主から経営を委託された人物が取締役に就任して事業を行います。株式会社の特徴としては、主に有限責任である点と、会社の所有と経営が分離している点が挙げられます。
なお、経営者自らが全ての出資を担い、単独で株主となる形式で設立することも可能です。

合同会社(LLC)

合同会社は、2006年施行の会社法で導入された会社形態で、アメリカのLLC(Limited Liability Company)という会社形態をモデルとしているため、LLCと呼ばれることもあります。出資者全てが社員となり、基本的には、出資額と関係なく、平等に決定権を有しています。

合同会社の持つ「出資者が業務執行権限を有し、会社の業務を行う=所有と経営の一致」という面は、経営の自由度が高い、利益の配分を自由に決められるなど、合同会社の大きな特徴と言えます。

合資会社

合資会社は、「無限責任社員」と「有限責任社員」がそれぞれ1名以上で構成された会社形態です。事業を行う「無限責任社員」と出資を行う「有限責任社員」が分かれています。合同会社と同様に、経営の自由度が高い点や利益の配分を自由に決められる点などが具体的な特徴として挙げられます。

合名会社

合名会社とは、無限責任社員のみで構成されている会社のことを指します。
合同会社と同様に、出資者全てが社員となり、会社の経営と所有が一致している点が特徴として挙げられます。

有限会社

有限会社は、1938年に定められた有限会社法に基づいて設立する法人ですが、すでに廃止されています。2006年に会社法人に関する法制度が大幅に改定され、株式会社設立の条件が緩和されたことで、株式会社よりも設立のハードルが低かった有限会社は廃止されることになりました。

2006年の法改定時に存在していた有限会社は、「株式会社」に移行するか、経過措置として設けられた株式会社の一形態である「特例有限会社」に移行することとなりました。特例有限会社の場合は、商号の中に「有限会社」を含めることが義務付けられているため、廃止された現在でも社名に有限会社が入っています。

非営利法人

非営利法人に当てはまる、代表的なものをご紹介します。

NPO法人

NPO法人とは、「特定非営利活動促進法」に基づいて法人格を認められた「営利目的ではない団体」のことを言います。NPOは「Non-Profit Organization」の略で、特定非営利活動法人とも呼ばれます。

特定非営利活動促進法は、特定非営利活動を行う団体に法人格を付与することなどによって、 ボランティア活動をはじめとする市民の自由な社会貢献活動としての特定非営利活動の健全な発展を促進することを目的として、平成10年12月に施行されました。

特定非営利活動とは、「保健、医療又は福祉の増進を図る活動」「社会教育の推進を図る活動」など、全部で20分野に該当する活動で、NPO法人はこのうちから不特定かつ多数のものの利益に寄与することを目的に活動しています。

一般社団法人

一般社団法人は公営性の高い事業を行うために設立された非営利法人です。
一般社団法人は、営利を目的としない非営利法人ですが、公益法人やNPO法人のように事業目的が制限されることはありません。スポーツ、観光、高齢者福祉など幅広い分野で設立されています。

社会福祉法人

社会福祉法人は、社会福祉事業を行うことを目的とし、社会福祉法の定めに基づいて設立された法人を指します。高齢者、児童、障がいのある人、生活保護受給者など、何らかの支援を必要とする人に対し、教育、文化、医療、労働などのさまざまな社会福祉サービスを提供するなど、公益性が極めて高く、営利を目的としない民間の法人です。

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八雲法律事務所 弁護士 星野 悠樹(ほしの ゆうき)氏

経営法曹会議会員。中央大学法学部卒、慶應義塾大学法科大学院中退。 主に会社法関係案件(会社支配権に関する各種紛争案件等)、使用者側の人事労務案件(解雇案件、ハラスメント案件等)の法律相談、訴訟対応等を取り扱う。