企業のIT・デジタル化やDX人材確保必要性について株式会社リクルート(以下、リクルート)の調査データを紹介します。人事担当者が求めるDX人材のスキル・人物像等はどのようなものなのでしょうか。また、実際のDX推進の取り組みや人材確保の動きについて、企業規模別・地域・業種別に調査した結果もあわせて発表します。
目次
2021年度の「DX人材」確保の必要性は41.6%、昨年比で大幅増
リクルートが実施した「人的資本経営と人材マネジメントに関する人事担当者調査(2021)」によるDX関連調査の結果を、第1弾としてまとめた。この調査結果からは、DX人材が企業のデジタル化推進に欠かせない存在であり、多くの企業で、その確保必要性が急速に高まっていることを示している。また、人事担当者のDXへの理解度には差が大きいこと、大企業ほどDX人材の必要性を高く感じていることなども見えてきた。
<用語の定義>
・DX=デジタルトランスフォーメーションの略。経済産業省「DX推進指標とそのガイダンス」より、企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変化するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること ・DX人材=この調査では「DXを推進するために必要な人材」としている
DX人材と企業のIT化に関する4つの調査トピックス
1.「DX人材」確保の必要性は2020年度26.2%、2021年度41.6%と、必要性が増加
●2020年度では「わからない」が28.6%ではあるものの、「必要だった」が26.2%で、「必要ではなかった」は45.2%である
●2020年度と同様に「わからない」が26.7%ではあるが、「必要である」は41.6%と2020年度よりも15.4ポイント上回っている
2.「DX」に取り組んでいる企業は54.0%、取り組み内容は「社内のデジタル化」が最多、次いで「事業サービスのデジタル化」
●「DX」の取り組み状況(2021年10月時点)について、「取り組んでいる」のは54.0%
●取り組んでいるものは、「社内のデジタル化」が最も多く42.8%で、「事業サービスのデジタル化」は27.8%である
3.人事担当者の2人に1人以上は、「DX」を知っているとの認識。「全く知らない」は14.3%
●人事担当者へ「DX」についての認識を訪ねたところ、「良く知っている」14.7%、「まあ知っている」41.5%と、半数以上が知っている(「知っている・計」56.1%)だが、「あまり知らない」29.5%、「全く知らない」は14.3%であった
●「DX」はどのようなものかを聞いたところ、わからないなども含めて、DX推進の重要性や取り組む必要性など幅広さが見られる
4.「DX人材」確保の必要は、従業員規模が大きい企業ほど高い傾向にある
●2020年度では、「必要だった」が最も高い従業員規模は「1000人以上」の47.8%で、次は「300~999人」の33.8%と、従業員規模が大きくなるにつれて必要性が高い傾向が見られる
●2021年度では、「必要である」は、2020年度と同様に「1000人以上」の57.8%が最も高いが、全従業員規模で「必要である」が2020年度よりも増加傾向が見られる。その中でも増加幅がより大きい規模は、「30~99人」(19.6ポイント)と「300~999人」(19.2ポイント)である
「DX人材」確保の必要性は昨年に比べてプラス15.4%と大幅アップ
人事担当者へ「DX人材」確保の必要状況について聞いたところ、2020年度では、「わからない」が28.6%ではあるものの、「必要だった」が26.2%で、「必要ではなかった」は45.2%である。
2021年度では、2020年度と同様に「わからない」が26.7%ではあるが、「必要である」は41.6%と2020年度(26.2%)よりも15.4ポイント上回っている。また、2020年度の必要状況から2021年度の状況を見ると、2020年度に「必要だった」では、2021年度でも必要との回答が約8割となった。
■「DX人材」確保の必要状況(全体/単一回答)
【2020年度】
【2021年度および2020年度の必要状況から見た2021年度の状況】
■「DX人材」の人材像について(自由回答)
- 多様化する各種決済やナビ・GPS・多言語対応に順応できる人材。かつ経験豊富で顧客が安心するある程度の世代(40~50代)が望ましい。(北海道・東北/5000人以上)
- アナログからデジタル化できる人。(北海道・東北/5000人以上)
- ITのスキルだけでなく、デジタル化への円滑な推進ができるように知識や経験を生かしたパフォーマンスを有する人材と位置付けている。(関東/5000人以上)
- 実務経験が長い、専門性の高い人材。(関東/1000~1999人)
- 社内のデジタル化促進に寄与できる人材。(関東/5000人以上)
- 多角的な視野で物事を把握できる人材。(東海/5000人以上)
- 社内で効率的にDXを行えるようなリーダーシップを発揮する人材。(東海/5000人以上)
- デジタルとマーケティングに強い方。(関西/5000人以上)
- ビジネスとシステム両方に能力がある人材。(関西/5000人以上)
- スキルが高く、発信力が高いこと。(中国・四国/5000人以上)
- デジタル技術に精通した人材。(中国・四国/5000人以上)
- データサイエンスに関わる者。(九州/5000人以上)
- 多様性を持って、どのような仕事にも対応できる人材。(九州/5000人以上)
企業の54.0%が「DX」に取り組み中。内容は「社内のデジタル化」「事業サービスのデジタル化」
「DX」の取り組み状況(2021年10月時点)について、「取り組んでいる」のは54.0%。
取り組んでいるものは、「社内のデジタル化」が最も多く42.8%で、「事業サービスのデジタル化」は27.8%である。
「DX」に取り組んでいる回答者の取り組み開始時期は、「2010~2019年」が44.0%と最も多く、「2020年以降」は30.7%、「2009年以前」は14.6%である。
■「DX」の取り組み状況2021年10月時点(全体/複数回答)
■「DX」の取り組み開始時期(「DX」取り組みとの回答者/単一回答)
人事担当者の2人に1人以上は「DX」を知っていると認識
人事担当者へ「DX」についての認識を聞いたところ、「良く知っている」14.7%、「まあ知っている」41.5%と、半数以上が知っている(「知っている・計」56.1%)だが、「あまり知らない」29.5%、「全く知らない」は14.3%である。
また、「DX」はどのようなものかを聞いたところ、わからないなども含めて、DX推進の重要性や取り組む必要性など幅広さが見られる。
■「DX」の認識状況(全体/単一回答)
■「DX」についての認識(自由回答)
()内=(認識状況の回答/主勤務先地域/主勤務先従業員数)
- デジタルだけにとどまらず、社会全体に良い影響を及ぼすもの。(良く知っている/関西/5~9人)
- 現代的な組織の在り方。テクノロジーを駆使し、働く人を管理すると同時に、やる気を上げる為の大事なツールだとは思う。(良く知っている/関東/50~99人)
- まずは経営陣の意識改革からスタートしないと進まない。(良く知っている/関東/5000人以上)
- DX化を推進しないと業務の効率化、省力化が得られない。また、顧客や取引先に対応できず、取り残される形になる恐れがある。(まあ知っている/関東/50~99人)
- 今後は中小企業にとってもデジタルの活用は必須となるが、どの様に導入を進めて行けば良いか見当が付いていない。(まあ知っている/関東/30~49人)
- 人材の使われ方が大きく変化すると思う。それに伴い個人の必要な能力や技術も変化すると考える。(まあ知っている/関東/50~99人)
- 経営判断となる各種数字をデジタル化し、見える化する。単なるパソコンへの打ち込みではなく、判断ができるようにするもの。(まあ知っている/関東/5~9人)
- 電子化で行える物は電子で行う様に変化させていき、電子に慣れさせること、時間、お金等の節約をし、別の何かにかえる事かな。(あまり知らない/北海道・東北/30~49人)
- ITを活用して、顧客に対してこれまでにない価値提供。(あまり知らない/関東/5000人以上)
- デジタル化により生活や仕事を効率化し社会を豊かにするという考え方。新しいサービスや生産性の向上が見込める可能性がある半面、初期費用やコストがかかる面もあり取り組むには多くの協力体制が必要となる。(あまり知らない/東海/10~19人)
- これからの企業にとってやるべき事。(全く知らない/東海/100~299人)
- わからない、これから勉強する。(全く知らない/関東/10~19人)
「DX人材」確保の必要性は、従業員規模が大きい企業ほど高い傾向
「DX人材」確保の必要状況について、主勤務先の従業員規模別に見てみたい。
2020年度では、「必要だった」が最も高い従業員規模は「1000人以上」の47.8%で、次は「300~999人」の33.8%と、従業員規模が大きくなるにつれて必要性が高い傾向が見られる。
2021年度では、「必要である」は、2020年度と同様に「1000人以上」の57.8%が最も高いが、全従業員規模で「必要である」が2020年度よりも増加傾向が見られる。
その中でも増加幅がより大きい規模は、「30~99人」(19.6ポイント)と「300~999人」(19.2ポイント)である。
■「DX人材」確保の必要状況(主勤務先従業員規模別/単一回答)
【2020年度】
【2021年度】
「DX人材」確保の必要性は、業種にかかわらず増加傾向
「DX人材」確保の必要状況について、主勤務先の業種別に見てみたい。
2020年度では、「必要だった」が最も高い業種は「金融業」の38.7%、次は「製造業」の32.1%で、これら以外は20%台と、業種間でばらつきが見られる。
2021年度では、「必要である」は、2020年度と同様に「金融業」の53.2%が最も高いが、全業種で「必要である」が2020年度よりも増加傾向が見られる。その中でも増加幅がより大きい業種は、「流通業」(18.1ポイント)と「建設業」(17.2ポイント)である。
■「DX人材」確保の必要状況(主勤務先業種別/単一回答)
【2020年度】
【2021年度】
※「その他」は割愛
<調査概要>
■人的資本経営と人材マネジメントに関する人事担当者調査(2021)
調査目的:人的資本経営や人材マネジメント等に関する実態を明らかにする
調査方法:インターネット調査
調査対象:全国の人事業務関与者(担当業務2年以上)
調査期間:2021年10月29日~11月12日
調査回答数:3007人
回答属性:下表参照
【主勤務先従業員規模】
【主勤務先業種】
【主勤務先地域】
・北海道・東北:北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県
・関東:茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県
・東海:新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県
・関西:滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県
・中国・四国:鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県
・九州:福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県
<調査結果を見る際の注意点>
・「%」を表示する際に小数点第2位で四捨五入しているため「%」の合計値と計算値が一致しない場合がある
・n数が50未満の場合、参考値として掲載している
・主勤務先業種別では、「その他」は割愛している
<用語の定義>
・大都市圏=埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県