環境・エネルギー(グリーン)/サステナビリティの2023年転職市場の求⼈・求職者の動きを、業界に精通した株式会社リクルートの人材領域で活躍するキャリアアドバイザーがレポートします。「2023年の転職市場や業界トレンドを知りたい」「納得感のある転職活動のために、採用動向を知っておきたい」という方はぜひご一読ください。
環境・エネルギー(グリーン)/サステナビリティの2023年転職市場の展望を一言でいうと
社会の関心は高まり続け採用も過熱。セクターを越えた転職も求められる。
求職者の関心は高い一方で、ターゲットは少なく経営視点も求められている。
1.【環境・エネルギー(グリーン)/サステナビリティ】業界・企業側の動き
環境問題への関心は高まり続け、求人の相談も止まらず増えています。新規事業に加えて、現行事業の脱炭素化など会社全体として関連する部門も増え、さまざまな部門から求人が出てきています。
昨今では「GX(Green Transformation)」という言葉も定着し、求職者側の認知度、関心が高くなっています。一方で、対象となる経験者はそもそも市場に少なく、どのような方なら活躍できるかが定義しづらいこともあり、採用における難易度は高い状態です。また、気候変動だけではなく徐々に生物多様性など他領域への対応ニーズも出てきており、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)から、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)への対応の必要に迫られてきたため、それに伴い求人も多様化しています。金融機関やコンサル業界からの求人では、自社の取り組みに関連するところに加えてクライアントの取り組み評価ができる方などが求められています。また、化学・素材領域では、サーキュラーエコノミーを意識した製品作りやリサイクルに関連する求人、例えば新しいプロセス開発、そのための新規プラント建設、その周辺のIT、制御装置などに関わる求人も出始めています。
環境といえば、従来は工場の環境安全ポジションなどがメインでしたが、クリーンな電源の確保や、化学物質管理、CO2排出量開示のための各種数値の管理など新たな業務が増え、人材が不足しています。グローバル企業であれば、海外工場やサプライチェーンでの管理も必要で、非常に地道な努力が必要になります。人権問題も絡むため、業務の難易度はより上がっています。効率的なデータ取得や活用が求められるためDX(Digital Transformation)が急がれる分野でもあり、ニーズは高まる一方です。
水素関連や、CCS(二酸化炭素回収・貯留)、CCUS(二酸化炭素回収・貯留・有効利用)の求人に加えて、原子力も増加傾向にあります。廃炉、再稼働、次世代(新型小型)など幅広く求人が出てきています。
また、エネルギー領域では、ESG(環境・社会・ガバナンス)観点だけでなく経済安全保障の観点から、海外の政策、規制などへ精通していることが求められます。海外のリスクを見るポジションもニーズが高まっており、関係各国や国際機関などの情報を読み解く能力を兼ね備えた人材も求められています。BCP(Business Continuity Plan)対応に近いですが、より先んじてリスクを読み対応できる準備をすることに企業は注力し始めています。
セクターを越えたニーズも引き続き高まっています。ポジティブ・インパクト(持続可能な開発の3つの側面(経済、社会、環境)のいずれかにおいて潜在的なマイナスの影響が適切に特定、緩和され、なおかつ少なくともそれらの一つの面でプラスの貢献をもたらすこと)が求められる中、経済の専門家は自社にいたとしても、社会、環境の専門家がおらず、行政機関やNPO、アカデミアにいた方などを求める動きも高まっています。
2.【環境・エネルギー(グリーン)/サステナビリティ】求職者側の動き
ESG経営、環境への取り組みの進んだ企業に行きたいニーズが高まっています。また、引き続きリモートワークの有無は重要視されており、対応できている企業でなければ人材獲得は難しくなってきています。事業の将来性や見立てを重要視する一方、景気の不透明さからか、年収などの条件もシビアに検討されるようになっています。
また、一部では、働く場所や時間に重点を置き、フレキシブルな働き方ができる企業に転職される方も増えています。副業ができる環境があるかどうかも引き続き重要視されています。
従来この分野では、専門人材が求められていましたが、専門家というだけでなく経営についても理解のある方が求められる傾向になってきています。
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羽田野直美
製造業のエンジニアを中心としたキャリアアドバイザーを経験後、2018年からは「環境・エネルギー・サステナビリティ」を中心に、リーダーからディレクタークラス、また高度専門職のキャリアコンサルティングに従事。
松田 彩
新卒入社以来、一貫してリクルーティングアドバイザーとして自動車・派遣・化学などを中心に大手製造業における中途採用支援に従事。現在は、同業界における大手企業専任組織のマネジャーに従事。