銀行員の転職先として多い業界、求められる経験・スキル、銀行員からの転職を実現するためのコツを解説

銀行員 転職

「銀行員として培ってきた経験・スキルを活かすには、どのようなキャリアプランがあるのか」「金融業界の知識・経験を活かした転職で、新たな専門スキルを身に付けたい」──今後のキャリアプランや転職などについて検討している方に向けて、リクルートエージェントのキャリアアドバイザーが解説します。

銀行員が転職したいと考える理由とは

銀行業界の人たちは、どのような理由から転職を検討し始めるのでしょうか。ビジネスモデルの変化や新たな専門スキル取得・キャリアアップを目指すなどさまざまありますが、その中からよくご相談を受ける理由をいくつかご紹介します。

インターネット取引の増加

近年は、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進や業務のAI化などに伴い、対面業務や融資判断、リスク管理、ファイナンス業務のビジネスモデルの変化が起こっています。

そうしたオンライン業務化やキャッシュレス決済サービス等の台頭に伴い、メガバンクの存在意義を感じにくくなってきた人や、顧客企業へのサポートスタイルが対面から変化してきたことで、これまでのやりがいとのギャップを感じている人も増えているようです。

また、「デリバティブ」(先物取引、オプション取引、スワップ取引など)や「M&A」(Mergers and Acquisitions(合併・買収))といった業務上やるべき業務が増加しており、理想と現実のギャップを感じている人もいます。

転勤が多い

一般的に銀行業界は、3~5年単位で定期的な転勤が多いことも転職理由として挙げられます。家を建てたばかりや、子供が生まれて家族と暮らしたいという時期での転勤はしたくないという人も多いでしょう。

定年が早い

銀行業界は役職定年が50歳という銀行が多く、50歳以上になると年収が大幅にダウンしたり、職務が大きく変わったり出向や転籍となるケースがあります。50代は子供の学費などで支出が増える時期となる方もいるため、収入が減ることで生活や将来が不安になるという理由も少なくありません。

金融以外の専門スキルを身に付けたい

金融以外のキャリアやスキルを身に付けたいという理由も多く聞かれます。例えば、マーケティングスキルやシステム開発スキルなどです。

銀行での業務は金融に関する専門知識は得ることができ、金融業界内や金融知識・スキルを求める企業などへの転職はもちろん多いのですが、異業種転職で新たな専門知識・スキルの習得を目指し、実現したケースも多くあります。

銀行員の転職先として多い業界とは

銀行員は転職先としてどのような業界に転職しているのでしょうか。金融業界内や金融知識・スキルを求める企業などへの転職はもちろんありますが、異業界への転職で新たな専門知識・スキルの習得を目指し、転職で実現したケースも多くあります。その中でも多く見られる転職先がコンサルティング業界と人材業界です。

金融業界

金融業界は、一般的に「銀行」「証券会社」「保険会社」「信用金庫・信用組合」「カード会社」「リース会社」などに分類されます。銀行には、いわゆるメガバンクと呼ばれる大手都市銀行から地方銀行、外国銀行、インターネット銀行などがあります。

銀行員の転職先としては、大手都市銀行から地方銀行や信託銀行への同じ銀行への転職も多いのですが、証券会社・保険会社・信用金庫・信用組合・カード会社・リース会社など、金融業界での採用ニーズは高く、転職者も増加しています。

株式会社リクルートが発表している『リクルートエージェント』の転職データと各業界に精通したコンサルタントの知見を基に、主要業界の求人・求職者の動きをまとめたレポート(※1)によると、2022年度の金融業界の転職マーケットの割合は、同業種からの転職が39.7%、異業種からの転職が60.3%となっています。また、銀行・証券業界への転職者数は2013年度と比較すると、2倍以上に伸びており、増加傾向にあると見てとれます。

特にリース会社からは、顧客の財務分析や資金返済力判断といった経験・スキルを期待した採用が増えています。

(※1)出典:株式会社リクルート「2023年度 転職市場の動向」(2024年3月)
https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/assets/20240312_work_02.pdf

コンサルティング業界

コンサルティング業界に転職する人も多く、企業の財務戦略やM&Aなど、金融に関するプロセス改善や課題解決の経験・スキルを求められています。企業のコンサルティングをする際に、顧客の財務分析などのいわゆるファイナンスの知識が役立つからです。

人材業界

人材業界でも銀行員経験者を求めており、実際に転職している人も多数見られます。財務分析や業績分析などの経験・スキルが、顧客企業の成長性や業績予測などで必要とされるシーンも多々あります。

上記業界以外にも多種多様な業界が銀行員経験者を求めており、銀行員の財務・会計などの経験・スキルを必要としているといえるでしょう。

転職で活かせる銀行員の経験・スキル

銀行員として転職する際に求められるスキルとは、どのようなものなのか。ここでは特に期待されることの多いスキルをご紹介します。

企業の経営者・役職者との交渉・コミュニケーションスキル

銀行員の営業は、企業の経営者、あるいは財務責任者といった役職者とコミュニケーションをとったり、交渉したりすることが多くあります。また、幅広い年齢層の顧客と接して融資や商品の提案を行うことも多いため、交渉スキルやコミュニケーションスキルが身についていきます。

誠実でルールを守って仕事をするスキル

銀行での接客や営業に携わる人は、真面目で、好感を持たれるようなふるまいを意識しながら業務を行うことで信頼に繋げている方も多いです。ビジネスマナーやルールを守る真面目な人格と顧客の話に真剣に耳を傾ける姿勢、丁寧な仕事ぶりは、銀行以外の業界でも高く評価されるでしょう。

財務や経理の知識・スキル

銀行の仕事で得た財務や経理の知識・スキルは、金融業界以外の企業でも求められます。例えば、財務分析スキルなどは企業の取引先を見極めるために役立つスキルです。特に法人営業など、企業を対象とする際に活かすことができます。

銀行員からの転職事例を紹介

銀行員として経験スキルを活かし、転職を実現した方の事例もいくつかご紹介します。

Aさん(30代):銀行(法人営業)から銀行(M&A担当部署)に転職

普通銀行で、大手企業の法人営業RM(リレーションシップ・マネジメント(※2))を担当していたAさんは、将来のキャリアとして活かせる専門性スキルを身に付けたいと考えていました。法人営業でまだ経験したことのないM&Aに関わる業務にチャレンジしたいと、転職を決意。同じく普通銀行のM&Aを担当する部署での求人に応募し、採用されました。

(※2)RM(リレーションシップ・マネジメント)とは、大手企業を対象に財務戦略や経営戦略など、金融に関わる取引や提案を行う業務

Bさん(30代):銀行(法人営業)から信託銀行(証券代行)

企業経営や株主対策といった専門性のある知見を身に付けたいと考えたBさん。30代後半で証券代行業務は未経験であったものの、自身で学んでいることや証券代行の仕事への熱意を伝えることで採用されることとなりました。

株主対策や証券代行の仕事を専業としている人はまだ世の中に少ないことから、採用ニーズが高かったこともありますが、法人営業として株主からいい評価を得られるための情報発信や提案力などが評価されたようです。

Cさん(20代):銀行(財務分析)から大手コンサルティングファーム(金融業界担当)

企業の財務分析や銀行向けのサービス展開など、コンサルティングファームでは銀行員経験者の採用ニーズは高い状況となっています。Cさんも経験がそれほど多かったわけではないのですが、金融業界や銀行システムの知見が評価され、金融担当コンサルタントとして採用となりました。

転職を検討する際は、転職エージェントやスカウトサービスも有効

転職エージェントには、銀行業界に強いキャリアアドバイザーが在籍しています。金融業界の採用動向や、これまでの経験・スキルの「市場価値」、同業種・異業種への転職事例、職務経歴書の作成方法や面接の注意ポイントなど、さまざまなアドバイスをご提供します。

また、スカウトサービスの場合は、自身の経験やスキル・希望条件などの登録することで、興味を持った企業や人材を探す転職エージェントからスカウトが届きます。思いもよらない自身の経験やスキルに魅力を感じられ、意外な求人のスカウトが届くことも少なくありません。自身の市場価値を知りたいという方にもスカウトサービスは有効です。

銀行員としての経験・知見を効果的にアピールするためにも、転職エージェントやスカウトサービスの活用をご検討ください。

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アドバイザー

水谷 努

大学卒業後、メガバンクに入行。法人営業、個人営業、資産運用部署を経験。2003年から人材業界にて、金融業界中心にコンサルタントとして企業と個人へのアドバイザリーを担当。MBAについて、大学との共同でセミナー講師の担当やリクルート代表として各メディアへの出演やインタビュー対応なども実施。

※本記事での内容は取材時点での情報になります。