リクルートダイレクトスカウトは、LINEヤフー株式会社 マーケティングソリューションカンパニーの加藤喜大氏によるビジネスセミナーを開催しました。MC佐藤由菜氏のもと、営業から事業企画職、事業責任者を経て人材・組織開発にジョブチェンジした経緯や、“ブリッジ人材”による人材最適配置の考え方、マインドセットなどを語っていただきました。
加藤喜大氏
2014年にLINE株式会社に新卒2期生として入社。法人向けに広告商品の営業を担当したのち、事業企画職にジョブチェンジ。2023年のグループ再編に伴い異動し、現在は経営推進部部長と人材・組織開発チームリーダーを兼務する。
営業現場・事業責任者から人材・組織開発へのジョブチェンジ!わたしの職務経歴書
2023年にLINEとYahoo! JAPANが経営統合したLINEヤフー株式会社は「カンパニー」という制度を設けており、検索やコマースなど7つの事業領域を会社として捉えています。それぞれが独立してPLを持ち、採算を考えながら事業推進するという経営方式です。
私が所属しているのはマーケティングソリューションカンパニーの経営企画で、カンパニー内には営業やプロダクトなどの組織があります。LINEヤフー株式会社には、7つのカンパニーとは別に、「横断組織」と呼ばれるコーポレートの部門があり、こちらにも経営企画や人事などの組織があります。私はカンパニーの経営企画と人材・組織開発を担当していますが、対になる組織がコーポレート部門にもあるので、コーポレート部門とカンパニーを橋渡しする“ブリッジ”人材として、全社の経営企画や人事のHRBP(HRビジネスパートナー)と日々やり取りしています。
私が所属するマーケティングソリューションカンパニーでは、2023年の経営統合によって評価制度を刷新し、新しい会社としてスタートしています。現在は、カンパニーのボード陣やHRBPと議論をしながら、新制度をどのように導入し活用するのかを協議している最中です。新会社の1期目で大変なことも色々ありましたが、カンパニー長を筆頭に、一人ひとりが「事業を継続的に成長させる」という目標に向かって取り組んでいます。
これまでの私のキャリアを振り返ると、私は2014年4月にLINE株式会社に新卒で入社し営業を任された後、事業企画にジョブチェンジし、5年ほどLINE広告のプロダクトを担当していました。2021年10月からは公式アカウントの事業企画を任され、2023年の経営統合のタイミングで現職に至ります。複数のポジションを渡り歩いていますが、自分で手を挙げて異動したことは一度もなく、当時の上長や責任者などに声をかけてもらってジョブチェンジしました。自分では「気づいたら現職にたどり着いていた」という感覚ですが、どのポジションでも「永続的に成長する」「お客様の課題を解決する」というゴールは一貫しています。目標は共通しているので、ジョブチェンジをしても困ることはありませんでした。
人事組織と事業組織を繋ぐ”ブリッジ人材”が解く!『人材最適配置』の考え方
現在、私は「ブリッジ人材」として、「カンパニー内」と「カンパニー外」の2つの軸で組織の橋渡しをしています。カンパニー内では、営業やプロダクトなどの事業組織と人事を、カンパニー外ではコーポレート部門とカンパニーを橋渡ししています。
LINEヤフー株式会社は、Yahoo! JAPANとしてのメディア事業からスタートし、IT産業の発展とともにショッピングやコマースの領域に進出しました。メディアが成長してディスプレイ広告のビジネスが始まり、直近では「LYPプレミアム」というサブスクリプション型のビジネスや金融事業などにチャレンジしています。ITという非常に変化が激しいマーケットでビジネスをしているため、変化に対応しながら人材をアサインしなければなりません。他部署の人材をアサインして担当してもらうこともあれば、新たな人材を社外から採用して配置することもあり、「人材最適配置」はとても重要なテーマです。
人材最適配置を考えるにあたり、経営のフレームワークの1つである、「プロダクトポートフォリオマネジメント」を活用した図をご紹介します。このフレームワークは、縦軸を市場成長率、横軸を市場占有率にして経営資源を分析しますが、人材最適配置に置き換えると図のようになります。
縦軸は年次の成長率、横軸は売上や利益に対してかけた工数、つまり生産性です。どのくらいの人数で売上や利益を生み出すのかを、このフレームを用いて人材の配分を検討しています。人材配置は1~2年スパンで変わることも多く、タイムリーに組織や人材の流通が行われるようになっています。具体的には、プロダクトの年次成長率や売上・利益指標データと社内の職種別、組織別、プロダクト別、MM(人月・工数)などをビッグデータとして保有しており、全て掛け算で見られるようになっています。定量的なデータを元に仮設立てをして、売上や利益、事業成長率から、どのプロジェクトに何名人をアサインするのかといった議論をしています。
ただし、プロダクトの規模や成長率を見て最適な職種や人数をアサインするまでは、保有データで判断ができるのですが、アサインするのは一人ひとり強みや個性が異なる「人」です。数字上は正しいように見える配置も、実務としてうまく機能しないケースもあると考えています。
また、職種や所属組織、年収やスキルなどは事実として把握しやすい情報ですが、プロダクトや人との相性やモチベーション、キャリア志向や適応力などは正確に把握することが難しい情報です。ジョブチェンジによってモチベーションが下がってしまう可能性もあるので、メンバーや上長などにヒアリングして、一人ひとりの正確な情報を得るようにしています。
もともと私は事業企画やLINE広告などの部門で組織長を任され、数十名のメンバーを抱えていました。やることがたくさんあるので常に人材を求めていましたが、同時に自組織の適切なメンバー数が分からず、モヤモヤしていたことを思い出します。「担当領域を成長させる」というミッションがあるので、組織長は常に人材を欲しています。ブリッジ人材になった現在、当時モヤモヤしていた「人材最適配置」という課題の最適解を出すことにチャレンジしようと思いました。
ただ、組織長などの責任者からすると、期待していた人材が自組織から異動してしまうのは受け入れにくいという側面もあります。自分も組織長を経験しているので、彼らの気持ちに寄り添いながら、全体としての人材最適配置を目指したいと考えています。
これまでの経験から語る!『人材最適配置』を考える上で必要な視点とマインドセット
人材最適配置を考える上で、必要な視点とマインドセットとしては、まず「会社が目指すゴールに導くためにどうしたらいいか」という軸を持つこと。そして「人」を配置するからには、一人ひとりをきちんと理解して大切にすることが重要です。
私のキャリアを振り返ると、やはり営業経験がなければ営業の気持ちが分からないし、組織長の経験がないと同じ立場の人の考え方も分かりません。過去のキャリアは全て役に立っていて、全て現在につながっています。そういう意味では、相手の気持ちを考えるのがとても大事で、人材最適配置に必要なマインドセットだと思います。
LINE広告の組織長を任されていた時に、企業を買収して買収先の人たちと一緒に働く瞬間がありました。当時の経験や苦労があったからこそ、LINEヤフーとして統合した時も、異文化交流の経験を活かせたし、経営企画や人材・組織開発でチャレンジしている経験も、この先につながっていくのだと思っています。
そのため、もしジョブチェンジの機会があれば、これからのキャリアのためにチャレンジすると良いと思います。ジョブチェンジによって得られたかもしれない経験や人脈などを、最初から断ってしまうのはもったいない話です。新しい環境に飛び込むまでは怖い気持ちがあるかもしれませんが、勇気を出して飛び越えてみると、その先には面白いことが待っています。もしキャリアに不安や悩みがあるのであれば、信頼できる身近な人に第三者の意見を聞くのも良いでしょう。