大手コンサルティングファームの採用責任者を経て独立
1998年、大学を卒業して、まず入社したのが株式会社リクルートスタッフィング。企業の継続的な発展や競争力はヒトによって決まるという信念から、より多くの企業や人と接点がある仕事を求め、当時まだ黎明期だった派遣業界に飛び込みました。大手製造業から流通大手、さらには創業して間もないベンチャーなど多くの企業の営業を担当した後、当時、男性では初の紹介担当としての異動を命じられました。これは営業と紹介担当の業務が分担されていたことにより生じていた壁を壊すという役割があり、企業側に立つ営業と、派遣スタッフ側に立つ紹介担当、これまで分断されてしまいがちだった双方をつなぎ、より効率的で精度の高いマッチングを実現。社内改革に貢献したことが評価されMVPを受賞するまでの仕事ができました。求職者の言葉には表れない本音や意図を把握し、時に思考のパラダイムシフトを図りながら精度の高いマッチングを図っていくという意識は、この時に培われたものだと思います。
2003年、20代後半に差し掛かり、海外留学なども考えていた折、当時クライアントだった朝日アーサーアンダーセン(現プライスウォーターハウスクーパース)の人事担当者より、「コンサルティングファームの人事担当としてうちに来ないか」と声をかけていただきました。
同社ビジネスや人材ニーズの背景を把握し、長期的な人材採用や活用の提案を心掛けていたのを評価していただいたようです。これまでは外部から支える立場でしたが、企業の中で当事者として人の採用や育成に携われる。しかも人材こそが全ての経営資源と言っても過言ではないコンサルティングファームという舞台で勝負できるのは大きなチャンスと捉えて、転職を決意しました。
ミッションは新卒・中途の採用と人材育成。当時はまだ会社としての規模も小さく、業界自体の認知度が今ほどない中で、私を含めた人事2名と派遣スタッフ2名という体制で、コンサルタントを年間200名以上採用するという重責を担っておりました。とにかく忙しい日々でしたが、部門別のセミナーや1日選考会など様々な採用イベントを企画したり、採用業務の改善や効率化を図り、毎年目標を達成。同社の採用責任者として多くのコンサルタントと出会うことができ、彼らの生き方や働き方、考え方に触れたことは、今の大きな財産となっています。
2006年からは採用責任者にも昇格しましたが、業務を遂行しつつずっと心の中にあったのは、まだ黎明期であり玉石混交のエージェント業界に対する想い。社会的意義があるのに認知度が低く怪しまれてしまう業界の状況、未成熟な産業だからこそ、これから大きな変革が起きるという確信、さらには自分であればもっと別のやり方をするのにという仕事に対する想いがあり、それであれば、自らやってみようと一念発起、リネアコンサルティングを設立するに至りました。2008年9月、高校時代からの親友と共に立ち上げ、現在はコンサルティングファームに関わる仲間などを含め6名で日々業務に邁進しています。
求職者の方にいつも勧めている「キャリア活動」とは
リネアコンサルティングの強みは、やはりコンサルティングファームでの経験者が集まっており、他社にはない情報量と人脈を持っているということ。コンサル業界内での転職を考えている方はもちろん、事業会社からコンサルファームを目指す方、ポストコンサルとして事業会社を目指す方、それぞれに対して的確なアドバイスを含めた提案ができるという自信があります。
大切にしているのは、言葉の裏にある背景を読み解き、求職者の想いを本質から理解するということ。他業界にいる方からするとコンサルティングファームは分かり難く、イメージと実情の乖離が大きい業界。一人ひとりの想いに寄り添い、なぜコンサルなのか、そこで何を実現したいのか、将来、どのようなキャリアを目指すのか丁寧にヒアリングしつつ、私からは業界事情や適性など含めてアドバイスしています。
私がよく求職者の方に伝えているのは、「転職活動をしないでほしい」ということ。業務内容、給与、上司との相性などの理由から転職を考え、そのタイミングで慌てて転職活動を開始する方が多いのですが、自分のキャリアを長期的な線で捉え、日頃から継続的にキャリアを考える活動をしておくべきだと私は考えております。必要なのは、転職に対する活動ではなく、キャリアに対する活動です。現在のマーケットを把握し、自分の価値を知っておくこと、そして業界の潮流を読み、目標を定め、そのギャップを把握し、それを埋めるために行動することが大切であると考えております。転職はあくまで解決手段の一つです。日頃からキャリアに関して考える活動=「キャリア活動」を継続的に行ってみてはいかがでしょうか。
コンサルティング業界は今、チャレンジできる面白い時期
コンサルティング業界は、現在、様々な領域でムーブメントが起きています。ひと昔前だと、ERPなどのシステム導入支援、内部統制対応や規制対応など、時代ごとのトレンドがありましたが、現在はデジタル、AI、Fintechなど多くの新しい領域のビジネスが出てきており、今後、どの領域のビジネスがコンサル業界において成長していくかを見極めている状態。各領域における専門家が少ない故に、領域の異なる経験者の採用も積極的に行っており、興味のある領域にキャリアをシフトするチャンスがあります。
例えば、IBM Watsonといった人工知能が生まれ、医療、顧客対応、組織や教育などに用途が広がっていますが、この技術を活用して新たなビジネスやマーケットを創るという仕事や、クライアントと共にイノベーションを起こすお手伝いをするという仕事などもあります。
マーケットの広がりと合わせて、ポテンシャル採用も増えています。例えばAIの経験者が少ない現状から、業務プロセスに詳しいコンサルタントがRPA(Robotic Process Automation)から入って、AIのコンサルタントにキャリア展開をしていく例。サイバーセキュリティの分野でも、ネットワーク領域のエンジニアをセキュリティ領域のコンサルタントとして育成していく。こうした動きは各ファームにおいて多く出てきています。
現在、コンサルティング業界にはBIG4や中堅ファーム以外にも、少数精鋭のブティック型ファーム、日本に進出したばかりの外資ITベンダー、世界が主戦場の成長性の高いマーケティングテクノロジーベンチャーなど、知名度はなくても将来有望な企業がたくさんあります。弊社にはコンサルティング業界における知見、人脈を生かした独自の案件も多く、専属で契約をしている企業などもあります。「キャリア活動」を通じて、まずはご自身の可能性を知ることから始めてみませんか。
大森 崇
リネアコンサルティング株式会社 代表取締役社長
新卒でリクルートグループに入社し、人材に関わる営業やコーディネーターとして約5年勤務。プライスウォーターハウスクーパース株式会社(旧ベリングポイント)に転職し、人事担当として新卒・中途採用や育成業務を経験した後、入社4年目に人事部の採用責任者に昇格。2008年9月にコンサルティング業界を中心とした人材紹介サービスを行うリネアコンサルティング株式会社を設立し、現在に至る。