転職エージェントには本音をどこまで話す?積極的に伝えること、面談で注意したいことを解説

転職エージェントとの面談に際しては「どこまで本音で話すべき?」「全て正直に話す必要があるのだろうか?」などと疑問や不安を抱く方もいるかもしれません。希望の転職を実現するために、転職エージェントとどのように向き合い、何を伝えるべきでしょうか。また、転職エージェントとのコミュニケーションで気をつけたいのはどのようなことでしょうか。組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

転職エージェントとの面談ではどこまで本音で話すべきか

転職エージェントとの面談では、担当キャリアアドバイザーから、これまでの職務経歴や退職に踏み切った理由、転職先への希望条件などを確認されます。その際に「どこまで本音で話していいものだろうか」と迷う方も少なくないようです。

特に、「キャリアに行き詰まりを感じて悩んでいる」「退職理由は現職で低評価だったこと」「自力で転職活動をしてきたが、面接で落ちてばかりなので対策してほしい」といったネガティブな本音は言いにくいかもしれません。「他者に弱みを見せる」=「ビジネスパーソンとして望ましくないこと」と考える方も一定数いるのではないでしょうか。

しかし転職エージェントはあくまでも、求職者が望む転職を実現するために伴走するパートナーであり、転職を支援するアドバイザーでもあります。適切な情報提供やアドバイスを行うためには、本音や実情にもとづいて求職者を理解することが不可欠なのです。

従って転職エージェントとの面談では、基本的に本音ベースで話すことをおすすめします。可能な範囲で情報開示をしたほうが、より希望に寄り添ったマッチングやアドバイスなどのサービスを受けられ、その結果、希望する転職の実現につながりやすいと言えるでしょう。

転職エージェントに本音で積極的に伝えたほうが良い4つの項目

上記を踏まえて、転職エージェントとの面談で、できる限り本音で伝えたほうが良いことを解説します。

退職理由

ネガティブな退職理由がある場合、転職エージェントに正直に話すのが難しいこともあります。しかし、一般論や表面的なことを伝えるだけでは、自分の価値観や志向性について理解を深めてもらうことができず、その結果、適切なアドバイスをもらうことができなくなる可能性があります。
退職理由には、自分が本当に改善したいことや、実現したいことの重要なヒントが含まれていることがあります。できる限り正直に話すことで、転職の目的に沿ったアドバイスや求人を提案してもらいやすくなるでしょう。

希望条件

希望の年収や勤務条件なども、転職エージェントがマッチングを行う際の重要な情報となるため、まずは本音ベースで伝えることが大切です。それによって転職エージェントの求職者理解がより深まり、希望条件の実現につながる情報を提供してもらいやすくなるでしょう。
「自分の求める条件が相場観に合っているか」「実現可能か」が分からない場合も、まずは率直に相談することで、優先順位付けを行って整理したりすることができるでしょう。

特にサポートしてもらいたいこと

転職エージェントに対してどのような支援をしてほしいかも、できるだけ具体的に伝えましょう。「この条件に合致した求人を重点的に紹介してほしい」「応募書類の作成でアドバイスをもらいたい」「面接準備を手伝ってほしい」など、自分の要望を遠慮せずに伝えたほうが、よりニーズに合致した積極的なサポートを受けやすくなります。

ほかの転職エージェントも含めた転職活動の状況

転職サイトや知人の紹介、ほかの転職エージェントを併用していることなど、面談中の転職エージェント以外で進めている活動があれば、その状況も可能な限り共有しましょう。応募した求人や進んでいる選考を把握してもらうことで、全体の進捗に合わせた的確な提案やサポートを受けやすくなるでしょう。同じ求人を重複して紹介されることがなくなるほか、ほかの転職エージェントとは異なる切り口のアドバイスや求人を紹介してもらえるかもしれません。

また、正直に転職状況を開示することは、転職エージェントとの信頼関係を深めることにもつながり、コミュニケーションが円滑に進む可能性もあります。

転職エージェントとの面談で注意したいこと

転職エージェントとの面談で注意したいことや、避けたいことについて解説します。

虚偽の経歴を伝える

面談で嘘の職務経歴を伝えることや、話を盛ることは避けましょう。もし虚偽の経歴で求人に応募すれば、経歴詐称になってしまい、応募企業や転職エージェントの対応に混乱を招くだけでなく、発覚すれば内定の取り消しや入社後の懲戒解雇を招くこともあります。
また、「経歴詐称をした人物」とみなされて転職エージェントを利用できなくなる可能性もあり、そうなれば、その後の転職活動の難易度が上がってしまうでしょう。

不満や愚痴に終始する

退職理由などを伝えるときは、極力事実ベースで話し、不満や愚痴は最小限にとどめることをおすすめします。ネガティブな発言に終始すると、キャリアアドバイザーは「何を前向きに実現したいのか」が把握できず、マッチングがしづらくなる可能性があります。
また、ほかの転職エージェントへの不満や、応募企業の悪口なども避けたほうが良いでしょう。「自分(面談中の転職エージェント)の不満もほかの場で言っているのだろうな」と想像されてしまい、信頼関係を損ねてしまう可能性があります。

無断で遅刻やキャンセルをする

転職エージェントに対して、マナー違反の対応をすることは避けましょう。面談を無断でキャンセルしたり、連絡もなしに遅刻をしたりするなど、ビジネスパーソンとして信用を損ねる行為をすれば「基本的な事柄にも対応できない」「信用できない人物」という印象を与え、「企業に推薦しにくい」と判断されてしまうかもしれません。

転職エージェントとの面談の事前準備

転職エージェントとの面談の流れと、事前に準備しておきたいことについて解説します。

転職エージェントとの面談の流れ

転職エージェントとの面談はどのように進むのか、全体の流れの一例を以下にご紹介します。

自己紹介……お互いに自己紹介をした後、キャリアアドバイザーから、これまでの支援実績や自身の経歴、サポートの流れなどについて説明されることもあります。

経歴のヒアリング……「これまでのキャリア」「成果・実績」「得意とする分野・スキル」などについてのヒアリングが行われます。

転職の目的や条件を確認……今後のキャリアビジョンを踏まえ、「今回の転職の目的」「転職先に求める条件」「転職時期の希望」などについての確認が行われます。

転職の方向性の提案……転職の目的や希望条件を踏まえ、キャリアアドバイザーから転職の方向性や選択肢が提案されます。

求人の紹介……転職の目的や希望条件にマッチする求人や、おすすめの求人の紹介があります。また、求職者自ら転職エージェントのシステムを利用して求人を検索するケースもあります。

今後の転職活動の進め方についての案内……今後の転職活動の進め方、大まかなスケジュールなどの案内があります。

面談の前に整理しておきたい項目

面談の前には以下のような準備をしておくと、キャリアアドバイザーとのコミュニケーションがスムーズになり、早く希望に合ったマッチングをしてもらえる可能性が高まるでしょう。

自身の経験・スキル・実績・専門性を棚卸して応募書類を作成する

これまでの職務経歴(所属企業・所属部署・担当業務)を書き出し、成果や実績、スキルなどを整理しましょう。できればそれらを履歴書・職務経歴書に反映し、まとめた上で、面談の前に転職エージェントへ送っておくことが望ましいでしょう。そうすることで経歴を一から説明する時間を省き、求人の検討などに時間を使うことができます。

希望条件を整理する

転職にあたっての希望条件(業界・職種・ポジション・年収・勤務地など)を整理しておきましょう。その場で思いつくまま話すと、希望条件の数が膨れ上がってしまい、焦点がぼやけてしまうこともあります。「今回の転職で何を実現したいのか」という軸を定めた上で、希望条件を挙げて優先順位をつけておくと良いでしょう。

強みやアピールポイントを整理する

特に経験豊富な年代のビジネスパーソンは、企業からより即戦力性を求められ、選考で比較検討されるほかの応募者も、経験・スキルの豊富な方々である傾向があります。そこで自身の経験・スキル・実績・専門性などを整理し、差別化できる部分を、数字やエピソードを用いて端的にアピールできるようにしておくと良いでしょう。

キャリアプランやキャリアビジョンを明確にしておく

昨今は、異なる業界や未経験の職種に転職する、いわゆるキャリアチェンジ転職も増えています。とはいえ、「何となく○○業界・○○職種に興味があって……」といった曖昧な理由では、転職エージェントもマッチングや企業への推薦がしづらいものです。異業種・異職種転職に限りませんが、自身の経験・スキル・実績・専門性などをもとにしたキャリアビジョン・キャリアプランを、できるだけ明確にしておくと良いでしょう。

転職エージェントとの面談を有効活用するコツ

転職エージェントとの面談を、より有意義なものにするためのポイントについて解説します。

転職活動における自分のスタンスを伝える

すぐに転職を実現したい場合は、転職エージェントに「転職に強い意欲を持っており、今すぐ転職したい」としっかり伝えることが大切です。転職実現のために、スピーディに転職支援を進めてもらえるでしょう。転職を迷っている場合は、「希望に合う求人が見つかれば転職したい」「今後のキャリアのために、転職も視野に入れたアドバイスがほしい」など、転職活動における自分のスタンスを伝えましょう。キャリアアドバイザーは、求職者の状況やスタンスに応じてサポート方法を変えてくれるでしょう。

年収は現実的な金額を意識する

主な転職目的が「年収アップ」である場合でも、希望年収は現実的な金額を伝えることを意識しましょう。あまりにも現実からかけ離れていると、マッチする求人が見つからない可能性もあるため、自身の経験・スキルや、志望する業界・職種の給与水準などから実現可能な年収の範囲を想定することが大切です。よく分からない場合は、キャリアアドバイザーに年収の相場観を聞いても良いでしょう。

また、転職先に対する希望条件が多すぎると紹介を受けられる求人が限られてしまうため、優先順位付けを明確にしたり、ある程度の幅を持たせて伝えたりすることをおすすめします。

意に沿わない提案もすぐに否定せず話を聞いてみる

転職エージェントでは、入社後の活躍の可能性を考慮してマッチングを行うため、ときには自分が希望していない業界・職種の求人を提案されるケースもあります。その際、「希望に合わないから」と頭ごなしに否定せず、キャリアアドバイザーにその意図を確認してみることも大切です。

一見、希望と異なっていたり、興味のない業界・職種だったりしても、「実は自分が仕事で叶えたいことや、自分の価値観にマッチしていた」「経験・スキルが大きく活かせる分野だった」というケースもあります。転職支援のプロの客観的な視点からアドバイスを受けることで、可能性が広がることもあるため、選択肢の一つとして考えてみるのも良いでしょう。

担当キャリアアドバイザーとはフラットな立場で接する

社会人経験が豊富な求職者の中には、自分よりも業界や職種への理解が不足していると思われるキャリアアドバイザーに対して、高圧的な態度を取ったり、「どのくらいの知見があるのか?」とわざと試すような質問をしたりするケースもあるようです。キャリアアドバイザーも人間なので、過度に強いプレッシャーをかけられたり、要求をされたりすると、対応がしづらくなってしまうかもしれません。

転職エージェントのキャリアアドバイザーは、転職支援のプロとして求職者に伴走するパートナーです。希望の転職を実現するために、相手を尊重する姿勢を忘れず、信頼関係を築くことを意識しましょう。

転職エージェントと共にスカウトサービスも併用を

転職活動の選択肢を広げるために、転職エージェントと同時にスカウトサービスにも登録してみてはいかがでしょうか。自身で求人を探す時間を省くことができるだけでなく、経験・スキルに注目した企業や転職エージェントのスカウトにより、意外な求人やポジションに出会えることもあります。

転職エージェントからスカウトを受けた場合、サービスによっては、選考に進む前に担当者との面談を申し込むこともできるでしょう。ぜひ、スカウトサービスの活用もご検討ください。

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アドバイザー

粟野友樹氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。