いまこそ「中期的な身の置き所」を考える良い機会。その見方とは?

本稿執筆時点(*2020年3月末)で動静の定まらない新型コロナ感染の行く末。社会や経済への打撃は深刻なものとなっており、直接的な影響を受けている業界に所属されているエグゼクティブ層の皆さんにおいても転職活動を本格化されていらっしゃることを、当社での転職ご相談の増加具合からも日々感じております。
短期的な雇用リスク、収入リスクへの対応が必要な方もいらっしゃり、喫緊のご状況へのご支援を当社としても最大限図る所存です。しかしこれはいずれ終息することでもあり、こういうときにこそ、実は中期的な身の置き所を考える絶好のチャンスでもあり、それを織り込んだ転職活動をぜひしていただきたいと考えています。

本稿執筆時点(*2020年3月末)で動静の定まらない新型コロナ感染の行く末。社会や経済への打撃は深刻なものとなっており、直接的な影響を受けている業界に所属されているエグゼクティブ層の皆さんにおいても転職活動を本格化されていらっしゃることを、当社での転職ご相談の増加具合からも日々感じております。
短期的な雇用リスク、収入リスクへの対応が必要な方もいらっしゃり、喫緊のご状況へのご支援を当社としても最大限図る所存です。しかしこれはいずれ終息することでもあり、こういうときにこそ、実は中期的な身の置き所を考える絶好のチャンスでもあり、それを織り込んだ転職活動をぜひしていただきたいと考えています。

緊急事態時に、焦って転職しない

今回の新型コロナの件で業績や計画の下方修正を行う企業が多く出ています。景気の下降局面は不可避でしょう。しかし、求人倍率はその前から下がってきていましたから、今回のことがなくても景気や求人市場はシュリンクしていく流れにあったのではないかと思います。

先のリーマンショックや東日本大震災の際に、今回と同じような緊急事態の状況下、不本意な転職をされた方が多く出ました。事態の中で妥協や不本意な転職決定をされ、そのほとぼりが冷めた2010年代、当社への転職ご相談者の中にも「あの時、焦って転職してしまいまして」「他に行き先がなかった(とご本人が思った)ものですから、やむなく」と入社した先で折り合い悪くパフォーマンスも出せず、結局短期でまた次の転職を検討するという方々が多くいらっしゃいました。

ですから、ここは今回、この市況・経済局面を一つのよい契機として、「自分が転職しようとしている企業が属する業界・市場の将来性は充分か?」について改めてしっかりチェックしてみることは意味があるでしょう。
例えば、次のような3つの切り口が考えられます。

今回を契機に、足場の固い業界・中長期的にニーズや成長性のある業界を見定める

【1】生活に欠かせないサービス・商品を扱う業界

食べることや生理的なこと、基本的な生活行動に欠かせない業界は、今回のような事態や景気の波に左右されにくく、中長期的な安定性の観点からビジネス環境の底堅さを改めて認識できます。
経済バブルに乗ずるという刺激や大儲けのようなこともない代わりに、バブルクラッシュでもボラティリティが小さい。このセクターには成熟した中堅中小企業、レガシーな(地味目の)企業が多く、好景気の時期には人気がないことが多いのですが、今後という意味では改めて注目してみて欲しいです。

【2】ニーズのなくならないソリューションやサービスを扱う業界

企業活動、個人活動を支える基盤となっている事業〜通信や生活インフラ、企業活動の根幹を支えている購買・経理・人事・営業販促・情報システムなどをサポートしているソリューションプロバイダも底堅いですね。転職検討先企業の事業が、導入先企業にとって「なくてはならない」「止まると困る」ものかどうかという観点で見てみると良いでしょう。
一方で、効果が曖昧なものや「あればよいかもしれないが、なくても最悪困らない」ソリューション提供者は、こうした危機モードの時期や景気後退局面では非常に経営が厳しくなります。総じて予算を絞るか止められてしまいますので。

【3】環境変化に対応するソリューションやサービスを扱う業界

いま、一気にビデオ会議やオンラインセミナーなどが広がっています。EC・宅配もそうですね。ニュースでは他に大型ディスプレイ(在宅ワーク用)や冷蔵庫(食料買いだめ)、調理家電(自宅調理の機会増)なども売れ行き急増と報道されています。

帝国データバンク「TDB 景気動向調査」によると、2020年3月(速報値。3月17日~24日の集計結果)では、売上高が減少している企業は55.8%と半数を超え、増加している企業の割合(21.4%)を 30ポイント以上上回ったとのことですが、一方では、企業の約2割は3月の売上高が増加しているそうです。特に、電気通信サービスやソフトウェア業界、IT向け人材派遣などで売上高の増加を見込む企業が多いとレポートされています。

今回のリモートワーク、巣篭もり(家ごもり)化の流れに沿った商品やサービス、ソリューションが伸びるのは当然といえば当然のことでしょう。
これを機会に「中国から輸入不可となった商品の生産の依頼を受けている」(電子計算機等製造)、「テレワーク関連の案件増加が見込める」(ソフトウェア受託開発)、「外出が減ることで宅配の需要が高まる」(飲食料品小売)など、新たな需要開拓を図る各社の動きも「TDB景気動向調査」で取り上げられています。

働き方改革にも沿った変化がそこここで起きているように感じますし、これを機に次の時代の潮流・底流となるサービスや商品を提供している企業を選択することも、ありでしょう。一方で気をつけたいのは、新型コロナ渦が過ぎ去った際に市場がシュリンクしてしまうようなところを目先に踊らされて選ばないことです。

カルチャーマッチしているか否かは絶対に外さない

3つ、転職検討先の業界チェックの視点での活動アドバイスをいたしましたが、もう一つ、ぜひ、ご自身の人物タイプ・価値観、組織風土がマッチした企業を選んでいただくことをお願いします。

いくら有望業界やサービス・商品を展開している企業だと思えたからといって、企業風土が合わない会社に転職してしまい、肌も合わずに成果も出せず短期間でまた次の転職活動を行うというのは、率直にミドルやシニア世代にとっては非常にしんどいものですし経歴も汚しキャリア上のリスクが一気に高まってしまいます。

この危機モードだからといって目先で動くことだけは絶対に避けていただけるよう、今回の3つの観点での転職先企業の見極めとご自身とのマッチ度合いをしっかり確認いただければと願います。
もしこれらのことに合致する転職希望先が見つかっていない場合は、焦って転職しない、あえて現職に(少なくとも当面の間)留まるという選択も大事です。

繰り返しとなりますが、ウイルス流感はいずれ終息します。こうした状況下では流行中の現状に目が囚われがちですが、「アフター・新型コロナウイルス」についてもしっかり目を向け、転職先企業の事業環境がどう展開すると思われるか、イメージを凝らすことこそ大事なこととなります。くれぐれも近視眼的な選択に陥って、その後に不本意なこと、大変なことにならないよう心して動いていただきたいと考えております。
ともあれ、1日も早く終息するよう願っております。

ではまた、次回!

井上和幸氏

井上和幸

1989年早稲田大学卒業後、リクルート入社。2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。2004年よりリクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)。2010年に経営者JPを設立、代表取締役社長・CEOに就任。 『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ)『30代最後の転職を成功させる方法』(かんき出版)など著書多数。

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