求職者の方の志向と価値が明確になるまでは決して転職を勧めない
まず、私がキャリアコンサルタントになったきっかけは、2つあります。1つは、新卒入社6年目でITエンジニアとして勤務していた際、難病を患い、半年の入院生活を余儀なくされた中で、今後の人生やキャリアについて改めてじっくりと考える機会が持てたこと。もう1つは、復職後、今後のキャリアについて社内のキャリアアドバイザーの方にいろいろと相談に乗っていただき、寄り添うようにフォローされていくうちに、まさに「救われた!」と実感したことです。社会人になり、「誰かに救われた」と感じる経験は、そう多くはないと思います。これをきっかけに、私はキャリアアドバイザーやキャリアコンサルタントという職業に魅力を感じ、勉強をスタートしました。その中でご縁があり、2006年にマンパワーグループに入社。それから10年以上、IT・コンサルティング業界を中心に、さまざまな業界のキャリアコンサルティングに携わっています。
私がキャリアコンサルティングをする際に大切にしていることは、求職者の方の「志向と強み」を重視する姿勢です。求職者の方とお会いしたら、まずしっかりとお話を伺います。そして、その方の志向を捉えられたと感じたら、その志向に合わせて案件をご紹介するのです。希望が叶うのか、難しいのであれば、どうキャリアを構築していくのか、転職市場と照らし合わせ、どのタイミングが良いのか等、可能性を巡らせて複数の選択肢を提示するよう心がけています。この提示こそが、私の価値の1つだと考えています。
中には、「今の会社を辞めようと思っているけれど、次のことは特にまだ考えていません」「どんなお仕事でもよいので、紹介していただけないでしょうか?」とおっしゃる方が、実は少なくありません。私はそうした方にはすぐに案件をご紹介しないケースがあります。その代わり、その方のお話を伺いながら、これまでのキャリアの棚卸しをし、ご自身の強み・ウリ・価値をよく理解していただくようにしています。なぜなら、そうした方は、ご自身で理解されている強みや価値と、本来の強みや価値が異なるケースが多いからです。キャリアの棚卸しが終わり、強み・ウリ・価値が見えてきたところで、「もう一度、ご自身のキャリアや人生について考えてみてください」と送り出すのです。そのうちの何割かの方は、キャリアの志向をご自身で決められた上で、再び私のところにいらしてくださいます。
キャリアコンサルタントの魅力は、何といっても転職という人生の岐路に立ち会えること。でき得る限り良い形で、その岐路に立ち会いたいと思っています。だからこそ、求職者の方の志向と価値が明確になるまでは、転職を勧めないようにしています。
ここで、マンパワーグループのことを少し説明いたしますと、当社は、世界80カ国・地域に2,900のオフィスを持つ総合人材サービスのグローバルカンパニーです。実は日本で初めて派遣ビジネスを始めた会社でもあり、お蔭様で50年以上の年月が経ちました。その間、長く信頼あるお取引をさせていただいているクライアントが多いことは、私たちの強みの1つです。また、グローバルネットワークを活用し、外資系企業案件、語学力を要する案件、海外勤務の案件が多いことも特徴です。
人材サービス全般ということで、社員もさまざまなサービスに関わることが可能なわけですが、私自身も職業紹介を離れ、人事現場で採用業務に従事した期間があります。実際に人事採用現場に立つことで、人事・現場担当者が候補者のどの点を注視しているのか、どういった基準で採用を行っているのか、選考プロセスはどうしているのか、今後の採用トレンドはどうなっているのか等、採用選考の裏側を知ることができました。職業紹介だけを行っていたら、この貴重な情報は得られなかったでしょう。
日々のコンサルティングの中でも、この経験を活かし、人事目線で、書類の書き方や面接時のアドバイス、条件交渉等を行っています。この点も私の価値の1つだと考えています。
今後も基本的には「売り手市場」が続くだろう
私が主に担当するIT・コンサルティング業界は、現在は企業の採用ニーズが非常に高く、未経験者からベテランまで、さまざまな方に可能性があります。また基本的な傾向としては、「ITエンジニアからコンサルタント」「コンサルタントから事業会社の経営企画」という流れで転職をお考えの方が多いため、私としては、そうした求職者の方にご紹介できる案件を数多く揃えるよう、常に心がけています。
現在は、日系企業の海外進出が盛んで、それに伴う採用ニーズが高い状況ですが、もう少し引いて眺めると、おそらく今後も基本的には「売り手市場」が続くでしょう。なぜなら、ご存じの通り、いよいよ日本の人口減少が目に見えるようになってきたからです。もちろん景気の移り変わりによって、その時々の市況は微妙に変化するでしょうが、大きく見れば、企業側が採用に苦労される状況が続くと思われます。私も企業人事の方々から相談を受ける機会が増えておりまして、マンパワーグループに多く登録されている外国語が堪能な方をお勧めしたり、ポテンシャル採用やベテラン採用の可能性を探ったりして、一緒に新たな採用の形を模索しています。
バイリンガル人材の採用がトレンドに
私は、今後の転職市場を的確に表すキーワードが、「売り手市場」のほかにもう1つあると考えています。それは「グローバル」です。企業側の傾向を見ると、最近は日系IT企業や日系コンサルティング企業の海外進出が盛んになっており、海外拠点勤務の案件などが増えています。人口、労働力減少と日本の市場拡大が見込みづらくなった今、企業側もより海外にその可能性を探るようになっています。それに伴い、「語学力のあるITエンジニア」「語学力のあるコンサルタント」が重宝される傾向がより強くなっています。これからは、エンジニアとしての実力と語学力は、転職の選択肢を一気に広げるための必須条件です。
キャリアコンサルティングを10年以上続けてきて、最近は社会への貢献が自身の価値だと感じるようになりました。日本の成長・発展のために、更に転職市場を活性化させ、サポートを強化し皆様の転職を成功させること。ぜひ皆様のご相談に乗らせていただきたいと思います。あなたのお越しをお待ちしています。
細梅 宣慶さん
マンパワーグループ株式会社 人材紹介事業部 コンサルタント 担当課長
2000年早稲田大学卒業後、富士通株式会社に入社。主に官公庁様向け、基幹システムの開発及び運用業務に長く従事する。その後、情報管理システムの構築、運用業務をプロジェクトリーダーとして担当し、全国共通システムへと成長させる。2005年、突然難病に倒れて生死をさまようこととなり、半年の入院生活でキャリアを見直す機会を得る。その後、人生を豊かにするための転職支援を行うべく、2006年マンパワーグループに転職。以降、10年以上に及ぶ人材紹介業務経験を通じて、IT・コンサルタント業界を中心にしながら、さまざまな業界のキャリアコンサルティングを行っている。