どうやらこれからの1年にわたっては、引き続きコロナ禍の中での闘いが求められることになりそうな2021年。この環境下において経営層を担う人材各位に、特に強く求められる5つの資質があると、私はここ数ヵ月の間でのエグゼクティブサーチの現場における各社経営者達とのディスカッションや、幹部採用・転職支援での日々のプロセスを通じて感じています。
①「顧客・市場理解」②「見識・持論・見解」
まず2つ。時々刻々と変化し続けている市場や顧客の動き、求めているものをしっかり見て、理性と感情で把握できること。それを通じて企業が今後、どのような事業、商品、サービスを展開すべきかについての見識、持論を持てることが、キャリアカーバーユーザーであるミドルやシニアの皆さんには、いま非常に強く期待され求められています。
コロナ後の面接において差がついているなと感じるのは、ビフォーコロナの一般論しか語れない人と、ウィズコロナに突入して具体的にご自身が関与している事業環境や商品・サービスに関する顧客や市場の最新動向について生の情報を元に持論の仮説も交えて語れる人との間です。
幹部採用、経営職採用における業界・職種を超えた共通テーマは「これまでの常識や価値観が通用しない時代への対応」です。これを体現してくださる候補者なのか否かを厳しく見られているということを理解した上で、①②についてアウトプットして頂ければと思います。
そのために、「現職での独自の情報源を最大限に活かす」「社外にも情報ソースとなる人脈を多く持っている」「情報感度高く、世の中のニュースなどをウォッチ、把握できている」「常に、自分の周囲で起きていることについて、なぜ・どうして・だからの持論を考える癖を身につけている」などが重要な日常の行動テーマとなるでしょう。
③「経営チーム/マネジメントチーム組成・推進」
そもそも、これまで以上に自分だけでは到底把握しきれない変化がおきているのが、このウィズコロナの世界です。また臨機応変にアジャイルに動くためにも、リーダーのあなただけが頑張ることには限界があり、3つ目の資質として、経営チーム/マネジメントチームとして事業に当たれることが必須です。
幹部採用の選考ポイントとしても、候補者の方が、「目指すべきものを明確に定めた上で、それを達成するために相応しい個性あるマネジメントチームを組成し率いるリーダーシップ」を持っているのかどうかを見極めようという動きが多く見られます。
「チーム編成について、どのような考え方や経験値、成功体験・失敗体験を持っているか」「リーダーシップについての考え方、自分のキャラクター把握をしているのか」「チームをまとめること、様々な意見や個性をどう束ねようとする人なのか」といったことについて、平素からしっかり棚卸ししておき、実地でトライ&エラーを繰り返しておきたいですね。
これに関連して当社では、これまで個々の経営幹部をサポートするためのエグゼクティブ・コーチングを提供してきましたが、これからはチーム単位でのサポートを行う「エグゼクティブチーム・コーチング」の重要性が加速度的に高まっていくと見ており、チームコーチング、グループコーチングへとシフトしていく予定です。
④「覚悟・執念」⑤「実行の徹底」
最後の2つは、実行に関する資質です。
経営人材には元々必須のことではありますが、このコロナ禍の中で、「なんとしても結果を出す、事業を成立させる・伸ばす」「そのためにあらゆる手を尽くし、やり切る」胆力・体力は、絶対に欠かせません。逆に、もしこれがないとするならば、他の3つの要素を満たしていたとしても、2021年のリーダーとしては失格です。
率直に言うと、こればかりはある日突然、身についたり発現したりするものではありません。これまでのリーダー、マネジメントとしての業務役割を通じて、どれくらい真正面からビジネスに向き合い続けてきたか。真摯にことに当たってきたか。難局において逃げずに戦ってきたか。それらの経験を通じて、自問自答しながら、自身の事業観、リーダー像、経営観などを編み出してきたかが問われます。
また、役割が上位に向かえば向かうほど、自分自身に厳しく、またときには自分だけでなく、相手にも厳しくなれなければ事業責任、経営責任を負うことなど叶いません。二流三流のマネジメントに「風見鶏管理職」タイプが挙げられますが、あちらこちらにいい顔をしたがり、嫌われたり批判されたりすることから逃げてしまう人がいます。このタイプは、少なくともこの<危機モードでのマネジメント>には適しませんから、幹部転職においては覚悟しておきましょう。嫌われ役になることも厭わず、実行の徹底を完遂できる人が、いま、各社から求められている経営人材・幹部人材です。
2021年ほどの経営・事業執行力を鍛えるチャンスの期間はないでしょう。しんどいと逃げるのか、任せろとチャレンジし結果を出すのか。ミドルやシニアの存在価値が大きく問われ、その後の経営人材・幹部人材としての5年後、10年後のキャリアが大きく分かれる1年となることは間違いありません。
ではまた、次回!
井上和幸
1989年早稲田大学卒業後、リクルート入社。2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。2004年よりリクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)。2010年に経営者JPを設立、代表取締役社長・CEOに就任。 『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ)『30代最後の転職を成功させる方法』(かんき出版)など著書多数。