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現在、投資ファンドによる投資先企業での人材ニーズが増加しています。プロ経営者はもちろんのこと、CxOや経営企画として新たなキャリアを目指す方にもその道が広がっています。投資先企業だからこそ得られる経験や魅力、また、投資ファンドが伴走することのメリットとはどのようなものがあるのでしょうか。
今回は、プライベート・エクイティ投資事業を展開するJ-STAR株式会社のパートナー湯本達也氏、その投資先企業(現在はエグジット済)NHSインシュアランスグループ株式会社で代表取締役社長となった樋口公裕氏、経営人材紹介を手掛ける株式会社プロフェッショナルバンクの月井絵美氏にお話を伺いました。
J-STAR株式会社 パートナー 湯本 達也さん(右)
JAFCOにてベンチャーキャピタル投資およびバイアウト投資に従事。13社への投資を実行し、IPOによるエグジット2社を含む10社のエグジット実績を持つ。2006年に創立メンバーとしてJ-STARに参画。案件開拓、投資実行、投資先支援、売却活動を担当。
NHSインシュアランスグループ株式会社 代表取締役社長 樋口 公裕さん(中央)
1993年に新卒で千代田生命保険相互会社(現ジブラルタ生命)に入社し、営業所長などを歴任。2000年にアリコジャパン(現メットライフ生命)に転職し、ダイレクトマーケティングや代理店チャネルの推進、販売ルールの整備など経験。2015年より現職。
株式会社プロフェッショナルバンク コンサルティングサーチ 2部 部長 月井 絵美さん(左)
総合人材サービス会社で、新規事業の責任者等を歴任。2005年、米国の人材紹介会社に在籍し、米国内、日米間のプレイスメントで多数実績を残す。その後、プロフェッショナルバンクに参画。幅広い業界におけるマネジメントクラスのヘッドハンティングを得意とする。
プライベート・エクイティ投資の対象拡大により、経営人材のニーズも急増中
J-STAR株式会社
パートナー 湯本 達也さん
投資家から集めた資金を基に企業に投資し、企業価値を高めてからエグジット(IPO、他社への売却等)することで投資収益の獲得を目指すプライベート・エクイティ投資。2000年代は事業再生や大企業の子会社売却などが中心でしたが、現在においてその裾野が大きく広がっています。たとえば、事業承継もその一つ。後継者がいないというケースだけでなく、次の成長を目指して売却を決意するオーナーも増えています。「0→1」の創業が得意な経営者がスタートアップから一定規模までは拡大させたものの、第二成長期に入って経営の拡大に限界を感じ、「10→100」の事業成長が得意な経営者に引き継ぎたいというケースです。インターネット関連企業や、メーカー、小売、サービス、BtoBビジネスまで業界は問わず、企業規模も数十名から数百名規模まで様々。こうしたプライベート・エクイティ投資の広がりによって、経営人材のニーズも増えています。
投資先企業に求められる経験・スキルは、事業環境や業種などで異なりますが、対象はプロ経営者に閉じていません。CxO経験のない方でも事業会社の然るべきポジションで経験を積んでこられた方や、投資銀行やプロフェッショナルファームでの経験をお持ちの方などが、実際に投資先企業でCxOとして活躍されています。30~40代でキャリアチェンジする方も増えていますが、経営者としてオールマイティである必要はありません。なぜなら財務や経営などの分野は我々投資ファンドが得意とする領域。いくらでもサポートが可能です。
それよりも、プロフェッショナルとしての知見や、人を動かすマネジメント力は、その道で能力を磨いてきた方こそが有するもの。こうしたスキルを活かして、CxOや経営企画としてキャリアチェンジをしたい、という方にはまさに投資先企業は一つの選択肢になるのではないでしょうか。
40代で経営者にキャリアチェンジ。同じゴールに向けて伴走する投資ファンドは心強い存在
NHSインシュアランスグループ株式会社
代表取締役社長 樋口公裕さん
新卒入社以来、国内や外資系の生命保険会社で経験を積んできた私が、経営者としてのキャリアを踏み出したのは44歳の時。前職では新規営業チャネルの立ち上げや組織マネジメントなどの経験はありましたが、まさか自分自身が経営者になるとは思ってもいませんでした。しかし縁あってお声がけいただき、J-STARの担当者から現企業の事業の魅力や将来性を聞くうちに、熱い想いに心動かされて経営者になることを決意。現企業は新卒採用の社員が中心の組織でしたので、将来を担う彼らを導くために、私がこれまで培ってきた経験を活かせるのであれば、自分自身の新たな可能性にかけてみようと考えたのです。
これまで経営者としての経験はなく、準備もしてきていませんので、もちろん大きな不安はありました。けれど、社長だからといって全部をやる必要はなく、足りない部分はJ-STARからサポートを受けたり、新たな人材を採用していけばいい。保険代理店事業への深い理解とマネジメント経験こそが私に期待される部分であることが明確でしたので、そこに専念できたのは、投資先企業で経営者となる大きなメリットだったと感じています。その後も経営の重要な意思決定の場面での相談や、具体的な施策を打つ際のサポートにはとても助けられました。投資先企業である以上、ある一定の短期的な売上利益は求められるものの、最終的なビジョンやゴールは私もJ-STARも同じですから、その実現に向けてブレることなく一緒に走り続けられたことが、何よりも心強く励みになったと感じています。会社として徐々に軌道に乗り、現在はエグジットしてJ-STARとは離れることになりましたが、本当に感謝しています。
キャリアチェンジを検討されている方にお伝えできることがあるとすれば、逃げ道としての転職はやめたほうがいいということ。今いるフィールドで最大限のパフォーマンスを発揮することが、次のキャリアでも大きな自信となるはずです。そして、自分が求められる場所があるなら、勇気を持って転職する道もあるということ。私自身も経営経験はありませんでしたが、J-STARを始めとした周りからの意見も聞いた上で判断し、良いものを受け入れていくことで経営者として成長できたのではないかと感じています。
候補者、投資先企業、投資ファンドが共に成長していけるよう、ご縁をサポート
株式会社プロフェッショナルバンク
コンサルティングサーチ 2部 部長 月井絵美さん
投資先企業によって経営者に求められるものは全く異なります。たとえば、複数企業の集合体で、複雑な人間関係の中で社内掌握していく求心力が求められるケースもあれば、苦しい局面で修羅場を乗り切る力、会社の転換期に仕組みや組織を変革していく力が求められるケースもあります。もちろんカルチャーフィットも非常に重要です。こうした書類ではわかりにくいマッチングが重要だからこそ、投資先企業、投資ファンド、候補者の三者の間での丁寧なすり合わせをとても大切にしています。
また、投資先企業は、第二創業期や会社としての転換期を迎えている企業が多く、それぞれの課題を抱えています。だからこそ新たなCxO人材や経営企画に期待されるミッションや介在意義も大きく、やりがいのあるポジションとも言えます。また、投資先企業で経営者になることは、投資ファンドの経営のプロからノウハウを学べたり、事業戦略を獲得できたりするなど、様々なメリットがあるのも事実です。実際にプロ経営者を目指す方、いずれは自分の会社を起業したい方が、一つ前のキャリアとして選ぶケースもあります。ぜひあなたの描くキャリアや希望を聞かせていただき、同時に投資ファンドの想いやあなたへの期待などを丁寧にお伝えしながら、ご縁をつないでいきたいと考えています。