長期化するコロナ禍の中、水面下では活発な動きを続けている幹部採用市場。キャリアカーバーユーザーの皆さんも、行動制限がありながら、応募先企業や人材エージェント担当者と日々活発にコミュニケーションされていらっしゃることと思います。転職成功のためには、今後のキャリアをどう考え、転職先を検討していくか。何を軸に転職先を選別していけば良いのか。マネジメントとしての自分をどう応募先企業に伝えれば良いのか。応募先企業自体をどう見極めていけば良いのか------。本質的に考えるべきこと、見定めるべきこと、アウトプットすべきことが多々あります。この連載でも、これまで様々な角度から、望ましい幹部転職のあり方についてご紹介してきました。その中で、皆さんのような幹部各位の転職活動において、誰でもやればできる加点法があります。今回はここに絞ってお話ししてみます。今日から使える具体策ですので、ぜひ実践ください。
目次
コミュニケーションスピードで分かる、あなた、転職検討先企業、人材エージェントそれぞれの力量。
必ず加点を稼げる3つの行動、その1は「即レス」です。
「なんだ、そんなこと?」、そう、そんなことです。たかが「即レス」、されど「即レス」。案外こんな部分で、実績を出し続けてこられたリーダーとそうでないリーダーとの間に大きな差があったりします。
そもそも、優れた経営者や経営幹部の皆さんは総じて等しくレスポンスが驚くほど早いことをご存知の方もいらっしゃると思います。これには、
- 足元にボールを置くと自分が関与している事業やプロジェクトの進捗がスタックしてしまう。これを避けたい。
- 常に判断、意思決定する場面に身を置いてきたため、即断即決できる。
- そもそも性格的にせっかち(笑)。
というようなことがあります。
捌きが良い、連絡であれ検討事案であれ自分の手元に滞留案件を置かないという行動は、当人を精神的にも身軽に、明るい気持ちにします。処理完了をし続けるという意味で、決着感というものは当人の納得性や自信を高める効果もあります。
できる経営者や経営幹部が即レスなのは、こうした<健康的な状況>を好む習性を自然と身につけてきたというところもあるかと思います。
さて、転職活動に話を戻せば、あなたが応募している企業には、このような性格を持つ経営者や経営幹部が待ち構えているということです。良い会社であれば、こうした習性はトップから全社にカルチャーとして浸透しています。そこで、あなたのレスポンススピードが(無意識的にでも)推し測られているのです。そしてこのことを、見る目のある、的確な紹介実績をあげてきた人材エージェントであれば、よく理解しているでしょう。
ということで、まず、応募先企業ともエージェントとも、即レスすることで土台としてのグッドコミュニケーションを築けます。いきおい、応募先との進捗キャッチボールも良くなり、選考の運びも良くなります。
特に良い話が進んでいるときには、即レスでのテンポの良さが更なる良縁を運んでくることは多いものです。この件をぜひとも成就させたいと思う案件については、エージェントや応募先企業との軽快なコミュニケーション・リズムを作ることをぜひ意識して頂ければと思います。
即レスの件では、もう一つ提案があります。万が一、相手(エージェント、応募先企業)のレスがあまりに遅いなどあるときは、相談先、転職先として本当に望ましいのかどうか、再考してみたほうがよいでしょう。少なくとも事業体・組織体としてうまくいく、成功する体質を持っているかということについて、疑問符がついている可能性も捨て切れませんから。
具体的かつ論理的、プラス人間性を持ってFBコメントを返せる力は、活躍できるリーダー人材力に直結する。
必ず加点を稼げる3つの行動、その2は「詳細なFB」です。
面接終了後、皆さんはどのようなFB(フィードバック)連絡をエージェントに入れているでしょうか。
本日の面接はどのような内容であったか。あなたはどう思ったのか。相手はどのようにあなたのことを受け取ったと、あなたは感じているか。本日の面接を受けて、あなたはこの会社・案件についてどう思っているのか——これらのことを具体的にFBしているでしょうか?
あなたの判断・ご意向、今後確認したいことなどについて、しっかり書いて(あるいは電話で)FBしましょう。
的確なFBコメントを書けること=あなたが幹部として期待できる人であることの証明となっています。この部分で具体的かつ論理的・戦略的に、また人間的にFBをしっかり返してくださる方については、担当エージェントも応募先企業に対しても、かなり加点を稼げています。
力あるエージェントは、必ずしも言葉で言いませんが、実はこうした、あなたから返ってくるFBコメントの内容、記述の仕方からもあなたについてアセスメントしているのです。
面接終了後のコメントとして「良かったです」しか返さない(返せない)人に、エージェントや応募先企業は、あなたが着任後に本当にレベルの高いコミュニケーションをリーダーとして取ってくれるのか、不安を覚えます。
言語能力、言語化力については、あまり表立って言われることはありませんが、少なくとも幹部クラスの方々については非常に重要な要素となっています。以前に職務経歴書の書き方についてもご紹介したことがありますが、同様に、面接後のFBに関する表現力・記述力は、それ自体があなたの採用可否を大きく左右する要素であることを、ぜひご認識頂ければと思います。
本音のすり合わせが、良縁を引き寄せる。
必ず加点を稼げる3つの行動、その3は「本音」です。
応募先の話について、実際のところ、どう思っているのか。皆さん、「どこまで伝えてよいものか」「エージェントには言うべきか」「現段階で、明確な気持ちを伝えるのは、まだ応募中の各社の結果も分からない中でリスクではないか」、そのようなことを一度は思い、悩んだご経験があるのではないでしょうか。私自身も折々、転職ご支援中の皆さんから選考プロセスの合間に質問、相談を受けます。
このことについては、私見が少し色濃いかもしれませんが、結論としては、常に具体的に、本音の所感・判断をエージェントに伝えたほうがよいと思います。
面接のステップごとに、「いまの気持ちとしては、こう思っている」「いま進めている案件としては、このような優先順位で考えている」「今回の面接を受けて、気持ちが上がった or 下がった」など、<いま、どう思っている>をしっかり共有していくほうが、あなたが希望する新天地へのご縁の確率は高まります。
理由は、
- 自分に無理がない
- 玉虫色の回答を続けることで、本来、出来うる限り実現したいあなたの理想の転職先がどこなのか自体が曖昧になってくる
- しっかり判断、優先順位づけを行うことで、自身の志向や仕事上の優先順位もより明確になる
- 本音ですり合わせることで、応募先があなたを採用したいと思っているときに、双方歩み寄れる条件の調整(役割、年収など)を行うことができる
といったようなことが実際にあるからです。
そもそも応募先企業全てに「御社が第一志望です」と回答するような愚は避けたいもの。こういう発言をする人は、信頼できるリーダーであるとは見なされないものです。本当に第一希望と思っている案件に対してのみ、そう答えましょう。
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「一事が万事」。これら3つの行動を取れるリーダー人材は、平素から仕事力がある人ですし、信頼できる方です。
転職活動は、あなたの日頃の仕事に対する姿勢や仕事力の映し鏡。そのような観点からも、ぜひ身を引き締めて、何よりもあなたらしくエージェントや応募先企業の方々と接して頂ければ、あなたに見合った良縁は必ずやってきます。
ではまた、次回!
井上和幸
1989年早稲田大学卒業後、リクルート入社。2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。2004年よりリクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)。2010年に経営者JPを設立、代表取締役社長・CEOに就任。 『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ)『30代最後の転職を成功させる方法』(かんき出版)など著書多数。