「転職したい」と考えているものの、転職に失敗したくないという思いから、転職活動を始めることに二の足を踏んでいる人もいるようです。転職市場は変化し続けているので、「勇気が出ないから」「不安だから」と転職を先延ばしにすることによって、転職のタイミングを逃してしまう可能性もあります。そこで、前向きに転職活動を始めるための判断軸をご紹介します。
【アドバイザー】
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
「転職理由」と「希望条件」を明確にしよう
転職するかどうかを判断する時に、まず考えてみるのが「転職理由」と「希望条件」です。
転職活動は、決して楽なものではありません。転職で実現したい明確な目標である転職理由がないと、軸が定まらずに転職活動の途中で右往左往してしまったり、気持ちが折れてしまったりします。
また、「年収●万円アップ」「ワークライフバランスの向上」「役職は部長以上」「東証一部上場企業」など、希望条件をこだわりすぎると求人が見つからなくなってしまいます。希望をパーフェクトに叶える求人は滅多に出ないと捉えて、希望条件の優先順位を設定しましょう。
もし、「転職したい」と考えているものの、明確で強い転職理由がないのであれば、現時点では転職をするベストなタイミングではないのかもしれません。転職を迷っている場合は、「転職理由」や「希望条件」をじっくりと考えてみて、まず現職で実現する方法がないかどうかを探ってみることから始めましょう。
「転職」と「転職活動」を切り分けて考えよう
「転職理由」と「希望条件」を明確にし、現在の会社で実現できるかどうかを考えたうえで、それでも「転職したい」という強い気持ちがあるのであれば、実際に動いてみるのがよいでしょう。
「転職」と「転職活動」は、同じことを意味しているようですが、全く違います。「転職活動」に取り組んだからといって、最終的に必ず「転職」するとは限りません。転職活動をした結果、「現在の会社に残る」という選択をする可能性もあり得るでしょう。
転職活動を始めてみると、さまざまな発見があります。例えば、職務経歴書をまとめる作業は、自身の経験・スキルを棚卸しする絶好の機会です。自身のキャリアや人生を見つめ直すことにもつながるでしょう。また、転職エージェントなどを活用して、自身の経験・スキルが転職市場でどのような価値があるのかを確認することもできます。転職活動を通じて他社を知ることで、改めて現職の良さや現職での適性に気づくこともあるでしょう。
第三者に相談し、今後のキャリアを考えよう
転職すべきかどうかに迷った時は、「第三者に相談してみる」というも有効な手立てのひとつです。第三者のアドバイスも参考に、転職するかどうかを検討しましょう。
所属企業を退職した同僚・先輩・上司に相談する
相談相手の候補のひとつが、かつて同じ会社で働いていた人たちです。同僚・先輩・上司によって、視野や知識が異なる可能性もありますが、所属企業のことを十分に把握しており、よき理解者として適切なアドバイスをもらえるでしょう。
また、転職経験者として、どのような点に苦労したのかなど、同じ境遇から転職した人のリアルな体験談は、今後のキャリアを考えるうえで有益になるでしょう。「転職を考えているなら、うちの会社の面接を受けてみたらどう?」と、思わぬ誘いを受ける可能性もあるかもしれません。
転職エージェントに相談する
転職支援のプロである転職エージェントに相談してみるという方法もあります。
一人では気づかなかった自身の経験・スキルの転職市場価値を知ることで、転職活動の道筋が見えてくるかもしれません。経験・スキル・希望条件にマッチする具体的な求人や、過去の転職事例を紹介してもらえるでしょう。
一方で、現時点の経験・スキルで転職するよりも、「もう少し経験を積んでから転職した方が可能性が広がる」「曖昧な転職理由や希望条件のままでは転職しない方が良い」というアドバイスを受ける可能性もあります。
転職エージェントの多くがオンライン面談を実施しています。できれば複数のエージェントに相談し、多様な視点でアドバイスを受けることで、転職活動をするかどうかの判断材料を得ることができるでしょう。