【2022年】化学業界の転職市場は今後どうなる?

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化学業界の2022年の転職市場の求⼈・求職者の動きを、業界に精通した株式会社リクルートの人材領域で活躍するキャリアアドバイザーがレポートします。「2022年の転職市場や業界トレンドを知りたい」「納得感のある転職活動のために、採用動向を知っておきたい」という方はぜひご一読ください。

化学業界の2022年転職市場の展望を一言でいうと

環境関連の求人が増加。事業変革に着手する企業では経営企画のニーズも。
求職者が企業を選ぶ視点は「成長分野への取り組み」「働き方」。

1.【化学業界】業界・企業側の動き

半導体・電池・ライフサイエンス領域を強化する企業が多く、採用は活発化しています。環境関連では、排出したCO2を回収・再資源化する触媒技術やCO2を吸収する素材の開発など、カーボンニュートラルの実現につながる研究開発職のニーズが高まっています。LCA(ライフサイクルアセスメント=製品への環境影響評価)や、その開示を行う広報などの求人も出てきています。また、リサイクル、バイオマスの事業に注力する動きもあります。

DX関連人材の採用も継続しています。大手ではやや落ち着いてきた感がありますが、中堅企業へ動きが広がっているようです。

プラントエンジニアも依然として不足しています。定期修繕から新規工場立ち上げまでニーズは高いのですが、専門性が高いため経験者が少ないこと、全国各地の郊外に立地することから、多くの企業で採用に苦戦しています。

女性管理職を求める声も強くなってきています。化学領域にはもともと女性が少ないのですが、コーポレートガバナンス・コードの改訂により、女性の管理職比率を高めなければなりません。女性管理職の採用を急ぐと同時に、人事制度設計の見直し・改善を担う人事の求人も増えています。

新たな動きとして見られるのが、経営企画の求人の増加です。各社経営陣はマーケットの現況を踏まえ、「変えていかなければならない」と危機感を抱いています。異分野から人材を迎えることで事業変革を推進したいと考え、動き始めているのです。同様の理由で、マーケティング、事業企画、人事企画といった求人も少しずつ出てきており、今後も増えると見込まれます。

これまではプロダクトアウト型のマーケティングが中心だった化学業界ですが、今後はマーケットイン型にも取り組む必要性に迫られています。実際、これまでは製品開発部門がマーケティングを兼務していましたが、マーケティング専門部署を新設した企業もあります。これまでにない商材や用途を開発していくにあたり、マーケティング・企画系の人材強化が課題といえそうです。そして、多様な人材の受け入れの障壁となっている人事制度を改革できるかどうかも、数年後の勝敗を分けることになるでしょう。

2.【化学業界】求職者側の動き

求職者が語る転職理由として多く聞こえてくるのは「自社商材の先行きへの不安」です。事業構造の転換が進む中、自身の専門分野が注力分野から外れれば、開発費削減、事業売却などの可能性があるため、危機感を抱いているようです。自身の専門性を活かしつつ、成長分野で経験を積む道を模索している方が多くいます。「DX」「環境」といったキーワードの求人は人気が高く、どれだけ注力して取り組んでいるかが注目されます。

また、「働き方」を重視して転職先を選ぶ方も多くなっています。近年は残業が規制され、長時間労働は改善されていますが、「在宅勤務」「転勤が少ない」などの条件を求める方も増えています。働き方の整備状況は、「社会の変化をとらえた対応ができる会社かどうか」の判断基準にもなります。求職者に選ばれるためには、既存の制度にとらわれず、柔軟な働き方を実現することも重要です。

<化学業界の転職動向>

化学業界 転職マーケット割合

化学業界出身者 転職者数推移出所:リクルート『リクルートエージェント』転職決定者数の分析

足立 絵美

大学では化学を専攻し、リチウムイオン蓄電池の研究。リクルートキャリア(現リクルート)入社後は、大手製造業(化学・自動車・技術者派遣)を中心に法人営業を担当した後、化学のハイキャリアのエンジニアを中心に転職活動を支援。