【アドバイザー】
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
営業職の分類とその特徴
営業職には多様な種類があります。「自分は営業職に向いていない。別の職種に転職したい」と考えて転職活動を開始した人でも、商材やスタイルがまったく異なる営業職に面白さを見出し、転職して活躍するケースは多々あります。特に営業未経験の場合は、自身に合う営業職がどの業界にあるのかを探ってみるところから始めましょう。
誰に対する営業か(顧客層)
●法人向け……対象業界/企業規模/商談相手の役職(経営者・事業部担当者)など
●個人向け……年代/性別/一般層・富裕層など
どのような商材を販売するか
●有形商材……法人向け:消費財・設備・工業製品・部品・材料など
個人向け:住宅・自動車・宝飾品など
●無形商材……法人向け:システム・Webサービス・広告・人材など
個人向け:保険などの金融商品、冠婚葬祭、旅行など
なお、「メーカー」に勤務した場合は自社商品のみを、「商社」に勤務した場合は幅広い企業の商品を扱います。また、商材は以下のようにも分類することができます。
- 高額商品か低額商品か
- (有形商材の場合)消耗品か耐久品か
- パッケージ商品かカスタム商品か
- 売り切り型か長期フォロー型か
どのようなスタイルで販売するか
代表的な営業スタイルをご紹介します。企業によっては、「新規開拓営業+ルートセールス」など、「インサイドセールスを含めた新規開拓営業」など、複数のスタイルを並行しているケースもあります。
新規開拓営業
未取引の顧客にアプローチし、自社製品・サービスのメリットを案内して契約を目指す。
ルートセールス
既存顧客を中心に、信頼関係を築くことで取引を継続させる。納品数・納品スケジュールの管理を行うほか、新商品の案内をする。
カウンターセールス
店舗などで来店客に対応する。仲介物件を扱う不動産会社、保険ショップ、旅行会社などのカウンター、もしくは住宅のモデルルームや各種製品のショールームで、訪れた顧客に対して商品を案内する。
代理店営業
自社の商品・サービスの販売ルートを広げるために、販売代理を担う企業を開拓。契約後には営業支援を行う。
インサイドセールス
電話・メール・DMなどで見込み客にアプローチして商品・サービスを案内し、顧客が関心を持てば営業担当者にバトンタッチする。SaaS(Software as a Service:インターネットを介して提供するソフトウェア)企業の台頭に伴い、求人数が増加している。
カスタマーサクセス
契約した顧客が商品・サービスを活用することでよりよい効果を得られるよう支援を行う。営業職の新しい種類として登場し、SaaS企業でのニーズが高まっている。営業職からの転職も増加。
どのような給与体系か
固定給制
毎月の給与額が決まっている。業績に応じてインセンティブ(報奨金)や賞与が支給されるケースが多い。
歩合給制(コミッション)
売上に応じて報酬額が決まる。
※「固定給」+「歩合給」を組み合わせているケースもあり、その割合は企業により異なる。
営業職の求人の傾向
営業職を大きく4分野に分けて求人数の傾向をお伝えします。
法人営業【有形商材】
新卒採用を中心にしている企業が多く、中途採用の求人は比較的少ない傾向があります。中途採用を行う場合は同業界・同商材(類似商材)を扱ってきた経験者を求めるケースが多く見られます。
法人営業【無形商材】
IT・Webサービス、人材、デジタル広告など、近年拡大している領域は積極採用を行っている企業が多い傾向があります。これらの領域はマーケットの変化が激しいため、未経験者を受け入れて育成する企業も多数あります。特に最近では、SaaS企業の採用が活発です。
個人営業【有形商材】
不動産関連の営業職は常に一定数の求人があります。近年は太陽光発電システムなどの営業職求人も増加。ショールームでの商品案内など、「販売」に近い仕事も求人が多数あります。
個人営業【無形商材】
個人向け無形商材の中でも、保険・金融商品の営業求人は多く、特にコミッション制の場合は、未経験者も対象に常に門戸を開いています。金融系の営業職は、自身の実績が報酬に反映されやすいという特徴があります。
未経験から営業に転職するポイント
未経験から営業職を目指す場合は、次のポイントを意識して転職活動に臨んでください。
これまでの業界・職種経験を活かす
これまでの経験を活かせる営業職を選べば、受け入れられる可能性が高まります。
業界・職種経験を活かした転職事例
- SEの経験を活かし、IT企業のプリセールス(技術営業)へ
- Webディレクターの経験を活かし、Webサービスの企画営業へ
- 通信業界経験を活かし、人材業界でその業界を担当する採用コンサルティング営業へ
- 販売・サービス業での接客経験を活かし、SaaS企業のインサイドセールスやカスタマーサクセスへ
未経験者を歓迎している業界・企業を選ぶ
不動産・保険・人材など、未経験者を歓迎している企業が多い業界もあるので、注目してみてください。特に、歩合給制(コミッション)の求人では、未経験者でも意欲があれば採用されます。
求人を探す際には「未経験OK」「未経験者歓迎」「未経験者多数在籍」「研修制度あり」といった条件・キーワードで検索してみるといいでしょう。
経験者として営業に転職するポイント
営業経験を活かして転職する場合は、次のポイントを意識して転職活動に臨んでください。
これまでの営業経験との共通点に注目する
一見まったく異なる業界・商材であっても、これまでの営業経験と共通している部分があれば、それをアピールしましょう。
「営業職の分類とその特徴」で挙げた項目(顧客層/商材特性/営業スタイル)について、まず自身が経験してきた営業の特性を洗い出します。そして、応募する求人に記載されている仕事内容を確認し、例えば「○○業界対象」「顧客は中小企業」「商材は高額商品」など、これまでの営業経験との共通点を探します。そして、これまでの経験・スキルを活かせることを職務経歴書や面接で伝えてください。
前職の営業経験で培ったスキルをアピールする
これまでの経験との共通点が見つからなかったとしても、アピール材料はあります。これまでの営業経験で培ったスキルを言語化してみましょう。例えば、
- 無形商材の営業を経験 → 顧客の課題を引き出すヒアリング力、企画提案力など
- 有形商材の営業を経験 → 製品の特徴をわかりやすく説明するスキル、納期管理力、生産部門との折衝力など
- 個人向け営業を経験 → 顧客との距離を縮め、信頼関係を構築する力など
これらのスキルが応募企業でも活かせると認められれば、業界・商材未経験であっても受け入れられる可能性が高まります。応募する求人の仕事内容や求める人物像などに、言語化したスキルに合致する要素がないか確認してみましょう。
業績数字だけでなく、「なぜその業績を挙げられたか」を語れるようにする
営業職の場合、職務経歴書を作成する際は、「売上高」「担当顧客数」「新規開拓数」「目標達成率」など、成果の数字まで記載します。ただし、数字の羅列にならないよう、「なぜその成果を挙げられたか」というストーリーを面接で語れるように整理しておきましょう。
どのような戦略を立て、どのような工夫をしたか。どのような壁にぶつかり、いかに乗り越えたか。その成功体験から何を学んだか。成果に至るプロセスを語ることができると説得力が増すので、採用担当者が「自社でも再現できそうだ」と判断すれば、採用される可能性が高まります。
悩んでいる場合は転職エージェントに相談を
キャリアや転職に関しては、さまざまな角度から考えることが大切です。誰か一人に相談するのではなく、立場が異なる複数の人の視点を取り入れるといいでしょう。
相談先の一つとして、転職エージェントも活用してみてください。必ずしも1社に絞らなくても構いません。複数の転職エージェントに相談し、さまざまなキャリアアドバイザーと話をしてみて、自分にフィットする転職エージェントを選ぶ手もあります。
ただし、キャリアアドバイザーに相談はしても「最終的に決断するのは自分」という意識が大切です。自身で決断してこそ、納得感が高い転職につながるからです。