転職で何がしたいのかわからない場合は?転職の方向性を明らかにする方法

「転職はしたいけれど、自分が何をしたいのかがわからない」――そう悩む方は少なくないようです。したいことがわからない状態で転職活動を進めた結果、不採用が続いたり、転職できても入社後に後悔したりと、失敗を招くケースはあります。
失敗しがちなパターンと、失敗を防いで転職を成功に導くためのポイントを、組織人事コンサルティングSegurosの粟野友樹氏に解説いただきました。

「転職」が目的化するケースとは?

転職を目指す方々の中には、明確な目的を持たないまま活動している方も見受けられます。「何がしたい」という希望が特になく、「今抱えている不満を解消できればいい」「とにかく現状から脱したい」などの気持ちが先立っているのです。転職が目的化してしまい、「転職先で何がしたいか」が曖昧な状態で転職すると、失敗につながる可能性があるので注意が必要です。

「何がしたいのかわからない」まま転職することのデメリット

転職先企業で何がしたいのか――その目的が明確になっていないと、どのような失敗につながるのでしょうか。よく見られるのは次のパターンです。

別の不満が発生し、転職を繰り返す

「現職の不満解消」だけが目的になってしまうと、視野が狭くなり、さまざまな角度から判断することができません。例えば「残業が多すぎる。ワークライフバランスを充実できる会社に移りたい」と考え、残業がない会社への転職が叶ったとしましょう。ところが、入社後に「仕事内容がつまらない」「経営陣の方針に共感できない」など、別の不満が発生することもあります。不満解消が目的の転職は、転職を繰り返してしまう可能性があるというデメリットがあります。

判断軸がないため、本意でない転職をする

何がしたいのか明確ではない状況で求人を見ていると、「会社の知名度・ブランド力」「年収」などについつい目を奪われ、企業を選んでしまう可能性があります。知名度や年収などの条件のほかに、「面白そう」「将来性がありそう」など、漠然とした興味で選んでしまうこともあります。しかし、曖昧な基準で転職先を選んだ場合、実際に仕事をしてみてようやく違和感が発生することも…。「条件に魅力を覚えて転職したが、自分が本当にしたい仕事ではない」と気付いてしまうかもしれません。

面接での回答に一貫性がなく、選考を通過できない

何がしたいのかわからない状態のまま、何となく興味を持った求人に応募したとしても、選考を通過することは難しいかもしれません。面接では「転職理由」と「志望動機」の両方を尋ねられますが、やりたいことが明確になっていないと、「目的意識がない」と見破られてしまう可能性があるからです。

何がしたいかわからなくなったら、まず転職理由を考えよう

いきなり「何がしたいか」を明確化しようとしても、どのような方向性で考えればいいのか迷ってしまうかもしれません。その場合は、「転職する理由」から考えましょう。

転職理由=退職のきっかけ+転職で実現したいこと

よく混同されるのですが、「退職理由」と「転職理由」は別のものです。「退職理由」だけを考えると、「不満」が浮かび上がるケースが多いのですが、「転職理由」は、「退職理由」+「転職先への希望・期待」のセットで考えてください。退職のきっかけを整理しつつ、次の会社で何を実現したいのかを考えることで、転職理由が明確になります。

退職理由をポジティブに変換してみる

「退職理由」をストレートに表現するとネガティブになってしまう可能性があるので、ポジティブな表現に変換してみましょう。一例を挙げると、

  • 「仕事がマンネリ化してしまい、つまらない」
    →「新しいチャレンジがしたい」「自己成長を感じながら働きたい」
  • 「仕事にやりがいを感じられない」
    →「人や社会の役に立っているという実感を得たい」
  • 「人間関係が悪い」
    →「信頼し合える仲間と協力して働きたい」
  • 「経営方針や戦略に納得できない」
    →「経営理念やビジョンに共感して働きたい」
  • 「労働時間が長すぎてプライベートの時間がとれない」
    →「ワークライフバランスを充実させたい」

このように言い換えをしてみることで、「不満」→「希望・目的」に変わります。

転職で実現したいことを整理してみる

上記で洗い出した「転職理由」をもとに、転職によって実現したいことを考えてみましょう。このとき、一つの観点だけでなく、さまざまな観点を検討してください。下記の項目を参考に、それぞれについて「どのような状態でありたいか」をイメージしてみます。その上で優先したい項目順に並べてみると、自身にとっての「目的」も明確化してくるでしょう。

  • 企業理念
  • ビジョン
  • 事業戦略
  • 事業・商品の特徴
  • 仕事内容
  • 社風
  • 経営者
  • 社員
  • 評価・教育制度
  • 給与
  • 設備
  • 勤務場所

転職理由が思いつかない場合は、自己分析をしてみよう

転職理由が思いつかない場合は、自己分析から始めてみてはいかがでしょう。これまでの経験を振り返り、自身の得意分野や強みとするスキル、モチベーションが上がる場面、心がけてきたことなどを整理してみてください。例えば、次のような項目です。

  • 仕事において、どのような場面で喜びややりがいを感じてきたか
  • 仕事において、どのような場面で苦痛やストレスを感じてきたか
  • 仕事に取り組むにあたり、どのようなことを大切にしてきたか
  • 周囲の人とどのようなスタイルでコミュニケーションをとってきたか
  • 周囲の人から、どのようなことで褒められたり高く評価されたりしたか
  • 「自分もこうなりたい」と思うビジネスパーソン像とは

これらを見つめ直したら、今後取り組んでいきたいこと、目指す将来像を描いてみましょう。

  • 今後、どのようなスキルを活かしていきたいか
  • 今後、どのようなスキルを伸ばしていきたいか
  • どのようなやりがいを感じながら働きたいか
  • どのようなことを大切に働きたいか
  • 将来どのような自分になりたいか

転職の方向性に迷っている場合は、転職エージェントに相談を

「何がしたいのかわからない」「方向性を定められない」と悩んだら、転職エージェントを活用してみるのも一つの方法です。これまでの経験を一緒に振り返って整理し、強み・志向・価値観などを明確にするアドバイスを受けることができます。自分一人で考えていたらわからないことも、客観的視点を持つキャリアアドバイザーと対話する中で整理されてくるものです。転職エージェントに相談することで、新たな気づきを得ることができるでしょう。

【アドバイザー】

組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

リクルートダイレクトスカウトは、リクルートが運営する会員制転職スカウトサービスです。リクルートの求職活動支援サービス共通の『レジュメ』を作成すると、企業や転職エージェントからあなたに合うスカウトを受け取ることができます。レジュメは経験やスキル、希望条件に関する質問に答えるだけで簡単に作成可能です。一度登録してみてはいかがでしょうか。