育休明けの転職は可能?気をつけたいことと適切な転職のタイミング

「現職で育児休業を取得中だが、育休明けを機に転職したい」「育休中にじっくりと仕事について考えた結果、現職に復帰するか迷いが生じている」という方もいるようです。こうした場合に検討が必要なポイント、タイミングの計り方、転職成功のヒントなどについて解説します。

育休明けの転職は可能

育児休業とは本来、現職への復帰を前提として取得するものです。しかし、「多忙な職場なので、以前のペースに戻れる気がしない」「時短勤務で働いている社員が周りにいないため、時短勤務で働きづらい」「望まない部署・職種への異動を命じられた」「育児をしながらの勤務を、上司や同僚に歓迎されていないと感じる」などの事情により、「現職で育児と仕事を両立させていくことが難しい」と判断することもあります。あるいは、「生まれた子どもに疾患があり、ケアのために業務負担を減らしたい」といった理由もあります。

このような場合、より働きやすい環境を求めて転職しても問題はありません。ただし、やむを得ない事情がある場合を除き、復帰後しばらくしてから転職活動を始めるほうが得策かもしれません。その理由は次のとおりです。

  • 育児は仕事と両立する生活に慣れるまでがひと苦労。新しい職場では負担が大きいため、まずはすでになじんだ職場で「どれくらいできるか」の感触を確かめた上で転職先を探したほうが、よりマッチした選択ができる
  • 現職の職場が、復職を前提に、育児をしながら働きやすい体制や環境を整えてくれている可能性がある。交渉次第では、リモートワークなどを許可され、想像より働きやすくなる可能性がある

ただし、復職後に転職活動を始めようとした場合、日々の生活に追われて転職のタイミングを失ってしまう可能性もあります。自身の状況を踏まえ、慎重に判断しましょう。

育休明けの転職で気をつけたいこと

育休明けからすぐに新しい会社で働くことを目的に転職活動をする場合、次のポイントに注意してください。

時短勤務制度や有給休暇を利用できない可能性がある

育児と仕事を両立するために、未就学児がいる方の多くは勤務時間を短縮できる「時短勤務制度」を利用しています。しかし、入社後1年未満の場合は、時短勤務制度の適用対象から除外している企業が多数を占めています。つまり、転職した場合、初年度は時短勤務ができない可能性があるのです。また、年次有給休暇や、育児・介護休業法に基づく「子の看護休暇」(※)は、勤続6カ月以上にならなければ付与されない企業が大半です。

※子の看護休暇/小学校就学前の子がいる従業員は、子どもの病気・けがの看護、予防接種や健康診断の付き添いのために、年5日(当該子が2人以上の場合は10日)の休暇を取得できる。

もっとも、子育て世帯の支援に積極的な企業では、入社初年度から時短勤務OKとするケースも増えています。子どもが幼い時期は、急に熱を出したりすることも多いため、休暇の取りやすさは重要なポイントです。転職先候補企業の規定を確認しましょう。

保育園の内定に影響が出る可能性がある

認可保育園への入園が決まってから転職をした場合、自治体によっては、入園内定が取り消されてしまうこともあります。例えば、入園を申し込んだときの在籍企業と転職先企業で、就労日数や勤務時間が大きく変わるケースが挙げられます。日数・時間が短くなれば、入所の優先順位を下げられることがあります。

また、転職先の就労予定証明書を出した場合は「就労内定」で選考することになり、現職に在籍し続ける「勤務中」より優先順位が下がる自治体もあります。転職活動をする前に、居住地域の保育園の入所基準を確認しましょう。

復帰前に転職するため、実際に両立できるか判断ができない

育児と仕事を両立させる生活は、「やってみなければわからない」部分も多いでしょう。応募先の業務内容や勤務体系を見て、できそうかどうかの判断をすることが難しいかもしれません。応募企業の面接では、「育児と仕事を両立させられそうか」が問われます。周囲のサポート体制や育児支援サービスの活用などを伝えるとしても、実際に働いたことがなければ確信が持てず、回答に困ってしまう可能性もあります。

慣れない職場で両立しなければならない

育休明けかどうかに関わらず、転職は入社後に新しい業務を覚えたり一から人間関係を築いたりするので大変です。そこに「育児」まで加わると、さらに負担が増し、大きなストレスを抱えてしまうおそれもあります。特に、企業規模や業界・職種が大きく変わる転職の場合は、組織や仕事に馴染むのに時間がかかる可能性があるでしょう。

育休明けに転職する場合の、転職活動を始めるタイミング

一般的な転職活動のスケジュールとして、転職準備に約2週間、応募~面接に約2カ月を要します。
現職に復帰することなく転職するのであれば、有給休暇の残日数ほか、退職の何日前に退職意思を告げなくてはならないかを就業規則で確認しておいてください。目安として、復帰予定日の3カ月前くらいから転職活動を開始するといいでしょう。

育休明けに転職する場合のポイント

育休明けの転職を目指す場合、次のポイントを意識しておくことで成功率が高まります。

保育園の入園規則を自治体に確認する

先ほどの「気をつけたいこと」でも触れたとおり、保育園の入園規則は自治体によって異なります。
「転職を決めた後で入園内定を取り消された」といった事態を防ぐためにも、規則をしっかりと確認しておきましょう。

転職活動中の子どもの預け先を確保する

育休中は、例外を除いて子どもを保育園に預けることは基本的にはできません。応募企業の面接へ赴く際に、子どもを預ける先を確保しておきましょう。家族や知人などに頼れない場合は、行政の一時預かりサービスや民間のベビーシッターサービスなどを調べておきましょう。

最近は、最終面接以外はオンライン面接、場合によってはすべての面接をオンラインで実施している企業もあるため、対面の面接に足を運ぶことが難しい場合は、応募時に相談するという手もあります。

両立のための背景や転職理由は明確にしておく

企業側は、育休中に転職活動をする求職者に対して、「なぜ復帰ではなく転職しなければならないのか」と、疑問を抱く可能性が高いでしょう。転職によってどのような問題を解決したいのか、転職後はどのように働きたいのかを、整理・言語化しておくことが大切です。

本音の転職理由が「育児と仕事を両立したい」だったとしても、面接では「育児と仕事を両立したい」という希望だけで終えないようにしましょう。その会社で自身の経験・スキルを活かし、どのように貢献したいのか、今後どのようなキャリア構築を目指すのかも語れるように準備しておいてください。

育休明けの転職を円満退職に導くために

現職の企業からすると、復帰を前提としていたところが、退職を伝えられることになります。円満退職に導くことができるよう、以下の点を心がけましょう。

内定が出たらできるだけ早く伝える

現職の職場では、復帰に向けての準備をしています。転職を決意して内定を獲得したら、できるだけ早いタイミングで伝えましょう。会社に退職の意思を伝える時期は、各社の就業規則に従います。一般的には、退職の1カ月~1カ月半前が目安となります。育休中の場合は、企業は復帰を前提に組織編成や人員配置を進めているため、復帰後の配属が決定する前に告知することが望ましいでしょう。

退職理由は引き留められにくい内容に

退職を決意した理由が「不満」であったとしても、それをストレートに伝えることは避けましょう。「育休明けすぐに退職」は、復帰に向けて準備していた企業にとって残念なものです。さらに不満や批判的な退職理由を告げてしまうと、心証を損ね、退職交渉がスムーズに運ばなくなるかもしれません。

「家庭の事情」といったやむを得ない理由、あるいは「育休中にじっくりキャリアを見つめ直した結果、○○にチャレンジしたい」などのポジティブな理由を伝えると、納得を得やすくなるでしょう。

育休明け転職を実現するために、転職エージェントに相談を

国が推進する次世代育成支援対策を背景に、子育て世帯への支援を積極的に行う企業は増えています。ただし、一見、育児支援制度が充実しているように見えても、実際に運用されているかどうか(活用している人がいるかどうか)は、判断がつきにくいこともあります。

そこで、転職エージェントの活用も検討してみるのも一案です。育児と仕事を両立する従業員の支援に関する情報を、転職エージェントを通じて確認することができます。また、子どもを持つ従業員の中途入社事例、入社後の活躍事例などの情報を入手できることもあります。場合によっては、働き方について、企業側と交渉してくれることもあるかもしれません。まずは、転職エージェントに、自身の状況と希望を相談してみてはいかがでしょうか。

【アドバイザー】

組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

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