転職後もご縁がつながる、デキる人の「転職あいさつ文」書き方と注意点(例文あり)

転職する際には、上司や同僚、部下、クライアントなど、お世話になった人たちに心を込めたメッセージを送りたいもの。デキる人ほど配慮に長けていて、思いの伝わるあいさつ文を送り、転職後も良好な関係性を築いているそうです。そこで、転職時に送りたいあいさつ文のポイントや注意点、盛り込んだほうがいい情報などについて、元リクナビNEXT編集長であり現在はミドル世代の転職支援サービスを手掛ける黒田真行氏に解説してもらいました。

デキる人ほど、心のこもった転職あいさつ文を送っている

転職先が決まり退職することになったら、在職中にお世話になった社内外の人々にあいさつ文を送りたいもの。立つ鳥跡を濁さずの姿勢で、どんな立場の人にも心を込めて、感謝の気持ちを伝えましょう。

ハイクラス人材ほど、この転職あいさつ文を上手に活用して、今の会社でできたご縁を次につなげています。ポイントは、1対1のメッセージを送ること。BCCなどで一斉に送るのではなく、これからも縁をつなげたいと思っている一人ひとりに向けて、その人との思い出を振り返りながら感謝の気持ちを込めてあいさつ文を作っています。この手間と心配りが、人脈という財産につながっていきます。

心が伝わる転職あいさつ文の基本構成

転職あいさつ文は、基本的には以下の構成を目安にまとめるといいでしょう。画一的ではなく送り手の気持ちが伝わり、「これからもお付き合いを続けたい」という前向きな思いも伝わります。

1.お世話になったことに対して感謝の気持ちを伝える
まずは「長い間ありがとうございました」「〇〇プロジェクトではお世話になりました」など、これまでの関係性に感謝する言葉から始めましょう。

2.相手とのエピソードを語る
心に残っている相手とのエピソードに触れ、その時の思いや気持ちを振り返りましょう。自分と相手との共通体験なので、相手の心を動かすポイントとなります。

3.転職先など、退職後の新たなステージについて触れる
今後の進路について簡単に触れておきましょう。転職先の会社名は入れても入れなくてもOK。どんな業界でどんな役割を担う予定なのか、記しておくといいでしょう。

4.相手の今後の健闘や幸せを祈る言葉で締める
「今後の〇〇さんのご活躍をお祈りしています」などのメッセージで締めるとうまくまとまります。「またご一緒できる日を楽しみにしています」などの言葉を軽く添えるのも方法です。

転職あいさつ文を送る時のポイント・注意点

転職あいさつ文の送付は、場合によってはセキュリティの問題があったり就業規則に抵触したりするリスクがあります。特に以下の点には注意が必要です。

会社ではなく「個人メール」で送る

就業規則上の観点から、ご縁をつなぐためのあいさつ文は会社アカウントではなく個人メールで送りましょう。会社のメールから送るものは、特にクライアント向けの場合は「退職のあいさつ」と「後任の紹介」などといったオフィシャルな報告のみに留めるべきです。

退職時は、仕事を通して得た業務に関する情報は全て返却する必要があり、社外に持ち出すことはできません。したがって、「仕事でお付き合いのあった人脈」も基本的には持ち出しNG。例えば、会社アカウントからお世話になったクライアントに「次は〇〇社に行くのでよろしくお願いします」などと送った場合、顧客の横取り行為と見なされ、下手をすれば訴えられる可能性もあります。

ただ、会社を離れた「個人対個人」の関係であれば別。自分の個人メールから、相手の個人メールに送るのであれば、次の会社のことにいくら触れても問題ありません。個人のメールアドレスがわからなくても、FacebookやLINEなど、SNSでつながっているならば、それらを活用してあいさつ文を送るのもいいでしょう。
相手の会社メールしか知らないという場合、いきなり個人メールアドレスを聞き出すのは難易度が高いかもしれませんが、SNSならばつながりやすいと思います。

自分の売り込みはほどほどに

個人メールやSNSであれば、「また仕事でご一緒したい」「これからも情報交換させてほしい」など次につなげるメッセージを送るのもアリですが、必要以上に自分を売り込むのは自分本位であり、いい印象を与えません。

そもそもデキる人は、「退職して、〇〇業界に転職します」というシンプルなあいさつ文であったとしても、「次はどんなことをされるのですか?」「これからもお付き合いいただけますか?」など相手のほうから質問を投げかけてくるはず。現職のうちに「この人と縁を切りたくない。つながっておきたい」と思ってもらえるような関係性を築くのが理想です。

上司、部下、クライアント…相手別・転職あいさつの例文紹介

感謝の気持ちを伝えつつ、次にご縁をつなげるようなあいさつ文の例文をご紹介します。相手との関係性に合わせて調整しながら、思いを伝えるメッセージを作成してみてください。

社内の上司や先輩に向けたあいさつ文

一緒に体験したことの中から、相手の働きで成長できたエピソードなどを盛り込むといいでしょう。送る相手も同じ社内なので、退職報告などオフィシャルなあいさつであれば会社メールでもいいですが、今後のことに触れる場合は個人メールかSNSを活用しましょう。

<例文>
件名:退職のご報告【山田太郎】

田中部長

お疲れ様です。営業部の山田です。
突然のご報告で恐縮ですが、〇月〇日をもって、〇〇社(今の勤務先)を退社することになりました。長い間、本当にお世話になりました。

10年前に転職してきたときのことが、まるで昨日のように思い出されます。新しい環境でなかなか成果が挙げられなかった私に、自分のノウハウやナレッジを惜しみなく共有し、励まし続けてくれたことが、今の私の礎となっています。私が営業マネージャーとしてここまでやって来られたのは、すべて田中部長のおかげです。

〇月からは、これまでの経験を活かし△△社の事業責任者という役割に挑戦する予定です。新しい環境でも田中部長の教えを胸に、頑張っていく所存です。

退職後も、ぜひ定期的に情報交換させていただきたいと思っています。近々、食事にでも行きましょう。
今後ともお付き合いのほど、どうぞよろしくお願いいたします。

(署名)

後輩や部下に向けたあいさつ文

部下や後輩は、これからステップアップしていく存在。将来的には仕事で関わったり、場合によっては自社に引っ張ったり逆に引っ張られたり…ということも考えられます。今後の可能性も考慮したうえで、メッセージ内容を考えましょう。なお、気心の知れた後輩や部下であれば、堅苦しすぎないほうがいいかもしれません。

<例文>
件名:退職することになりました【山田太郎】

佐藤さん

お疲れ様です。営業部の山田です。異動後なかなか関わる機会がありませんでしたが、お元気ですか?

突然の報告になりますが、〇月〇日をもって、〇〇社(今の勤務先)を退社することになりました。佐藤さんには立ち上げたばかりのチームを支えてもらい、心から感謝しています。

うちの会社にとって全くの新規事業で、誰も知見を持っていない中、一から市場を開拓できたのは佐藤さんをはじめ当時のメンバーのおかげです。営業戦略について夜な夜な激論した日々を、今でも思い出します。ムードメーカーとしてチームを盛り上げ続けてくれて本当にありがとう。

この事業が成長し、収益柱として軌道に乗ったことで、私もキャリアを見直すことにしました。〇月からは、△△社の営業部長として働くことになっています。△△社はまだ新しい会社なので、また一から体制を作らなければなりませんが、また新しいチャレンジができることにワクワクしています。

佐藤さんも、新しい部署で頑張っていると聞いています。持ち前の明るさとバイタリティで、突き進んでくださいね。たまには昔のように新橋の焼鳥屋に集合して近況報告し合いましょう。
ぜひ今後ともお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。

(署名)

クライアントやパートナーなど社外に向けたあいさつ文

あいさつ文を送りたい社外の相手ということは、すでに信頼関係ができていて、気心の知れた間柄ということでしょう。クライアントも社外パートナーも、今後も関係性が続く可能性が高い相手。個人メールやSNSで、感謝の思いを伝えつつ今後もご縁をつなぎたいという思いを伝えましょう。

<例文>
件名:退職のごあいさつ/△△社・山田太郎

株式会社〇〇〇
田中二郎様

いつも大変お世話になっております。△△社の山田です。
突然のご報告で恐縮ですが、〇月〇日をもって、〇〇社を退社することになりました。

私が□□支社に着任して7年、長い間パートナーとして支えていただき、本当にありがとうございました。至らないところも多々あったかと思いますが、田中様のきめ細かい配慮にいつも助けられてきました。
振り返ればさまざまな思い出がよみがえりますが、特に〇〇プロジェクトのことは忘れられません。スケジュール的にもう無理だと思ったときもありましたが、田中様を始め〇〇社の方々にサポートいただき、一致団結して壁を乗り越えることができました。あのときのことは、感謝してもし切れません。

〇月からは、ITベンチャーの△△社で心機一転、頑張りたいと思っています。まだ新しい会社なので、田中様にもまたお世話になる機会があるかと思います。その節はぜひ、よろしくお願いいたします。

(署名)

ルーセントドアーズ代表取締役 黒田真行氏

ルーセントドアーズ代表 取締役

黒田真行氏

ルーセントドアーズ代表取締役。「リクナビNEXT」編集長、リクルートメディカルキャリア取締役などを経て、2014年ルーセントドアーズ株式会社を設立。
日本初の35歳以上専門の転職支援サービス「Career Release40」を運営。2019年、中高年のキャリア相談プラットフォーム「Can Will」開設。著書に『転職に向いている人 転職してはいけない人』、ほか。「Career Release40」「Can will

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