ヘッドハンターに注目され、企業から選ばれる人材とは、どんなスキルや経験、能力を持った人なのでしょうか。ベテランのヘッドハンターに聞くと、業界や職種、役割が違っていても、最終的に企業から「選ばれる人」には一定の共通点があると言います。転職市場で評価され、選ばれる人材にはどんな共通点があるのか。数多くのハイクラス人材の転職を支援してきた、(株)エリートネットワークの黒澤謙二氏にお話を伺いました。
本心から仕事を楽しみ努力できる人は魅力的。「スピード感」もポイント
――ヘッドハンターとして魅力を感じる人、声をかけたくなる人とは、どんな特徴を備えた人ですか?
仕事自体を人生の中心に捉えていて、仕事を通じて人生をより豊かに充実させたいと常日頃から考えている人に魅力を感じます。
ハイクラス人材の中にも、生活のため、家族のために働くというスタンスの方もいらっしゃいます。もちろん当然ではあるのですが、多くの経営者は、ホンネでは仕事を楽しんでいる人に責任ある役割を担ってほしいと考えています。
仕事を楽しんでいる人は、仕事を充実させるための自己研鑽にも積極的な傾向があります。
スキルアップのために、平日のオフタイムや休日などプライベートの時間を割いて自発的に勉強・情報のインプットをしている方は、物事に真摯に取り組める人、継続的な努力ができる人、成長意欲が高い人というプラスの印象を持たれます。実際、こういうタイプの人が企業からの好感度も高いです。
――そのほかに、ハイクラス人材を求める企業が重視している項目はありますか?
経営層に近いポジションの採用においては、大きく次の3つが重視される傾向にあります。
1:経営者個人の価値観や経営理念に共感できるかどうか
2:企業の目標や目指す方向性について腹落ちし、同じ方向に進めるかどうか
3:目標に向かう足並みやスピード感が経営者と揃っているかどうか
ハイクラス人材は、経営者のブレーンや事業責任者など、経営者に近い立場を担っていただくケースが多いので、まず、1つ目と2つ目の「ベクトル」が合っているかという点が重要です。その上で欠かせないのが、3つ目の「スピード感」を共有できているかです。
1と2は、合う・合わないがお互いの会話を通して比較的合意形成しやすいのですが、3の「スピード感」は判断が難しいので、我々ヘッドハンターもしっかりチェックするようにしています。例えば、経営者が「1年後にはこのレベルに達したい」と考えているのに、候補者側が「今のペースならば3年はかかるのではないか」と捉えているとしたら、たとえ理念やスキルが擦り合って入社なさっても足並みが揃わず、事業計画が道半ばでとん挫してしまいかねません。
決してスピード感が早いから良いという訳ではなく、「経営側の求めるスピード感とフィットするかどうか」が大切。そのため、求人案件をご紹介する際には、将来的にどれくらいのスピード感で事業を拡大していく予定・計画なのか、経営者の考えや想いを極力具体的に伝え、それに共感・納得できるかどうかを入念に確認するようにしています。
仮に、スピード感に多少のズレがあったとしても、企業や経営者側の求めるスピード感に抵抗感なくアジャストできる柔軟性や強靭さを備えておられる人材が選ばれています。
選ばれる人の共通点は、「自己研鑽」と「日々の振り返り」
――これまで数多くのハイクラス人材の転職を支援してきた黒澤さんから見て、「選ばれる人材」に共通するスキルや素養などはありますか?
先ほども挙げましたが、やはり「自己研鑽」ですね。私がお声がけする候補者の方の大半は、多忙な中でも、プライベートな時間をスキルアップのための自己研鑽に充てています。しかも、それが習慣になっている。正に、習慣は第二の天性と言われるゆえんです。
勉強の内容は人によって、また、業務内容によっても異なります。「〇〇を勉強している人が評価される」という法則はありません。ただ、自己研鑽し続ける習慣がある方は、常に向上心を持って自発的にインプットし続けられる方が多く、新しい環境でも早期にキャッチアップでき、期待通り戦力になって活躍しているケースが多いのです。
ちなみに、自己研鑽の習慣がある方は、転職活動自体にも真剣に向き合います。事前に企業研究をぬかりなく行い、上場企業であれば有価証券報告書までも読み込み、面接対策も怠りません。そういう姿勢が、新天地でのソフトランディングにつながっていると感じます。
――将来、「選ばれる人材」になるためには、どんなことを行えばよいと思われますか?
これからは、人生100年時代と言われるように、学生時代に学んだ内容のみで事足りるとは限りません。まずは、自発的な自己研鑽を習慣化してほしいですね。前述のように、勉強の内容やレベル感ではなく「自己研鑽し続ける姿勢」がモノを言います。
そしてもう一つ、日々の仕事について日記のようなものを付けて記録するのもお勧めです。今取り組んでいる業務内容は何か、それに対して自分はどう考え行動しているのか、そして何ができるようになったのか、書き留めておくのです。
その時の思いや感じたことなどを記録することで、日々の小さな成長にも気づくことができ、自信になります。日々キャリアの棚卸しを行っていることになるので、自分の成果とも否応なしに向き合うことになります。我が身を直視することで身が引き締まり、さらに真剣に仕事に向き合える好循環に繋がります。
ときどき立ち止まって過去の記録を読み返すことで、これまでの軌跡がつかめるのもメリット。自分の軸が言語化されてくると、今後目指す方向性も自ずと明確になります。副次効果として、転職活動の際の履歴書や職務経歴書作成も、記録があればスムーズに進むでしょう。
実際、ハイクラスの方で記録を付けている方は多いですね。日記帳や手帳に書き留めたり、スケジューラに入力したり。日記代わりにレジュメを作って、頻繁に更新しているという方もいらっしゃいます。
目標に向かってoffの時間にも自己研鑽し続ける。そして、日々の振り返りで自己認識を逐次更新する。ハイクラス人材を目指す若手ビジネスパーソンには、ぜひこの2点を意識しながらキャリアを築いていってほしいと思います。
仕事に対するストレートな熱意をアピールするのをためらわない
――ところで、コロナ禍を受けて転職市場に何か変化はありましたか?
WEB面接が増えた、選考期間が短くなった等ありますが、根幹の部分でいうと企業側ではなく、個人側の変化を感じることが多いですね。具体的にはコロナ禍以降、仕事中心ではなく「自分の生活中心」にキャリアを考える方の割合が増えているという印象です。
働き方改革の推進に加え、コロナ禍で多くの企業がリモートワークにシフトしたことで、自身の生活全般に目を向ける機会が増えたことが一因だと思われます。そのため、転職の際にも、仕事内容やポジションのみならず、労働時間や転勤の有無などを重視する方が増えていると感じます。
もちろん、中にはもっとバリバリ働きたい・・・・・という熱い思いを持っている方も多いのでしょうが、このご時世でそういう意思表示をしにくい風潮もあるせいか、採用する側に仕事へのストレートな熱意を感じ取って貰いづらくなっているのではないかと思います。
企業側ももちろん、社員のワークライフバランスを考慮しています。けれども、その点ばかり目が向いている人材だと誤解されるのは得策ではありません。特に、企業の中核を担っていく人材には経営者と同じ目線で未来を見据え、ともに目標に向かって突き進んでほしいと願っているのが経営者の本音だと思います。ワークエンゲージメントを高めたい、責任ある仕事に全力を傾注したいと考えている方は、ぜひその思いを前面に押し出し“経営者の右腕として一蓮托生で励みたい”とストレートに訴えて貰いたいです。
株式会社エリートネットワーク カウンセリング事業部
防衛大学校 理工学部 応用物理学科を卒業。完成車メーカーで15年に亘り、エンジニアとしてモノづくりに携わった後、財閥系大手不動産会社で営業職として経験を積み、(株)エリートネットワークに参画。法人営業 (企業担当) 兼 ヘッドハンターとして、転職支援業務に従事。
メーカー (自動車、機械、素材・化学・金属、電気・半導体、医薬品)、インフラ関連企業、建設・不動産、再生エネルギー業界をメインに、金融機関や総合商社、IT・通信、シンクタンク、監査法人等、幅広い業界にハイクラス人材、及び、技術系人材の決定実績を有する。
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