建設・不動産業界の2022年下半期の転職市場の求⼈・求職者の動きを、業界に精通した株式会社リクルートの人材領域で活躍するキャリアアドバイザーがレポートします。「2022年下半期の転職市場や業界トレンドを知りたい」「納得感のある転職活動のために、採用動向を知っておきたい」という方はぜひご一読ください。
建設・不動産業界の2022年下半期転職市場の展望を一言でいうと
ゼネコンからの人材流出が起こっており、働き方改革が切実な課題。
求職者は、現状の過酷な労働環境から少しでも働きやすい環境を求めている。
1.【建設・不動産業界】業界・企業側の動き
求人数は過去最高レベルであったコロナ禍前の2019年と同水準程度まで回復をしており、新卒・中途問わず採用は非常に活況です。幅広い求人が出ていますが、特に施工管理の職種は非常にニーズが高く、業界全体として人材は不足していますが、施工管理の人口増加を見込めるわけではないため今後も枯渇感は続くでしょう。
また、ファシリティマネジメント、建築管理部の求人も多く出ており、ゼネコンから発注者側への転職が叶う状況です。人材が不足している割に、ゼネコンで施工管理をしている方の労働環境や待遇改善がなかなか進まず、より条件も良い発注者側の事業会社への流出が起きてしまっています。どの企業も口をそろえて人が足りないと言っているものの、ここ数年で働く環境の整備が進んだとは言えない印象です。業界全体として労働環境の本気の改善が求められています。
施工管理や設計、BIMができる方などの高難易度な職種の採用は続きますが、条件の緩和や処遇改善に本気の企業から選ばれていくことになるでしょう。本当に自社にとって必要な人事施策は何か、考える必要があります。このままだと、他業界の方が明らかに働き方の柔軟性があり労働条件の改善が進んでいるため、業界全体として危機感を持たねばならないでしょう。
ディベロッパーは総じて採用意欲は上がっており、大きな投資をしてリターンを得たいというフェーズにきており、商社をはじめ不動産投資で業績を回復させる動きがあります。そのため、不動産開発の職種は特にニーズが高く、総合ディベロッパーでは、物流拠点に関する不動産案件の強化を図っています。最近では、事業会社や物流会社が自社で物流施設を持つようになってきており、その案件が今後も一定数増加することが見込まれます。物流拠点は賃貸契約の期間も長くなることが多く安定した収益を見越すことができるでしょう。今までは物流専業のディベロッパーがいたが、総合ディベロッパーがこの領域に進出してきている格好です。
2.【建設・不動産業界】求職者側の動き
最近、一部では定年後にもう一度仕事をしたいというシニアの方が同業界内での転職を目指されるケースも出てきています。一方で大部分の設計、施工管理の方は働き方の改善を目指し転職を考えています。こういった方は、常にいらっしゃる状況です。自社の働き方が変わらない中で、このままだと働き続けられないと感じ、業界外や事業会社への転職を目指される方が多いようです。ただし大手のディベロッパーの場合、企業側の選考基準も定まっていないことが多く、面接を受ける人数は多いものの採用までつながることが難しく、まだまだ流動性が高いとは言いづらいでしょう。
ただ、潜在的に転職をしたい、働く環境を変えたいと思っている人は非常に多い印象であり、繰り返しになるが企業が本当に変わらなければこのまま選ばれない業界になっていってしまうでしょう。
<建設・不動産業界の転職動向>
出所:リクルート『リクルートエージェント』転職決定者数の分析
関連リンク
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平野竜太郎
建設不動産領域専任シニアコンサルタント。ゼネコン・サブコン・組織設計事務所の建設技術者から、不動産ディベロッパー・AM・PMなどの不動産専門職・不動産金融領域のハイキャリア層を中心に幅広い支援実績を持つキャリアアドバイザー。
箕輪真人
建設・不動産領域においてサーチコンサルタント及びキャリアアドバイザーとして豊富な知識と実績を持つ。近年は建設業における女性活躍推進にも取り組み、労働環境改善を目的とする転職サポートに強みを持つ。