【2022年下半期】転職市場の今後|全15業界の中途採用状況

窓から見えるオフィス街の風景

コロナ禍を経て、働き方や生き方を見つめなおす求職者は引き続き増えているようです。リモートワークができることや、副業が可能、望まない転勤を配慮してもらえるといった柔軟な働き方ができる企業に人気が集まっている一方で、企業側では、人材不足を解消するため二つの動きが出始めました。先を見通すことは難しいながら、2022年下半期の転職市場はどうなりそうなのか、株式会社リクルートの人材領域の最前線で採用/転職支援を行う担当者から、15の業界について、順に解説します。

1.2022年下半期 転職市場の展望

全業界で中途採用が活況する結果となり、2022年は過去最高レベルの求人数を掲げる企業が続出しました。DX人材の争奪戦は引き続き激しいながらも、経験年数を緩和するなど採用ターゲットの設定や、リモートワークや副業希望者の対応などへの配慮が命運を握っているようです。しかし、働き手に寄り添った環境を提供できる企業に応募が殺到する反面、そうすることが難しい企業には応募が集まらないだけでなく、離職や転職相談もあるなど人材求心力の二極化が起きています。

全体の解説と、業界ごとのポイントをご紹介します。

全業界で中途採用が拡大。過去最高水準の求人数

『リクルートエージェント』の求人数は、全ての職種でコロナ禍前の水準を超えて推移しています。中には、4桁単位の採用を掲げる企業も出てきました。
『リクルートエージエント』利用企業に聞いた「21年度下半期の中途採用充足状況」(22年1月〜2月調査)では、実に80.8%の企業が計画した採用数を満たせなかったことが明らかになりましたが、そうした人材需給のひっ迫は全業界に及んでいます。

募集背景も多彩で成長分野のキーワードが並びます。スーパーシティ構想、グリーン戦略・カーボンニュートラル対応、Web3・メタバース・NFT*、SaaS、マテリアルズ・インフォマティクス、先端医療、航空宇宙、防衛、EV、ヘルスケア、リテールテック、DtoC、BIM * 、SDGsなど。いずれも、これまでの事業モデルを変革し、デジタルで顧客体験を向上し、持続的な競争優位を強化するCX・DX・GX*人材採用です。

*NFT::Non-Fungible Token(非代替性トークン)
*BIM:ビルディング インフォメーション モデリング
*GX :グリーン・トランスフォーメーション

リクルートエージェント代表職種別求人数推移図

争奪戦を制する企業の特徴は、ターゲットと働き方に

こうした人材争奪戦で優位に立つため、各社が力を注ぐのが二つの動きです。
一つ目は、市況に合わせたリスキリング型採用ターゲットの設定。需給がひっ迫する企業では、経験年数の緩和、第二新卒採用、業界未経験採用、職種未経験採用を行っています。異業界・異職種での経験や、課題設定力・変化適応力などのポータブルスキルを評価し、入社後のリスキリングによって、知識やスキルを補い、入社後の活躍を実現しています。また、ミドルシニア層の採用を強化する企業も多くなっているようです。こちらは、募集するジョブの職能要件に合えば、年齢に関わらず採用するジョブ型採用への転換の兆しです。

二つ目の動きは、柔軟な働き方の推進です。具体的には、リモートワークや副業希望者への対応や転勤への配慮など、働き手のライフスタイルやライフワークに寄り添った環境を提供できる企業とそうでない企業の人材求心力の差は、想像以上でしょう。実際、フルリモートで働ける企業には、全国から数千人もの応募が殺到する一方で、リモートワークができない企業には応募が集まらないだけでなく、その企業からの離職・転職相談も多くあるほど、人材求心力の二極化が起きています。

変容する個人のキャリア観。意義と裁量へ動く求職者

コロナ禍でキャリアを見つめ直した求職者は、「コロナ禍での会社の戦略や方向性への不安」を契機に、「やりたいことを仕事にできる」を、転職先を選ぶ際の最重視項目に据えています。

個人が希求するのは、生き方に根差したキャリア展望と成長機会です。働き手の仕事の意義と裁量権(仕事選択と働き方)へどこまで寄り添えるかが、人材争奪戦で優位に立つためのカギとなります。

コロナ禍での転職活動のきっかけ(上位1、2位)
コロナ禍での転職活動のきっかけ図

参考:コロナ禍での転職活動者動向 転職活動者の意識・動向調査(2021)調査結果

2.【業界別】15業界の転職市場動向

IT通信

【2022年下半期】IT通信業界の転職市場は今後どうなる?

IT通信業界の転職市場動向のポイント

 

人材獲得のため、未経験採用・シニア採用・働き方の柔軟性向上などさまざまな施策が進む。
求職者はサステナビリティへの関心が高まる。副業の経験もアピール材料に。

コンサルティング

【2022年下半期】コンサルティング業界の転職市場は今後どうなる?

コンサルティング業界の転職市場動向のポイント

過去最高水準の採用数を予定。働き方の柔軟性も高く異業界・異職種からの転職も増加。
求職者のニーズも多様化。社会貢献性を重視する若者を惹きつける。

インターネット

【2022年下半期】インターネット業界の転職市場は今後どうなる?

インターネット業界の転職市場動向のポイント

 

採用は非常に活発。営業職は異業界からの採用も進む。新しい領域の求人も。
リモートワークや副業可は当たり前の条件に。副業の経験が転職で活きることも。

自動車

【2022年下半期】自動車業界の転職市場は今後どうなる?

自動車業界の転職市場動向のポイント

 

業界全体として、過去最大レベルの求人量。採用ポジションにも広がりが。
ソフト・デジタル分野の採用では、働き方の柔軟性への対応も今以上に求められる。

総合電機・電気・半導体・電子部品

【2022年下半期】総合電機・電気・半導体・電子部品の転職市場は今後どうなる?

総合電機・電気・半導体・電子部品の転職市場動向のポイント

 

企業はITやAI関連の人材を獲得するためにも働き方の柔軟性向上が必須。
採用は先端領域へ。求職者も働き方の柔軟性を求める。

SDGs・エネルギー・サステナビリティ

【2022年下半期】SDGs・エネルギー・サステナビリティの転職市場は今後どうなる?

SDGs・エネルギー・サステナビリティの転職市場動向のポイント

 

社会全体としてグリーンへの意識が高まり、対応する企業も増え求人も増加。
求職者は、働き方を重視。どのようなキャリアやスキルを身に付けられるかを見極め。

化学

【2022年下半期】化学業界の転職市場は今後どうなる?

化学業界の転職市場動向のポイント

 

過去最高レベルの求人量。引き続き活況だが、充足へは変化対応できるかがカギに。
求職者は事業・商材の将来性に注目。一人ひとりに合った「働き方」の柔軟さも求める。

医療・医薬・バイオ

【2022年下半期】医療・医薬・バイオ業界の転職市場は今後どうなる?

医療・医薬・バイオ業界の転職市場動向のポイント

 

求人は堅調に推移。MRは大量採用計画と早期退職が同時に進む。
求職者はリモート環境を求める傾向に。異業界への転職も叶っている。

建設・不動産

【2022年下半期】建設・不動産業界の転職市場は今後どうなる?

建設・不動産業界の転職市場動向のポイント

 

ゼネコンからの人材流出が起こっており、働き方改革が切実な課題。
求職者は、現状の過酷な労働環境から少しでも働きやすい環境を求めている。

銀行・証券

【2022年下半期】銀行・証券業界の転職市場は今後どうなる?

銀行・証券業界の転職市場動向のポイント

 

銀行・証券ともに採用は非常に活発。求める人材は専門職へとシフト。
求職者の選択肢も広がっており、同業界内、異業界へも活躍の場が広がっている。

生保・損保

【2022年下半期】生保・損保業界の転職市場は今後どうなる?

生保・損保業界の転職市場動向のポイント

 

CXへの対応が急務。DXやCX企画が求められる。営業に求められる業務も変化。(生保)
新規事業の広がり次第ではさらに異業界からの採用も進む。(損保)

商社・消費財

【2022年下半期】商社・消費財の転職市場は今後どうなる?

商社・消費財の転職市場動向のポイント

 

採用は活況で募集ポジションも多様化。通年採用に近づく動きも。(商社)
EC領域と物流領域に注力。マーケット環境や法律の変化に対応する動き。(消費財)

人材・教育

【2022年下半期】人材・教育業界の転職市場は今後どうなる?

人材・教育業界の転職市場動向のポイント

 

人材不足を背景に採用は非常に活況。働き方の柔軟性への対応は急務。リモート環境を整備できるかがカギ。
教育業界ではさまざまな経歴の方が教室長として採用される。

外食・店舗型ビジネス

【2022年下半期】外食・店舗型ビジネスの転職市場は今後どうなる?

外食・店舗型ビジネスの転職市場動向のポイント

 

採用は回復。人材確保のため働きやすさを整えていく動き。
「地域限定社員」や、本社求人ではフレックスやリモートワークも導入が始まる。

ベンチャー・スタートアップ

【2022年下半期】ベンチャー・スタートアップの転職市場は今後どうなる?

ベンチャー・スタートアップの転職市場動向のポイント

 

全体として非常に活況。ヘルスケア領域やリテールテック領域の伸びも顕著。
求職者は既に働き方も柔軟になってきており、副業と本業のバランスをうまくとる方も。

藤井 薫

藤井 薫

1988年リクルート⼊社。TECH B-ing編集⻑、Tech総研編集⻑、アントレ編集⻑を歴任。2008年からリクルート経営コンピタンス研究所、14年からリクルートワークス研究所兼務。変わる労働市場、変わる個⼈と企業の関係、変わる個⼈のキャリアについて、多様なテーマ(AI全盛時代の採⽤戦略、多中⼼時代のHRM、アントレプレナー・パラレルキャリアの⽣き⽅など)をメディアで発信中。著書『働く喜び未来のかたち』(⾔視舎)。

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