過去に失業や起業の失敗を経験。経営者・求職者双方の気持ちを理解できる立場として、「相性」を大切にしたリクルーティングにこだわりたい

専門商社勤務を経て、オリックス・キャピタルでベンチャーキャピタリストとして案件の発掘、審査、投資実行などを担当する。その後、会社経営を経て、日本DEC、テクノブレーンにおいてIT、ハイテク、ソフト開発企業向けのエンジニアスカウト等人材コンサルティングを担当。その後大手エクゼクティブサーチファームを経てCEOマネージメントの設立に参画、経営トップなどエグゼクティブ層を中心としたキャリア・コンサルティングを行う。

商社、ベンチャーキャピタルを経て、自ら起業。しかし…

キャリアコンサルタントの道に飛び込んだのは、約20年前。それまでにいくつかの仕事に携わり、さまざまな経験を積みましたが、それらがすべて現在に活きていると感じています。

大学卒業後に就職したのは、学生時代からアルバイトをしていた化学品の専門商社。約7年間、営業として勤務しましたが、ある日突然倒産してしまったのです。私が29歳の時でした。「この会社で頑張って、いつかは社長になりたい」と思っていたので、ショックでしたね。

あまりに突然のことでしたし、転職活動はおろか就職活動もしたことがなかったので、人材紹介会社に登録はしたもののなかなか次が決まりませんでした。「将来起業したいので、会社の経営に携われる可能性があって、ファイナンスも学べて、給料もいい会社を紹介してほしい」なんて条件ばかり並べていましたから(笑)。結果、5カ月の失業期間を経て、ベンチャーキャピタルのオリックス・キャピタルに入社しました。

実は、この会社の求人は自分で見つけました。新聞の求人広告を見ていて「まさに理想の仕事だ!」と確信したのです。当時は、ベンチャーキャピタルという分野があることすら知りませんでしたが、仕事を通じて経営能力も磨けるほか、資金調達ノウハウや人脈など、起業に必要なあらゆることが学べると感じました。

7年半、ベンチャーキャピタリストとして、投資すべきベンチャー起業の発掘から調査、投資の実行、上場まで、一通りの業務に携わりました。そんな中、突然、起業する機会が訪れました。投資先候補として出会ったベンチャー企業の製品にほれ込み、「これは絶対にビッグビジネスになる!」と確信。その会社と契約を結び、製品を売るのではなく、レンタルする会社を自ら立ち上げたのです。

結論から言えば、その会社は2年で畳むことになってしまいました。2回目の失業です。そのとき、失意の私に声を掛けてくれたのが、1社目の倒産時に相談に乗ってくれた人材コンサルタントでした。実は、ベンチャーキャピタルに入社した後も、転職目的ではなく、情報交換のために時々接点を持っていたのです。「よかったら、うちの会社に入社しないか」と誘われ、すぐに入社を決意しました。

当時、すでに40歳目前。人材業界に関わるのは初めてでしたが、すぐに「自分に向いている仕事だ」と思えましたね。企業の置かれている立場を理解したうえで、最適の知識や経験を持つ人をリクルーティングすることで、企業も人材もイキイキ輝く。そういう事例に数多く携われることに、喜びを感じることが出来たのです。

現場のエンジニアだけでなく、エグゼクティブ層のスカウトにも携わってみたいと、大手エグゼクティブ・サーチファームに転職したのが10年前。そこで2年間経験を積み、当時の同僚と一緒に今の会社、CEOマネージメントを立ち上げました。現在は、主にプライベートエクイティファンドの投資先である企業の経営を担える人材をサーチし、紹介を行っています。

振り返れば、随分いろいろな仕事を経験したし、紆余曲折あったと改めて実感します。ただ、おかげで企業経営のことは大体わかりますし、経営者の悩みや苦しみも理解できるようになりました。一方で、失業者や転職者が抱えるキャリアに対する不安も、我がことのように理解できます。全てが今につながっているのだと、改めて感じています。

そして、立ち上げた会社を畳むことになった時には、人材コンサルタントと時々コミュニケーションを取っていたことで救われもしました。皆さんにも、特に転職を志していなくても気軽に人材コンサルタントにキャリア相談していただくことをお勧めしたいですね。自分ではつかめないリアルな市場動向がお伝えできますし、意外なキャリアの選択肢が広がる可能性もあります。そして、もしも何かあった時、即座に行動に移せるというメリットもあります。

ネガティブな面も全て提示したうえで、求職者に決断をいただく

私が人材コンサルティングにおいて最も大切にしているのは「ケミストリー」(相性)。企業のいい面も、ネガティブな面も全て理解したうえで、包み隠さずそれを求職者にお伝えして、ご本人に合うか、合わないかを判断いただくようにしています。私のほうからは決して無理に勧めませんし、肩を押すような発言もしません。逆に、内定が出た後でも「違う」と思ったら辞退をお薦めする事もあります。

そのために、採用の決定権を持つ人に必ずお会いして、会社について、ポジションについて細かくヒアリングするほか、可能な限り面接に同席します。面接での企業側の対応を見ながら、さらにその企業に対する理解を深めて、求職者に対して的確なキャリアアドバイスをするためです。

以前、こんなことがありました。外資系コンピュータ会社で営業として実績を積んだAさんがキャリア相談にいらっしゃった時、私はある成長中のIT関連会社の経営企画職を推薦しました。ただ、「2~3年で充分です」という条件付きで。

Aさんには半年のブランクがあり、その理由を聞いたところ、「起業の準備をしていたが、仲間とうまくいかず、断念を余儀なくされた。だから今日から転職活動をしている」との答えが。彼の言葉からは、「いつかは起業に再チャレンジしたい」という並々ならぬ熱意が感じられました。

紹介したIT企業は、カリスマ的な存在のオーナー社長が急成長のけん引役となっていました。勢いもありましたが人の出入りも激しい会社です。しかし、経営企画職としてこの会社に入り、社長の経営手腕を間近で見て、体得することは、起業を目指すAさんの将来に必ずや役立つと確信できました。「2~3年」と伝えたのは、タフな環境であることは間違いないですが、それだけ働けば充分だと思ったためです。

するとAさんから、こんな答えが返ってきました。
「実は、先ほど別の人材コンサルティング会社でも、同じ会社を勧められました。しかし、そこでは会社のいい面しか教えてくれなかった。でも、堀川さんはネガティブな情報もすべて話してくれたし、『2~3年頑張れば充分』とまでおっしゃる。企業のことも、私の志向も理解したうえで、誠実に話してくれていると感じたので、ぜひ御社で応募させて下さい」

このような言葉をもらい、人材コンサルタント冥利に尽きると思いましたね。私の思いが伝わった気がして、とても嬉しく感じました。

Aさんには全て納得の上で応募に進んでいただくことができ、その後はとんとん拍子で入社が決まりました。それから2年ほど経ったころに、「そろそろAさんの様子を聞いてみよう」と思い連絡を取ったのですが、「初めは辛くて音を上げそうになったけれど、ようやく仕事が面白くなってきた。もうちょっと頑張ってみます!」との返事をいただきました。ちょっと予想は外れましたが(笑)、彼が新天地でイキイキと働けていることが嬉しいですね。

「事業承継」「グロース」をテーマにした経営層の採用ニーズが拡大

当社が抱える求人案件の多くは、投資ファンドから寄せられるものです。ファンドが入る会社は、大企業からの部門のカーブアウトだったり、高齢のオーナー社長からの事業承継だったり、資金を得ての更なる成長期待だったり、夫々に明確な課題を抱えています。経営者として科学的な経営が出来ることが求められています。

特に、数字の面から経営状況を把握し、バックオフィス部門を全て束ねたうえで問題解決に向けてまい進できるCFO経験者のニーズは常にありますね。また、経営を現場で支える経営企画職の採用ニーズも増えていますね。40代以上の経験者がメインですが、30代であっても、自社のみならず子会社や関連会社の経営企画を取りまとめてきたような経験があれば、高く評価されます。

なお、最近では事業再生よりも、「事業承継」「グロース」がテーマとなる案件が増えつつあるのが特徴です。創業者から経営が代替わりする際に、ファンドが入り、次のステージを支える経営人材を採用するニーズや、これから大きな成長が期待できる中堅企業をさらに大きくするために力を発揮できるCEO、COO、CFO候補、そして経営企画職の採用が増えつつあります。このような案件に携わってさらにキャリアアップを図りたいと考える方は、ぜひ気軽に声をかけてほしいですね。