2010年に発売されるやいなや、インパクトのあるタイトルと斬新な内容が話題になり、一気にミリオンセラーとなった『鈍感力』。流行語大賞にもノミネートされるほど、広く知られる書籍となりました。そんな本書では、タイトルのとおり「鈍感であることの素晴らしさ」をさまざまな角度から解説。鋭さやスピード感ばかりが評価される今の社会に、疑問を投げかける1冊です。
書名:鈍感力/集英社文庫 著者名:渡辺-淳一
2010年に発売されるやいなや、インパクトのあるタイトルと斬新な内容が話題になり、一気にミリオンセラーとなった『鈍感力』。流行語大賞にもノミネートされるほど、広く知られる書籍となりました。そんな本書では、タイトルのとおり「鈍感であることの素晴らしさ」をさまざまな角度から解説。鋭さやスピード感ばかりが評価される今の社会に、疑問を投げかける1冊です。
三行要約
才能を開花させて成功する、健やかで丈夫な体を維持する、円満な結婚生活を持続する……そんな、誰もが願う幸せな人生を送るために必要なのは、ズバリ「鈍感力」です。人の話をあまり覚えられないことも、料理の繊細な香りに気づけないことも、実は立派な才能。あらゆることに上手に鈍感になることで、もっと楽しく生きていけるのです。
読み応えのあるポイント
「あなたって鈍いわね」と言われたら、あなたはどんな返事をするでしょうか? 「そんなことはない!」と怒り出したり、「やっぱりそうだよね」と落ち込んだりする方は、ちょっと鋭すぎるのかもしれません。本書では、鈍感力の高い人にはどんな幸せが訪れるかを紹介しています。読み終わる頃には、あなたも鈍感力の高い人に憧れてしまうのではないでしょうか。
楽天的なお調子者にしか成し遂げられないことがある
著者の渡辺氏は、図に乗ることの大切さについて、近所の「おばさま」の例を挙げながら説明します。その女性は、いつもド派手な服を着ており、残念なことにそれがまったく似合っていません。そして、会う人みんなに「どうかしら?」と尋ねます。
近所の誰しもが苦笑いしながら「お似合いですよ」とお世辞を言いますが、普通なら気づきそうなもの。しかし、女性は言葉どおりに受け取ります。そうするうちに、なんと本当に似合うようになってしまうのです。
何かをするときに、「きっと周りはよく思っていない」「今の褒め言葉は皮肉だ」などと勘ぐっていては、心が折れて続かなくなってしまいます。自分が決めたことをやり抜くため、才能を開花させるためには、鈍感力がなければならないのです。
「病は気から」は本当だった! 健やかな毎日は鈍い精神がつくる
医師でもある渡辺氏によると、健康な体をつくるには、質の高い睡眠を十分にとることや、血液をサラサラにすることなどが必要不可欠。
これらを実現するには、自律神経のうち、副交感神経が優位に働くようにしなければなりません。そして、ここでも鈍感であることが役に立ちます。些細なことに神経をとがらせていると、交感神経が体のバランスを崩していくため、なるべく心穏やかに過ごすことが、健康への近道となります。
おおらかでマイペースな人と繊細で神経質な人とでは、病気にかかる確率まで異なるのだとか。鈍感かそうでないかで、健康面にも影響があるかもしれないのです。
鈍い人ほど平和な結婚生活を手に入れる
結婚とは、育ちも価値観も異なる2人が一緒に暮らすということ。自分とは違う相手の価値観を受け入れることが求められます。しかし、長年をかけて培ってきた習慣や考え方は、なかなか変わるものではありません。少しずつ結婚生活にストレスを感じ始め、ときには夫婦喧嘩をしてしまうことも。
しかし、これが鈍感力の高い人であればどうでしょうか? 自分とは違う相手の習慣も気にならなかったり(そもそも気づかなかったり)、相手に小言を言われても上手に聞き流せたりと、喧嘩が起こるリスクがかなり低くなることが予想できます。
そして、「夫婦は似てくる」とよく言われるように、そういう鈍感さはパートナーにも伝染するもの。自然と相手も、のんびりと構えるようになるのです。そうやって鈍感力の高い2人になれば、揉めごとの少ない平和な生活を送れることは、想像に難くないでしょう。
「お前は鈍感だな」と言われて落ち込んだことがある人は、実は何事においても成功する才能を秘めているのかもしれません。「自分は鈍感なのかな?」と気にされている方は、考え方を変えて、鈍感=長所と捉えてみてはいかがでしょうか。
また、身近に鈍感力の高い人がいる場合は、その言動にただイライラするのではなく、「鈍感力」を見習うつもりで接してみてはいかがでしょうか?
こんな人に読んでほしい
周りの目や評価ばかりを気にしてしまう
些細なことで落ち込んだり、怒ったりしがち
同僚や家族など、身近に「鈍感力の高い人」がいる
併せて読みたい本
本書では、鈍感であることの素晴らしさを説いています。それを理解した上で次に気になるのが、実際に「鈍感力」を身につけるための方法でしょう。そんな「鈍感力」なるものを日々の生活に落とし込んで紹介しているのが、『考えすぎない』(本田時生 著)や、『気にしない練習』(名取芳彦 著)です。ぜひ、本書と併せて読んでみてください。