退職日の決め方は?転職する場合の最適な退職スケジュールを解説

退職日 決め方

転職活動を始めるにあたり、「退職日」または「退職希望日」を設定する必要があります。スムーズな退職を目指すには、退職日を決めるための複数の要素を加味する必要があります。退職日を決める要素、退職日の決め方、退職スケジュールの組み方などについて、社会保険労務士法人 岡 佳伸事務所代表の岡 佳伸氏と組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

退職日を決める要素

退職日を決めるための要素は複数あります。次の項目をチェックしたうえで退職日の目標を設定しましょう。

就業規則の申し出期間

一般的に、企業の就業規則には「退職の申し出は退職希望日の○カ月前まで」という退職の申し出期限が定められています。まずは就業規則を確認し、退職を申し出てから退職までにどれくらいかかるかを把握しておきましょう(民法の規定上は、遅くとも2週間前までの申し出が必要)。

担当業務の状態

業界や職種によって業務量が増える時期があり、担当するプロジェクトの進捗状況によっても業務の繁閑の状況は異なるでしょう。繁忙期に退職日を設定すると、職場や取引先などに迷惑をかけたり、退職の延期を求められたりする可能性があります。円満に退職を進めるためにも、繁忙期を避けて退職日を設定するといいでしょう。

業務の引き継ぎ期間

担当業務を引き継ぐために、どの程度の期間が必要かを算出しておく必要があります。特に営業やコンサルタントなどの職種は、引き継ぎの際に顧客への挨拶が伴うため、引き継ぎ期間に余裕がほしいところです。自分の業務を一覧化し、引き継ぎ期間を考慮して退職日を設定しましょう。

残っている有給休暇の日数

有給休暇は、採用された日から原則6カ月後に10日分が付与され、以降は1年ごとに勤続年数に応じた日数が付与されます。残っている有給休暇を確認し、消化する日数も考慮して退職日を決めるといいでしょう。

ボーナスの支給時期

7月・12月頃の退職を見込んでいる場合、賞与の支給日を確認しておくことも大切です。就業規則や賃金規定などで賞与の支給日や査定基準などを確認してみてください。

雇用保険の基本手当(失業保険)

退職後、雇用保険の基本手当(失業保険)を受給しながら転職活動することを検討している場合、受給要件を確認しましょう。「被保険者期間」が、「原則離職の日以前2年間に通算して12カ月以上あるかどうか」を確認したうえで退職日を決めるといいでしょう。

ただし、倒産・解雇などの理由により離職した場合、期間の定めのある労働契約が更新されなかったこと、その他やむを得ない理由により離職した場合は、離職前1年間に被保険者期間が通算して6カ月以上となります。

転職先の入社日

会社員が加入する社会保険のうち、健康保険・厚生年金保険・介護保険については、会社と従業員が半分ずつ負担しています。会社を退職した場合、自身で国民健康保険や国民年金への切り替えの手続きをする必要があります。すでに転職先の入社日が決まっているのであれば、入社日の前日に退職日を設定することで、個人が払う費用と手間を減らすことができます。

退職金

一般的に、退職金には勤続年数などの支給条件が定められています。例えば、3年以上の勤務が支給条件となっている企業であれば、2年11カ月で退職すると退職金は支給されません。就業規則や退職金規定などを確認し、退職金の支給条件や計算方法を把握しておきましょう。

年末調整

年末に退職を検討している場合、年末調整のタイミングも考慮しましょう。11月~12月の年末調整前に退職し、転職先の給与支給がなく年内に年末調整が行われなかった場合、自身での確定申告が必要となります。確定申告が面倒で、年末までに再就職の予定がないのであれば所属企業で年末調整をしてもらいましょう。

転職先が決まっている場合の退職日の決め方

転職先への入社日が決まっている場合の、社会保険を考慮した退職日の決め方をお伝えします。

入社日の前日退職

転職先が決まっている場合、入社日の前日を退職日とすると手続きの手間を減らせます。退職から入社までに空白の期間があると、その間は自身で国民保健・国民年金への切り替え手続きをする必要があります。また、会社に在籍中であれば、健康保険・厚生年金保険・介護保険の費用は会社が半額を負担するため、金銭面でも負担が軽くなります。

入社日の前日以外に退職

上記のとおり、社会保険料の支払いや手続きの観点では、退職日は入社日の前日に設定すると都合がいいでしょう。しかし、リフレッシュ期間を確保したり、家族やパートナーの事情を優先したりするケースもあるでしょう。あるいは転職先企業から入社日を指定されることもあります。
「入社日前日の退職」にとらわれず、有給休暇の消化、雇用保険、退職金など、さまざまな要素を考慮して総合的に判断することが重要です。

転職先が決まっていない場合の退職日の決め方

転職先が決まっていなければ、「入社日」の指定がない分、退職日を自由に設定することができます。冒頭でご紹介した「退職日を決める要素」について検討し、自身にとって都合のいい日を設定しましょう。

転職する場合の退職スケジュールの決め方

転職を決めた場合、退職までのスケジュールの決め方の一例をご紹介します。

入社日から逆算する方法

転職先企業への入社日から逆算し、どのような行動を起こすのかをリスト化します。
以下のステップを参考にしてみてください。

<退職希望日の1~3カ月前> ※就業規則に基づく
・直属の上司へ退職の意思表示をする
・退職届を提出する
・最終出社日を相談する

<退職約1~2カ月前>
・業務の引き継ぎを進める

<最終出社10日前くらいまでに>
・お世話になった方への挨拶を済ませる

<退職当日までに>
・身の回りの整理をする
・会社から必要書類を受け取る
・会社からの貸与品などを返却する

必要期間から退職日を決める方法

退職までに必要とする期間を考慮し、退職日を決める方法もあります。一般的に、退職にかかる期間の目安をご紹介しますので、参考にしてみてください。

社内承認:1週間以上

直属の上司に退職意思を伝えた後、部門長や人事担当者などに承認を得ることになります。通常は1週間以上を要します。この段階で引き留めにあうケースも多く、退職交渉が難航した場合、数週間に及ぶ可能性も考えられます。

引継ぎや手続きなど:2週間~1カ月程度

一般的な引継ぎ期間の目安は2週間程度ですが、顧客への挨拶回りが必要な営業職やコンサルタント職、プロジェクト責任者、管理職などは1カ月程度もしくはそれ以上かかるケースもあるでしょう。

有給休暇の消化:個人による

有給休暇が残っていれば、最終出社日以降、有給休暇を使って休むことになります。残日数=有給休暇の消化に要する日数は個人によります。残日数を確認してみてください。

退職日が決まった後にすること

退職日が決まった後、退職までにすることとして次のようなものが挙げられます。書類の準備や手続きが必要となるものもあるので、なるべく前もって準備しておきましょう。

退職届の提出

退職の意思を伝える「退職願」が受理されると、その後、期日までに「退職届」を提出します。様式は企業によって異なりますので、人事担当者に確認しましょう。

現職の企業に備品や書類などを返却する

現職企業に返却する備品や書類としては、次のようなものが挙げられます。

  • 健康保険被保険者証(2024年12月2日から新規発行停止)
  • 社員証・入館証
  • 名刺
  • 仕事で使用した書類・データ
  • パソコン・携帯電話・タブレットなど

仕事に使用する書類やデータは、後任者に分かりやすいように、早めに整理を進めておきましょう。

現職企業から必要書類を受け取る

現職企業から、次のものを受け取ります。

  • 離職票
  • 源泉徴収票
  • 雇用保険被保険者証(預けている場合)
  • 年金手帳(預けている場合)
  • 退職証明書(必要に応じて)

転職先企業への入社手続き

入社にあたり必要な手続きは大きく2つです。1つは健康保険や年金などの公的な手続き、もう1つは卒業証明書や免許・資格の証明書など、企業によって提出を求められる書類の手続きです。
例えば以下のようなものがありますので、早めに準備しておきましょう。

公的な手続きに必要な書類

  • マイナンバー(個人番号)
  • 健康保険被扶養者(異動)届(被扶養者がいる場合)
  • 雇用保険被保険者証(被保険者番号がわかるだけでもいい場合がある)
  • 年金手帳(提示を求められた場合)
  • 源泉徴収票(その年に前職から収入があった場合、年末調整までに提出する)
  • 扶養控除等(異動)申告書
  • 給与振込先届出書
  • 健康診断書

企業によって提出を求められる書類

  • 退職証明書
  • 入社承諾書・入社誓約書
  • 身元保証書
  • 免許や資格の証明書
  • 住民税の異動届(住民税の特別徴収を継続したい場合)
  • 卒業証明書
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監修

岡 佳伸氏

大手人材派遣会社、自動車部品メーカーなどで人事労務を担当した後に、労働局職員(ハローワーク勤務・厚生労働事務官)としてキャリア支援や雇用保険給付業務、助成金関連業務に携わる。現在は開業社会保険労務士として活躍。各種講演会講師および記事執筆、TV出演などの実績多数。特定社会保険労務士、キャリアコンサルタント、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。

アドバイザー

粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。