転職の自己PRで資格をアピールする場合の伝え方と例文

転職活動を行う際、特定の領域の知識を持っていることを証明するために、「資格」をアピールするという方法があります。資格によっては、履歴書や職務経歴書の「自己PR」欄で資格の活用について触れておくと、選考通過率が高まるかもしれません。
そこで、自己PRで「資格」をアピールする場合の書き方のポイント・例文について、組織人事コンサルティングSegurosの粟野友樹氏にアドバイスいただきました。

自己PRで資格をアピールしたい場合のポイント

前提として、中途採用の選考においては資格よりも、即戦力となり得る業務経験やビジネススキルが重視されます。そのため、業務独占資格など特定の資格を除くと、「資格」の有無が選考に大きな影響を与えることはあまりありません。履歴書や職務経歴書の限られたスペースを使うのであれば、資格をアピールするよりも実務経験における強みを記載する方が効果的といえます。

しかし、人や状況によっては、資格のアピールが効果を発揮することもあります。例えば、応募する職種やポジションでの実務経験が十分ではない場合、資格によって「体系的な専門知識を身につけている」ことは採用担当者にとって安心材料となります。また、「向上心」「学習意欲」なども伝わり、好印象を与えられるでしょう。

ただし、「資格を取得している」という事実のみであれば、履歴書の資格欄のみで伝わります。自己PR欄にあえて資格を記載するのであれば、「これまでの業務で資格をどのように活かしてきたか」、あるいは「資格取得で得た知識・スキルを転職先でどのように活かしていこうと考えているか」などを伝えるといいでしょう。

資格をアピールする場合の自己PR例文

自己PR欄で資格をアピールする際の具体例をお伝えします。ここでは「経営」「プロジェクトマネジメント」「TOEIC」を例にとりますが、どのような資格でも基本的な考え方は同じですので参考にしてみてください。

経営学系の資格をアピールする

「MBA」「中小企業診断士」など、経営の知識・ノウハウに関する資格は、次のような職種・ポジションを目指す場合のアピールの補助として活用できます。

  • 法人向け営業職で、特に経営課題を扱う場合
  • 経営者向けコンサルタント
  • 経営企画職/事業企画職

なお、「MBA」などのカリキュラムを学ぶ過程で得た人脈をビジネスに活用できている場合は、それをアピールする手もあります。

【例文】

「経営課題の解決」にこだわりを持っています。現在は法人営業として、中小企業の経営者を対象に○○を提案しています。単に自社サービスを案内するだけでなく、経営者が抱える根本的な課題を深掘りするヒアリングを行い、MBAの学習で得た経営の理論と事例などを踏まえてアドバイスを行っています。その結果、経営者から信頼を獲得し、新規顧客開拓では支店でNO.1の成績を挙げてきました。
また、大学院のMBAコースで知り合った仲間と一緒に△△プロジェクトを立ち上げ、業界横断のネットワークも構築しています。
この経験とネットワークを活かし、今後はコンサルタントとして□□業界の経営課題解決に取り組み、貴社のマーケット拡大にも貢献したいと考えています。

プロジェクトマネジメント系の資格をアピールする

「プロジェクトマネジャーとしてキャリアアップを図りたいが、目指すポジションに対し、現時点ではプロジェクトマネジメントの経験が足りていない」といった場合、「PMP(Project Management Professional)」や、情報処理技術者試験の一つである「プロジェクトマネージャ試験」などをアピールしてもいいでしょう。

【例文】

プロジェクトマネジメントのスキルを極めていきたいと考えています。これまでは金融機関向けシステムの開発プロジェクトでプロジェクトマネジャーを務めてきました。案件ごとに「納期までのスケジュールが厳しい」「コストが限られている」「少人数で回さなければならない」などの課題がありましたが、PMP資格の学習で学んだ知識を活用して実践することで解決してきました。
今後も「理論」「実践」の両軸で取り組み、より大規模なプロジェクトを手がけたいと考えています。

TOEICをアピールする

英語力が求められるポジションにおいては、「ビジネスシーンでどのように英語を使ってきたか」が重視され、TOEICスコアは不問とされるケースも多数あります。しかし、外資系企業がメンバークラスを採用する場合、「入社時点では高い英語力を求めないが、今後リーダー、マネジャーへの昇格までに英語力を磨いてほしい」といったケースはよくあります。

現時点ではビジネス英語の使用経験はなくても、「外資系企業に転職したい」あるいは「いずれグローバルビジネスに関わりたい」という場合、英語力を磨いていく意欲と行動をアピールする一貫としてTOEICスコアを挙げてもいいでしょう。

【例文】

これまでビジネスで英語を使った経験はありませんが、英語の学習に取り組んでおり、TOEICスコアは現時点で700点です。現在も毎日30分間のオンライン英会話レッスンを続けており、日常会話はできるレベルです。ビジネスのディスカッションや交渉ができるレベルを目指し、今後も英語力を磨いてまいります。

自己PRで採用担当者が確認していること

採用担当者が、履歴書や職務経歴書の自己PRを読んで確認しているポイントは次のとおりです。

  • 職務経歴だけでは掴めない、その人の強み(スキル・実績・取り組み姿勢)など
  • その強みを活かし、自社でどのように活躍・貢献してくれそうか

このポイントを踏まえ、自己PR欄で「資格」をアピールする場合も、「実務でどのように活かし、応募企業に貢献できるか」が伝わるように記載しましょう。

自己PR文を作成する際には、このポイントを意識してみてください。自己PR内容が興味を持たれれば、「よりくわしい話を聞いてみたい」と、面接に招かれる確率が高まります。

自己PR文の作り方のコツ

履歴書や職務経歴書に自己PRを記載する際は、以下の構成を意識して文章を作成しましょう。

【1】書き出し

書き出しには、強み、経験領域、こだわりなどを記載します。

【2】【1】を裏付けるエピソード

最初の一文で打ち出したアピールポイントについて、これまでの経験の中でどう発揮されてきたのかを読み手がイメージできるよう、具体的なエピソードを記します。
開示できる範囲内で数字や固有名詞なども盛り込むと、手がけてきた仕事の規模感やイメージが伝わりやすくなります。
ただし、長文をダラダラと書くと要点が掴みにくくなります。200~400文字程度にまとめてください。

【3】成果

【1】の強みが発揮され、【2】のプロセスを経て、成果が挙がったことがあれば記載します。
数字や周囲からの評価などを交えると、成果の規模や影響力が客観的に伝わります。

【4】締め

応募企業で働くことへの意欲が伝わるような言葉で締めくくりましょう。
入社後にどのような活躍・貢献がしたいかという意思表示をすることで、採用担当者の期待が高まります。

自己PR文を作成する際の注意点

「資格」に限らず、職務経歴書の自己PR欄で自身の強みをアピールする際の注意点をお伝えします。
自己PR文を作成する際、内容や表現が不適切だと、アピールポイントが伝わらないばかりか、マイナス印象を与えてしまうこともあります。
自己PR文の作成にあたり、以下のポイントに注意してください。

企業が求める人物像にマッチしていない

自身では「強み」と認識しているアピールポイントも、応募企業がそれを求めていなければ、自己PRの効果は望めません。企業のホームページや採用情報などを読み込み、その企業ではどのような人材が活躍しているのか、どのような人材を求めているのかを掴みましょう。
その上で、企業が求める要素と自身の強みが一致しているポイントをピックアップし、アピールすると良いでしょう。

具体性に欠け、人柄がイメージしにくい

曖昧で抽象的な表現は避けましょう。例えば「コミュニケーション力に自信があります」だけでは、日頃の業務でコミュニケーション力がどのように発揮されているのかが伝わりません。
「どのような相手と」「どのような場面で」「どのようなスタイルで」「どのようなことを心がけて」など、スキルの要素を細かく分解し、具体的なエピソードを交えて記載しましょう。そうすれば、読み手は入社後の活躍のイメージを描くことができます。

要点が絞られていない

アピールポイントが多すぎると、読み手の印象に残りにくくなります。文章が冗長になると、「要点をわかりやすく伝えられない人」と、マイナスに捉えられてしまうこともあります。
伝える強みは1つ、多くても3つ以内に絞りましょう。

専門用語が多く、分かりやすさに欠ける

異業界に応募する場合、これまでの業界の専門用語を多用しないように注意しましょう。
読み手は内容を理解できないばかりか、「配慮に欠けた人」とマイナスの印象を抱くかもしれません。
専門用語はなるべく使用せず、業界以外の人にも伝わるような一般的なワードに置き換えるか、括弧書きなどで説明を添えるといった工夫をしましょう。

【アドバイザー】

組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

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