自動車業界の2022年下半期の転職市場の求⼈・求職者の動きを、業界に精通した株式会社リクルートの人材領域で活躍するキャリアアドバイザーがレポートします。「2022年下半期の転職市場や業界トレンドを知りたい」「納得感のある転職活動のために、採用動向を知っておきたい」という方はぜひご一読ください。
自動車業界の2022年下半期転職市場の展望を一言でいうと
業界全体として、過去最大レベルの求人量。採用ポジションにも広がりが。
ソフト・デジタル分野の採用では、働き方の柔軟性への対応も今以上に求められる。
1.【自動車業界】業界・企業側の動き
ほぼ全ての企業で過去最大規模の採用をしており、中途採用は非常に活発です。また、一部の企業では部長級のポジションも採用しており、今までになかった上級の管理職での採用もされています。また、電子アーキテクチャ、電子部品系の希少な技術を持つ人材に関しては、経験年数を問わず専門職人材としてミドルシニア以上の採用事例も出始めているようです。
また、コネクテッド領域への注力と並行して、各社の電動化領域を昨年度以上に加速させる動きが強まっています。ヨーロッパに比べ対応が遅れているため、ひっ迫度は高く、今採用をしなければ間に合わないという温度感です。それに伴い、電気系の技術者のニーズが高まってきており、異業界からの転職も増えています。インバーターやコンバーターの経験があれば、多少経験年数が短くても採用されるケースがあるようです。回路設計周りの技術を持っていれば、家電や自動車以外の機械をやっていた方も転職が実現できているなど、成長分野への移動が起き始めています。
ITエンジニアについては引き続き募集はされており、Webもアプリもインフラ・通信のエンジニア全方位的に求人が出ています。また、エンジニアに限らず、事業企画やマーケティングなどの職種も求人が出ており、他業界と熾烈な獲得競争をしています。
引き続き第二新卒も採用しており、今年度もこのまま採用は全方位的に過熱していくでしょう。
2.【自動車業界】求職者側の動き
求職者は、そこまで自動車業界から出ていくような動きはなく、流動性が高い状態ではありません。異業界からの転職者は基本は技術開発系の方が多く、最近ではメーカー系からだけでなくIT系やインターネット業界系の企業からの入社も増えてきている印象です。技術がどれだけ重要かを分かってくれる会社に行きたい、前職では技術はそこまで大切にしてくれなかった、という方が、圧倒的な研究開発費を持つ自動車業界に魅力を感じています。
また、ソフトウェア系のエンジニアは、自動車業界に対して働き方の柔軟性を求める方も多く、そこがネックになるケースも多いようです。例えば、他社だと当たり前にできているリモートワークが、なかなかできないというところもあり、それだけで候補から外れてしまうこともあります。もちろん、工場を持ち現場の重要度が高いという特性はあるとしても、エンジニアの採用・活躍のためには一定水準の柔軟性は求められるでしょう。変われるのか変われないのか、ソフトウェアエンジニア採用に力を入れ始めて数年経ちますが、対応しきれている企業は多くない印象です。
<自動車業界の転職動向>
出所:リクルート『リクルートエージェント』転職決定者数の分析
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戸田洋子
新卒で自動車メーカーの人事を経験。その後、リクルートキャリア(現リクルート)に入社し、マーケティング・経営企画、製造業の技術領域のキャリアアドバイザーを経て、現在は自動車業界を中心とした技術専門領域のコンサルタントに従事。