ビジネス用語にはさまざまなカタカナ言葉がありますが、「ペンディング」もその一つ。「耳慣れている」という方も多いとは思いますが、配慮しながら使わないと相手に誤解を与えたり、業務に支障が出たりするケースもあるので注意が必要です。ペンディングの本来の意味や、ビジネスで使われる理由、類義語、使用上の注意点などについて解説します。
「ペンディング」とは
まず「ペンディング」の意味と、ビジネスシーンで良く使われる理由について解説します。
ペンディングとは「保留」「先送り」の意味
「ペンディング」の由来は英語の「pending」。本来は「未決定の」「宙ぶらりんの」「係争中の」といった意味ですが、ビジネスで使う用語としては「決断や意思決定を先送りにする」「問題を未解決のまま保留にする」という意味で使用します。
例えば「この案件の解決や決定を先送りにしたい」「○○という理由からこの場で決めることができない」「この件を一旦保留にしないと他のことが先に進まなくなる」といった場面でよく使われます。
ビジネスシーンで「ペンディング」が使われる理由
「ペンディング」は日本語の「先送りする」「保留する」という表現に置き換えることもできますが、ビジネスでは多くの場合、カタカナ英語のまま使用されています。なぜかというと、日本語の「先送り」や「保留」は表現がストレートすぎるため、「話し合いに前向きではない」「本気度が足りない」といったネガティブな印象を相手に与える可能性があるからです。そこで会議や商談の場では、表現を和らげ、停滞ではなく前進している印象を与えながら「保留」が伝えられるよう、あえて英語の「ペンディング」をそのまま使うことが多いようです。
「ペンディング」を使うシーンと使い方例
ビジネスで「ペンディング」が使われるシーンと使用例をお伝えします。
社内で使う場合の例
【チームでのミーティング】
「プロジェクトの進捗が大きく遅れているので、現時点で発表日はペンディングにせざるをえないだろうな」
「この件については一旦ペンディングとして、次の議題に移りましょう」
【仕事の進捗などに関する会話】
「○○社の案件は、まだペンディング中です」
「ペンディングになっていた件、早急に検討したいので打ち合わせをお願いできますか?」
「○○事業の立ち上げはペンディングになったそうです」
社外に対して使う場合の例
【取引先との打ち合わせ】
「この件は一旦ペンディングとさせてください。社に持ち帰り再検討のうえ、改めてご提案させていただきます」
「先日ペンディングとなっておりましたA案とB案につきまして、その後の進捗はいかがでしょうか」
ペンディングと「キャンセル」「リスケ」との違い
「ペンディング」と似ている言葉に「キャンセル」や「リスケ」がありますが、ビジネスではこれらを正しく使い分けないと、誤解や行き違いが起こる可能性があるので注意が必要です。それぞれの意味と使い分け方について確認しておきましょう。
「キャンセル」は「中止」の意味
「キャンセル」とは、売買などの契約や、約束していた予定などを「取り消す」「中止にする」こと。つまり保留ではなく、その件から手を引くこと、白紙に戻すことを意味します。例えば、予定していた商談が何かの理由で完全になくなった時は「この商談はキャンセルになりました」というのが正しい言い方です。「ペンディングになりました」という言い方をすると、「保留になっただけで、次がある」という誤解を招くので注意しましょう。
「リスケ」は「予定の組み直し」の意味
「リスケ」とは、「リ・スケジュール(reschedule)」を略した言葉。「予定・日程を延期する」「変更して再度組み直す」という意味です。延期するという意味ではペンディングと似ていますが、ペンディングが「いつまで」という明確な時期を決めていないのに対して、リスケの場合は、比較的すぐに再設定されるというニュアンスを含んでいます。従って「担当者が不在になったため、商談はリスケになりました」という場合は、速やかに他の日時に再設定する必要があります。
ビジネスで「ペンディング」を使う場合の注意点
「ペンディング」は、表現を和らげつつ「先送り」や「保留」を伝えられる便利な言葉ですが、ビジネスで使う際には注意も必要です。ビジネスシーンでペンディングを使う場合に、気をつけた方が良いことを知っておきましょう。
後に必ずフォローすることが前提
上述したように、ペンディングは保留を指す言葉で、中止を意味するものではありません。従って、後日必ず続きがあることが前提であり、ペンディングにした案件については、関係者に「その後どうなったか」を伝え、再開する必要があります。もしペンディングの状態から一向に進捗しないのであれば、一旦中止にするなりして、その旨を相手に伝えることが大切です。いつまでも宙ぶらりんにしておくことは避けましょう。
多用しすぎると業務が滞る
会議や打ち合わせでペンディングを多用すると、業務があっという間にペンディング事項であふれてしまいます。先送りや保留が多ければ業務が滞ってしまいますし、何をペンディングにしたか分からなくなる可能性があり、管理上望ましいことではありません。やむをえずペンディング事項が増えた場合、担当者が進捗を把握するのは当然ですが、チームのメンバー同士でも、どのような状態なのかを共有しておくことが大切です。
使用するのは必要な場合に限る
そもそも何かをペンディングにするのは、望ましい状態とは言えません。特に最近は時代の変化が激しく、ビジネスでもスピード感が重視されています。社内外を問わず、安易にペンディングを使うと「決断力がない」「問題に真剣に向き合っていない」という印象を相手に与えるだけでなく、みすみすビジネスチャンスを逃すことにもなりかねません。従って、その場での意思決定がどうしても難しい場合のみ、ペンディングを行使することをおすすめします。
ペンディング以外にも、ビジネスで使われる用語には今更聞きづらいものや、紛らわしいものがあります。以下の記事も参考にしてみてください。
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組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
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