メディアでもビジネスシーンでも耳にする「エビデンス」という言葉は、業界や使用シーンによってさまざまな意味を持ちます。業界・シーン別の意味や使われ方、類義語、例文などについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
「エビデンス」とは?英語での意味
「エビデンス」の英語表記は「evidence」で、意味は「証拠」「物証」「証言」などです。
提案・意見を述べる際に客観性を高めたり説得力を持たせたりするための根拠や、予測・推測をする際の検討・考察の材料となる情報などを指します。
「エビデンス」の類語
エビデンスとよく似た意味を持つ言葉として「ファクト」「ソース」「プルーフ」などがあります。
それぞれの意味と「エビデンス」との違いは以下のとおりです。
ファクト
「ファクト」とは、「実際に起こったこと」「事実」を意味します。
エビデンスは「事実を証明する」「証拠が存在している」という状況を表現する一方、ファクトは事実そのものを指します。ファクトがエビデンスになるケースもあります。やりとりの一例を挙げてみましょう。
「今回のプロジェクトの実現性が高いというのであれば、そのエビデンスを出してください」
「ファクトベースで今回のプロジェクトは進捗率で○%まで進められています。またエビデンスとしては、当社の過去のプロジェクト事例◯個を精査しましたが、進捗率○%まで進められたケースでは成功率は○%と非常に高い数値を示しています」
ソース
「ソース」とは、「情報源」「出典」を指す言葉です。
ソースだけがあっても、信頼性・正確性がなければエビデンスとしては使用できません。エビデンスは信頼性が重視されます。
プルーフ
「プルーフ」は、エビデンスと同様に「証拠」を指しますが、「より明確な証拠」「決定的な証拠」など、より強い意味合いとなります。
【分野別】「エビデンス」の活用シーン
「エビデンス」という言葉はさまざまな業界や分野で使用されており、独自の意味を持っています。
代表的なものをご紹介します。
一般的なビジネスシーン
一般的なビジネスシーンにおいては、根拠を示す際に、次のようなものがエビデンスと呼ばれます。
- 契約書
- 会議や打ち合わせの議事録
- メールなどでの記録
- 仕様書
- 裏付けとなるデータ・情報
医療分野
医療分野では、検査・治療法・薬などの有効性を示す医学的根拠を「エビデンス」と呼びます。
「エビデンスに基づいて治療方針を決定する」といったように使われます。
金融・不動産分野
金融・不動産分野では「証明するもの」を指します。
- 金融資産(預貯金・生命保険・株式など)
- 所得証明書(確定申告書など)
- 身分証明書
取引にあたっての審査で必要となる情報資料などがエビデンスに該当します。ローンを組む場合や賃貸物件の入居審査などで使用されます。
IT分野
IT分野では、発言内容や作業プロセスなどの記録を残すこと、あるいは記録そのものを指します。
エビデンスとなるものには、次のようなものがあります。
- メールやビジネスチャットなどでのやりとり
- 画面キャプチャ
- ログ
- データファイル
- スクリーンショット
政治・行政分野
政治・行政分野では、政策の立案や評価をするための根拠を指します。
内閣府では、政策の有効性を高め、国民の行政への信頼を確保するため、EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング)=証拠に基づく政策立案の推進を打ち出しています。
「エビデンス」の使い方と例文
ビジネスシーンの会話での「エビデンス」の使い方、例文をご紹介します。
エビデンスを残す
根拠となるものを「残す」方法として、「議事録を取り共有する」「メールやチャットなどのやりとりを残す」「スクリーンショットを取る」「文書化して契約書を取り交わす」などの方法があります。
「エビデンスを残すために、この会議のやりとりを録音しておきましょう」
「この項目を契約書に記載し、エビデンスを残しておきます」
エビデンスが弱い
証拠・根拠となる情報の信頼性・客観性が低かったり、量が少なかったりする状況を「エビデンスが弱い」と表現します。
「提案の根拠とされている事例が少なすぎて、エビデンスが弱いですね」
「このデータだけではエビデンスが弱いから、○○の調査も実施したほうがいいでしょう」
エビデンスを確認する
証拠・根拠となる情報を確認したり、その正確性・信頼性・客観性の程度を精査したりする場合に使います。
「○社とのコミュニケーションにおいて、どこで齟齬が生じたか、時系列で(やりとりの)エビデンスを確認するようにしてください」
「このデータのみでは信憑性が薄いので、他の資料からもエビデンスの確認を取りましょう」
エビデンスがある/ない
証拠・根拠の有無や、その確からしさ・信頼性・客観性の程度を指します。
「○○プロジェクトを推奨するエビデンスはありますか?」
「エビデンスがない情報では、判断材料として使えません」
「エビデンス」を残す方法
どのような仕事においても、「エビデンスを残す」ことで業務や交渉をスムーズに進めることができ、トラブルの回避にもつながります。次のような方法でエビデンスを確保しておくといいでしょう。
- メールなどのやりとりを残しておく
- スクリーンショットで保存する
- 行動履歴をシステムに入力する
- メモに残す
- 議事録を作成しておく
- データを収集・蓄積する
- 契約書などの書面に落とし込む
- 実験・調査・アンケートなどを行う
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組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
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