転職のメリット・デメリットとは?年収・企業規模・キャリアプランの観点から解説

転職 メリット

転職は大きな転機ともなり得るため、自身にとっての転職するメリット・デメリットを把握してから判断することが大切です。年収・人間関係・キャリア形成・企業規模・働き方などの観点から、転職のメリット・デメリットについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

転職するメリットとは

転職のメリットやデメリットは人によって異なります。まずは、転職することでどのようなメリットがあるのかを一例をご紹介します。

年収が増える可能性がある

現在よりも給与水準の高い企業に転職することで、年収が増える可能性があります。また、これまでの経験・スキルが認められたり、転職によって役職に就いたり、評価が上がったりすることで年収が上がることもあります。 

厚生労働省が2022年(令和4 年)に実施した「令和4年雇用動向調査結果の概況」(※1)によると、転職者の年収は前職よりも収入が「増加した」人は34.9%、「減少した」人は33.9%、「変わらない」人が29.1%と、転職で年収が増えた人は全体の3割以上となっています。

(※1)出典:厚生労働省ホームページ (https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/23-2/dl/gaikyou.pdf

新しい職場で人間関係が構築できる

転職によって職場環境が変わり、新たな人間関係を築くことができるかもしれません。前職の職場で人間関係に悩んでいた場合であれば、ストレスの解消や新たな上司や同僚との出会いによる仕事へのモチベーションにつながることも期待できるでしょう。

新しい経験・スキルが身に付くチャンスがある

前職では経験できなかった職種や希望していたポジションに、転職することで就くことができる可能性があります。新たな仕事を経験することで、さらなるスキルや知見が身に付くことや、将来のキャリア形成にもつながっていくでしょう。

ワーク・ライフ・バランスを高められる

残業や休日出勤などが多く、家族と過ごす時間や趣味などに費やす時間が取れなかったというような場合も、転職によってワーク・ライフ・バランスを高められる可能性があります。リモートワークやフレックスタイム制など、柔軟に働きやすい制度のある企業を選ぶことで、仕事とプライベートのバランスも取りやすくなるでしょう。

やりたいと望んでいた業界・職種・ポジションで働ける

やりたいと希望していた業界や職種・ポジションに就いて働ける可能性が得られることは、転職による大きなメリットと言えます。また、自身が携わりたいと望んでいた製品・サービスや事業に携わることができる企業で働けるようになることで、やりがいを持って仕事をすることができるでしょう。

社風や価値観が自分に合った会社で働ける

転職によって、個人の裁量権や仕事の進め方、社内の雰囲気など、社風や仕事に対する価値観などが自分に合っている企業で働くことは大切なメリットの一つと言えます。また、仕事の成果や取り組みなどの評価制度なども、自分に合っているか確認しておくことで納得して働くことができるでしょう。

転職するデメリットとは

転職することはメリットがある一方で、以下のようなデメリットもあります。転職後に後悔しないように、考慮しておくようにしましょう。

年収が減る可能性がある

転職によって年収が上がるケースもある一方で、年収が下がってしまうケースもあります。上記でも紹介した厚生労働省の「令和4年雇用動向調査結果の概況」によると、転職によって年収が「減少」した割合は33.9%となっています。 

例えば、未経験の業界・職種への転職で即戦力としての年収基準に達しない場合、企業によって給与基準が異なる場合 などです。 

年収が下がる可能性がある場合には、その転職に踏み切っても「転職して良かった」と思えるかどうかを判断のポイントにするといいかもしれません。 

退職金・企業年金が減ってしまう可能性がある 

企業によって制度の有無・内容は異なりますが、転職することで退職金や企業年金の受け取り金額が少なくなることがあります。退職金・企業年金は勤務年数に応じて算出されるケースが一般的なので、転職のタイミングなどを考慮することも大切です。また、退職時期によっては賞与が受け取れないといったこともありますので、確認しておくようにしましょう。 

新たな人間関係の構築をする必要となる

転職先の職場で新たな人間関係を築く際に、なかなか打ち解けて話せないなど、ストレスを感じてしまうこともあるでしょう。 

また、前職との仕事の進め方などが異なることで不安に感じることもあるようです。前職のやり方にこだわりすぎず、教えてくれる人の話を丁寧に聞き、積極的に仕事に覚えて取り組む姿勢をアピールしていくようにしましょう。 

転職先の企業タイプで変わるメリット・デメリット

転職のメリット・デメリットは、転職先の企業規模や業界・職種などでも変わってきます。企業によっても異なりますが、どのような違いがあるのか、主な特徴の一例をご紹介します。 

企業規模が変わる場合 

まずは、「大手企業」「中小企業」「ベンチャー」「スタートアップ企業」といった企業規模別に主なメリット・デメリットをご紹介します。 

大企業に転職するメリット

大企業に転職するメリットは、福利厚生などの制度が充実しており、給与水準が高いことが一例として挙げられます。厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況」(※2)によると、大企業の給与が3,483,000円、中企業3,030,000円、小企業2,845,000円となっています。 

人材育成に注力している企業も多く、研修・セミナー制度が充実しているのもメリットの一つです。 

また、事業規模が大きく、ブランド力があるため、豊富な予算・人員規模で新たな事業や収益性の高い事業などに携わるチャンスも高いでしょう。取引先やパートナー企業ともスムーズな取り組みがしやすい面もあります。 

(※2)出典:厚生労働省ホームページ (https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/23-2/dl/gaikyou.pdf) 

大企業に転職するデメリット

デメリットとしては、社風や文化など企業体質が保守的であったり、社内の縦割り組織の複雑さから事業提案や稟議・承認などに時間がかかりがちであったりすることがあるが挙げられます。また、個人の裁量権が小さい、仕事の担当領域が狭い、提案や承認に時間がかかる、新たな経験やスキルアップがしにくい面もあるかもしれません。

中小企業に転職するメリット

中小企業は社員数が大企業に比べて少ないため、若手でも一人ひとりの裁量権や任される仕事の範囲も広い傾向が見られ、経験やスキルを積みやすい側面もあります。経営層との距離感も近いため、意見の交換や事業決裁のスピードも高く、業務を進めやすいでしょう。 

中小企業に転職するデメリット

大企業と比較すると、会社や所属部署の業績などが給与やボーナスに影響するなど、収入や将来性などが安定していない企業も見られます。福利厚生や教育研修制度なども整っていない企業も少なくありません。 

また、社員一人に求められる業務範囲が広い傾向があるため、専門性を身に付けることが難しかったり、資金面や人材不足などから新たな取り組みや、大規模な事業へのチャレンジには制限を感じたりすることもあるでしょう。 

ベンチャー・スタートアップに転職するメリット

ベンチャーやスタートアップ企業で働く大きなメリットの一つは、新規事業の立ち上げや新商品作りなど、新たな事柄に柔軟に携われることでしょう。自身のアイデア・提案を事業戦略に反映しやすく、裁量権を持って新たな事業に取り組みやすいことも大きな特徴です。 

また、少数精鋭で経営層・メンバーも意欲の高い若手が担っているケースも少なくありません。意思決定のスピードも早く、経営に関するノウハウなども学べる機会もあるでしょう。上場によって、ストックオプションなどが得られる可能性も期待できます。

ベンチャー・スタートアップに転職するデメリット 

従業員数が大企業と比べると少ないため、個人の裁量権が大きい一方で相応の責任も求められるため、その責任の重さを負担に感じることもあります。また、立ち上げた事業がまだ安定していない場合は、収入面や福利厚生などへの不満や将来性の不安を感じることもあるかもしれません。

業界・職種が変わる場合

これまでとは異なる業界や職種に転職する場合も、それぞれメリット・デメリットがあります。主には以下のようなことが挙げられます。 

転職で業界・職種が変わるメリット

転職でこれまでとは異なる業界の企業に転職するメリットは、希望する業界で働くことでやりがいも大きく、仕事へのモチベーションもアップすることが考えられます。 

これまでの業界と転職先の業界の経験をかけ合わせて新しいビジネスを生み出すことなどで、異業種・異業界の経験・スキルを身につけ、将来のキャリアの幅を広げることができます。転職先の業種・業界によっては、同職種のままで年収をアップすることも期待できるでしょう。

転職で業界・職種が変わるデメリット

デメリットとしては、業務に必要な知識を学び、スキルを身につける必要があることや、前職での仕事の進め方とは違うこともあるため、慣れるまでに時間がかかったり、ストレスを溜めてしまったりすることがあることです。

業界・職種が変わることで、これまでの経験や知識、やり方が通用しないことがあることなどを心得ながら、新たな職場環境・仕事に臨むようにしましょう。

転職を実現させるポイントとは

転職のメリットを活かし、デメリットを減らすために必要な準備やそのポイントを紹介します。

転職する目的を明確にする

転職を決意するときにまず明確にしたいのは、「転職によって何を実現したいのか」という目的です。転職する目的を明確にすることで、応募する企業を選ぶ条件も明確となり、転職活動も進めやすくなります。

「経験を活かした仕事がしたい」「年収を上げたい」「残業や休日出勤のないワーク・ライフ・バランスを充実させたい」など、転職で希望する条件(給与・労働時間・制度など)なども明確にしておきましょう。

転職する企業をリサーチする

転職後に仕事内容や社風が合わなかったなどのギャップを生まないためにも、応募する企業が、自分が転職する目的に合った企業なのかリサーチするようにしましょう。事業内容だけではなく、社風や働き方、社員インタビューなどもチェックすることをおすすめします。

キャリアの棚卸しを行う

キャリアの棚卸しとは、これまで身につけてきた自身の知識・経験・スキルを洗い出すことです。これまでの業務内容や自身の強み、仕事で生み出した成果など、応募先企業で活かせる経験・スキルを整理することで、応募企業を選ぶ際や選考で自身をアピールする際などに役立つでしょう。 

転職で実現したい将来キャリアのイメージをつける 

転職で実現したいメリットだけではなく、自身が将来目指したいと考えているキャリアのイメージも明確にしておきましょう。イメージすることで、転職の目的や条件に対しての優先順位もつけやすくなります。 

転職活動における注意点 

転職活動における注意点もご紹介します。これから転職活動を開始する際は、以下を意識しながら進めましょう。 

自身の状況に合わせて転職活動の進め方を決める

現職を続けながら転職活動を進める場合は、仕事の進捗状況や繁忙期などを考慮しながら、事前準備をするようにしましょう。 

転職先が決まるまでの期間は人それぞれのため、あくまでも目安となりますが、まずは自身の状況に合わせて、退職・転職時期などのスケジュールや進め方などを決めていくといいでしょう

希望条件の優先順位をつける 

給与・福利厚生、勤務時間・休日、仕事内容など、希望条件を挙げすぎてしまうと、応募先企業の選択肢が少なくなってしまいます。条件の優先順位を決めておくことと、自分に合うと感じたら条件を緩和することも念頭に置きながら、企業を探すようにしましょう。 

対応できる範囲で複数企業に応募する

転職先が決まるまで、希望する企業に一社ずつ応募する進め方は、条件の比較検討できるメリットがありますが、転職活動が長期化してしまう可能性もあります。早期に転職先を見つけたい場合は、自身の対応できる可能な範囲で複数企業に応募し、選考時期をそろえるようにしましょう。

転職エージェントやスカウトサービスを活用しよう

転職のメリット・デメリットを整理し自身が納得する転職を実現するためには、転職エージェントやスカウトサービスを活用することも有効です。 

転職エージェントは、書類作成や面接対策などの転職活動のサポートをしながら伴走してくれるケースもあるので、進め方に不安がある場合などは有効でしょう。また、スカウトサービスは、思ってもいない企業からスカウトが届くこともあり、自身の市場価値を知ることができる良い機会になるでしょう。 

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アドバイザー

粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。