人間関係を理由に転職したい。現職での対処法は?転職のポイントも紹介

職場の人間関係に悩み、「リセットするために転職したい」と考える人は少なくないでしょう。しかし、人間関係のみを理由に転職した結果、転職先でも同じ悩みを抱え続けたり、転職後に「人間関係以外の面でミスマッチがあった」ことに気づいて後悔したりする可能性もあります。組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタントの粟野友樹氏に、人間関係のみが理由で転職する際の問題点やよくあるパターンとその対処法などを伺いました。

人間関係のみを理由に転職することの問題点。うまくいかないパターン

人間関係のみを理由とした転職には、どのような問題があるのかを解説します。

人間関係のみが理由の転職で起きがちな問題

どのような場所にも相性の良い人だけでなく、合わない人もいるものであり、職場においても同様のことが言えます。人間関係のみを理由に転職した場合は、新しい職場でもまた同じ悩みを抱える可能性があるでしょう。

また、転職に対する目的を持たず、人間関係をリセットするために短期的なスパンで転職を繰り返してしまう例もあります。こうした場合、長期的な業務経験を積むことができないため、キャリアも短期的にリセットされ、今後のキャリア形成や自身の市場価値に悪影響を与えることになるので注意が必要です。

ただし、人間関係の悩みから身体的なストレス症状が出ている場合は、職場環境に問題がある可能性もあります。心身に異常を感じたら、人事担当者などに相談の上、休養をしっかり取り、その上で転職を検討することをお勧めします。

人間関係が原因で転職する場合のうまくいかない3つのパターン

人間関係を転職理由として転職活動を行った場合、以下のようなうまくいかないパターンが挙げられます。

転職先の職場でも人間関係に悩む

人間関係をうまく築くことができず、転職先で再度、人間関係に悩むパターンがあります。人間関係をリセットするための転職を繰り返し、キャリアや実績を築けずに収入もダウンしてしまうという悪循環に陥る方もいます。

深く考えないまま、転職先を決めて後悔する

現職から離れたい気持ちが強いことから、ほかの企業の社風や人間関係が魅力的に見え、しっかり検討することなく転職先を決めてしまうパターンです。働き方や待遇、キャリアプランなどを検討していないため、人間関係以外の面で不満が生じて転職したことを後悔する方もいます。

転職活動自体がうまくいかない

「今の職場を辞めたい」という点のみを理由・目的とし、転職活動がうまくいかないパターンです。転職先で何を実現したいのか、どのようなキャリアを築きたいのか明確でないため、面接選考で具体的に語ることができません。志望理由や背景に説得力がないことから、なかなか採用につながらない方もいます。

人間関係のみを理由に転職する際は、このようにうまくいかないパターンがあるので、勢いや焦りのみで決断することはお勧めできません。まずは落ち着いて対処法を考えてみることが大切です。次のパートで役立つ対処法を紹介するので、参考にしてみましょう。

転職活動を始める前に、人間関係で悩んだらまず考えたいこと

現在の職場の人間関係の改善や、自身のストレスを軽減するための対処法をご紹介します。実行してみることで「現職のままでも続けていける」と思う可能性もあります。反対に「実行したが、やはり転職しないと解決しない」という結論に至れば、納得して転職活動に臨むことができるはずです。自身の考えを整理してから「転職するか、現職にとどまるか」を検討し、より良い選択につなげましょう。

客観的に状況を書き出して問題点を整理する

現在の状況について客観的に書き出すことで、自分の悩みの要因を整理することができます。職場の誰に対し、どのようなことについて悩んでいるのかを明確にし、人間関係における悩みのレベル感を把握することから始めてみると良いでしょう。そこから、自身の中でできることや解決行動を探して実行していきましょう。また、周囲にサポートや助けを求めることも大切です。以降で具体的な方法を紹介するので、できることを実行してみましょう。

身近な第三者に相談する

友人や家族、職場の同僚・上司・人事担当者など、第三者に悩みを相談してみましょう。客観的な意見を聞き、転職した方がいいのか、現職にとどまった方がいいのかを考えてみることが大切です。

ただし、パワハラ、セクハラなどを受けている場合は、迷うことなく人事担当者に相談し、迅速に対処してもらいましょう。
2020年6月に職場のパワハラ(セクハラ・マタハラも含む)を防止する規定が盛り込まれた改正労働施策総合推進法が施行され、2022年4月からは中小企業も義務化の対象となりました。社内にハラスメント相談窓口を設置することも義務付けられているので、人事に相談しにくい場合はそちらで対応してもらう方法もあります。

自身の考え方・接し方を変えてみる

仕事においては、相性が良い人のみと付き合えるわけではないので、価値観が合わない相手に対し、ストレスを感じてしまう方もいるでしょう。しかし、人間関係を構築するためには、相手の価値観に歩み寄ることも必要です。自身の考え方や接し方を変えてみることで関係性が変化する可能性もあるので、試してみるのも良いでしょう。また、難しい場合には「仕事で必要なこと以外では、かかわらない」など、割り切って接する方法もあります。

例えば「仕事は仕事」と考えて割り切り、目の前の仕事を遂行することだけに集中する方法もあります。また、プライベートの活動に注力し、仕事と関係ないさまざまな人と接すれば、気分を変えることができるでしょう。休日にはしっかり休むことを意識し、仕事のことを考えずにリフレッシュすることで、翌週からのパフォーマンスが上がる可能性もあります。

異動の希望を出す

転職しなくても、部署異動や所属チーム、担当プロジェクトを変えてもらう方法があります。悩みの要因となる人物と物理的に距離を置くことで、自身のストレスを軽減できたり、相手との関係性が改善したりする可能性もあります。上司や人事担当者に状況を相談することで、何らかの対処をしてくれる可能性があります。部署異動は難しいかもしれませんが、チームやプロジェクトの変更などについては、上司に相談すれば実現しやすいでしょう。

人間関係を理由に転職活動を行う場合の注意点

現職でできる対処法を実践しても改善されず「転職が必要」と考えた場合は、下記の注意点を把握しておくと良いでしょう。

人間関係の悩み以外で実現したい「転職の目的」を考える

転職の際は、人間関係のみではなく、それ以外のさまざまな面から「転職する目的」について考えてみることが非常に重要です。仕事内容、働き方、年収、ワークライフバランス、今後のキャリア形成などの面から、転職先で実現したいことを考えてみましょう。前向きな目的を軸に、自身のスキルや経験を活かせる企業・仕事を探すことで、よりマッチする企業が見つかりやすくなりますし、面接で語る内容にも説得力が生まれます。結果的に、採用選考の通過率を高めることにもつながるでしょう。

社風が合うかどうかをしっかり確認する

職種、年収、待遇、勤務地などの条件のみで転職先を選んだ場合、入社後の職場で人間関係の悩みを抱く可能性があります。応募企業の社風を調べ、自身に合うかどうかをきちんと確認することが大切です。企業のホームページや代表インタビューなどでミッション、バリュー、ビジョン、クレドを確認する、採用ページの社員インタビューを参考にする、実際に働いている社員に話を聞くなどして、社風や働き方を把握しておきましょう。また、面接の際には、人事担当者などに社風や社内コミュニケーションについて聞いてみるといいでしょう。
また、採用選考の前に人事担当者とのカジュアル面談を実施している企業もありますし、選考に進む中でオフィス見学や同年代の社員との面談などの希望に対応する企業もあります。働く社員のカラーや職場の雰囲気などを知るためにも活用してみることをお勧めします。

面接で転職理由を聞かれても「個人的な不満」は話さない

人間関係が転職理由であっても、面接では上司や同僚などに対する個人的な不満を話すことは避けた方が良いでしょう。個人的な感情が理由である場合「同じようなことが起きると、また転職してしまうのではないか?」と判断される可能性があります。より大きな視点で捉え、仕事のやりがいや働き方、キャリアの方向性などにつなげて語ると良いでしょう。以下の回答例を参考にしてみましょう。

転職理由の回答例
「過度な行動管理を行う社風にやりづらさを感じ、裁量権を与えてくれる自由な風土で活躍したいと考えた」
「評価基準に疑問を感じ、頑張った成果を正当に評価してもらえる企業で働きたいと考えた」
「組織の方針と自身の考え方にずれが生じ、価値観の合う企業に転職することで仕事にやりがいを感じることができると考えた」

人間関係を理由に転職を繰り返さないために

最後に、人間関係での転職を繰り返さないために役立つことをご紹介します。

「自身のキャリアは、自身で選ぶ」という意識を持つ

人間関係のみを理由に転職することは「人に影響されて自身のキャリアを選ぶこと」になります。上司や同僚、取引先の相手などが嫌だという理由で転職すれば、自身ではなく、他者によって今後のキャリアを決めることになってしまうので、非常にもったいないことと言えます。また、他者が理由で転職した場合、転職先の職場で何か問題が起きた際に「他者や職場環境に問題がある」と考えてしまい、転職を繰り返す可能性もあるのです。「自身のキャリアは自身で選ぶ」という意識を持った上で転職の決断を下すことで、より前向きにキャリアを築いていくことができるでしょう。

転職エージェントやスカウトサービスを利用する

転職先の社風や職場の雰囲気、働く社員のカラーなどを把握したくても「採用ページや面接のみでは、実際のところはわからない」と感じる方もいるでしょう。転職エージェントやスカウトサービスを活用することで、不安を解消することができます。転職エージェントでは、企業の社風や社員のカラーなども把握していることが多く、第三者目線で実態を教えてくれます。また、求職者の希望にマッチする企業を紹介するため、働き方などについても相談することができます。

転職後は積極的にコミュニケーションを

転職先で良好な人間関係を築くためには、自ら積極的にコミュニケーションすることが大切です。初期段階でどのような関係性を構築するかが重要ですが、前職までの接し方や仕事の進め方を改善し、より良い人間関係を構築できるチャンスとも言えます。転職先では早いタイミングである程度の成果を出すことが求められるため、前向きに積極性を持って協調していくことで、自身のパフォーマンス向上につなげることができるでしょう。

【アドバイザー】

組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

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記事掲載日:2021年3月10日 記事更新日:2022年6月23日