
2回目の転職を目指す場合、「転職回数が多いと思われ、不利になるのでは?」「再度の転職までの期間が短いと思われるかもしれない」などの不安を抱えるケースもあるでしょう。2回目の転職で不利になる可能性があるケースや重視されること、転職実現に役立つポイントや注意点などを、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。2回目の転職を実現した事例も紹介するので参考にしてみてください。
目次
2回目の転職を経験している人の割合
リクルートエージェントの調査「転職回数と採用実態の関係」(※1)によれば、20代で2回目の転職を経験している人は9.3%、3回以上の転職を経験している人は5.4%となっていました。全体の15%弱が2回以上の転職を経験していることがわかります。一方、30代は転職経験2回の人は14%、3回以上の人は18.8%で、全体の3割超が2回以上の転職を経験しています。20代、30代で2回以上の転職を実現している人は一定数いるため、2回目の転職が必ずしも不利になるとは言えないでしょう。
(※1)出典:リクルートエージェント「転職回数と採用実態の関係」(2025年1月)
https://www.r-agent.com/data/survey/times/
2回目の転職は難しいのか?不利になる可能性があるケースとは?
2回目の転職が不利になる可能性があるケースと不利にならない可能性があるケースの一例を解説します。
2回目の転職で不利になる可能性があるケースの一例
前職を短期間で離職し、2回目の転職も現職を短期間で離職することにつながるような場合は、定着性などに懸念を抱かれる可能性があります。例えば、中途採用で入社して1年目で転職し、在籍期間1年未満で再度の転職を目指す場合は、「同じ仕事、同じ職場で1年以上、継続して勤務することができないのは、何らかの要因があるのでは?」と不安視されるケースもあるようです。こうした場合は、説得力のある転職理由を伝えることが重要と言えるでしょう。
2回目の転職で不利にならないケースの一例
働き方が多様化している今の時代、転職によって、自身が望むキャリアの構築やライフスタイルの実現を目指す人も見られます。そのため、転職回数をあまり気にしない業界や企業もあります。
先に紹介したリクルートエージェントの調査(※1)では、企業の採用担当者に向けたアンケート「気になる転職回数の割合」の結果も公表しており、全体の37%が「転職回数は気にならない」と回答。また、「1回」は3.6%、「2回」は11.5%となっていました。
特に、人材の流動性が高い業界・企業の場合は、転職回数にかかわらず求職者の職務経験やスキルを重視し、募集要件にマッチしている人材を採用する可能性もあります。こうした場合は、転職回数にかかわらず、リーダーやマネジメントの経験、専門性の高いスキルなどが評価されて採用に至るケースも見られます。
ただし、一般的に企業は「中長期的に活躍貢献してほしい」と考える傾向があるので、短期間での転職や離職を経験している場合は、定着性をアピールすることも重要です。「転職によって実現したいこと=転職の目的」が明確であること、かつ、説得力を持って転職理由や志望動機を伝えることがポイントと言えるでしょう。
2回目の転職で重視されることとは?1回目の転職との違い
2回目の転職は、1回目の転職と比べてどのような違いがあるのでしょうか。企業が重視していることの一例を紹介します。
在籍期間はどのくらいか
一般的に、企業は入社後の定着性を選考時のポイントの一つとしています。そのため、1回目の転職よりも2回目の転職のタイミングのほうが、「前職と現職の企業にどのくらいの期間、在籍していたのか」をしっかりと確認する傾向が見られます。先にも述べた通り、短期間で転職を繰り返すことになる場合は、「長期的に活躍貢献できない可能性がある」と判断されるケースもあるため、そうした懸念を払拭することが重要になるでしょう。
転職理由・志望動機に一貫性があるか
1回目の転職の場合は、「新卒入社後に社会人として仕事を経験した結果、新たな気づきを得たり、価値観が変化したりすることで転職を目指す」というケースも少なくはないため、採用担当者も転職を目指す人の考え方を受け入れやすいと言えるかもしれません。
一方、2回目の転職の場合は、1社目とは異なる企業・仕事の経験を経た上で再度の転職を目指していることになるため、「なぜ転職したいのか」「転職によって何を実現したいのか」をより深く問われる可能性があります。
1回目の転職を経て2回目の転職に至った背景や考えにおいて、一貫性のある回答ができない場合は、「転職理由や転職の目的が明確でないため、入社しても再度、転職を繰り返す可能性がある」と懸念される可能性があります。転職理由や転職の目的において、一貫性のある回答ができるように考えを整理しておくことが必要と言えるでしょう。
どのような経験・スキルがあるか
転職回数にかかわらず、採用選考において経験・スキルは重視されることが多い指標の1つです。いわゆる第二新卒に分類される世代の場合は、ポテンシャル採用を行うケースもありますが、一般的に中途採用の場合は、即戦力としての経験・スキルを期待する傾向があります。
そのため、転職回数が多い場合でも、即戦力として期待できる経験・スキルがある場合は評価されやすいと言えるでしょう。2回目の転職の場合でも、企業が求めている人材像にマッチする経験・スキルをアピールすることが重要となります。
入社後のキャリアビジョンが明確になっているか
先にも述べた通り、一般的に企業は「長期的に活躍貢献してほしい」と考える傾向があります。そのため、入社後にどのようなキャリアを築いていきたいのかが明確になっていることも重要でしょう。
応募企業の事業内容やキャリアパスなどに合致しているキャリアビジョンをアピールすることができれば、入社後に長く在籍して活躍できる可能性を伝えられるかもしれません。
2回目の転職実現に役立つポイント
2回目の転職を実現するために役立てられるポイントの一例を紹介します。
転職理由・転職の目的を明確にする
なぜ転職をしたいと思ったのか、1回目の転職から2回目の転職に至った転職理由を明確にしましょう。1回目の転職で「どのような考え方で、どういった転職先を選んだのか」、2社目で働く中で「どのような経験を積んだ結果、どういった背景・理由から2回目の転職をしたいと考えたのか」を明確にすることが大事です。それらの経緯があった上で、「今回、2回目の転職をすることで何を実現したいのか」を明確に説明できるようにすることがポイントになるでしょう。
「転職理由・転職の目的」と「志望動機」に一貫性を持たせる
「転職理由」「転職の目的」に対し、なぜその企業・その職種を選んだのか、何を実現できると思ったのかを明確にすることも一つのポイントです。なぜこの企業、この求人に応募しようと思ったのかという「志望動機」との一貫性を持たせることで、説得力を高めることができるでしょう。2回目の転職の場合は、しっかりと企業研究を行い、自身の考え方や価値観に合致している点を示すことが重要と言えます。
入社後のキャリアビジョンを明確にする
「入社後にどのような成長・活躍がしたいか」「どういったキャリアを築いていきたいか」を問われた際に、明確な回答ができれば定着性をよりアピールしやすくなります。応募企業の仕事内容や仕事の進め方、キャリアパスなどを調べ、「入社1年後にどのようなことができるように成長したいか」「3年後にどういった活躍ができるようになりたいか」「5年後、10年後にどのようなキャリアを描きたいか」を整理しておくことをおすすめします。
2回目の転職で異業種・異職種への転職は可能?
株式会社リクルートの調査(※2)によれば、年代にかかわらず、異業種や異職種に転職する人は増えています。リクルートエージェントの転職者分析では、20代後半(25歳〜29歳)の場合は、「異業種×異職種」に転職した人は42.8%、「異業種×同職種」に転職した人は30.1%。30代前半(30歳〜34歳)の場合は、「異業種×異職種」に転職した人は35.7%、「異業種×同職種」に転職した人は33.9%、30代後半(35歳〜39歳)の場合は「異業種×異職種」に転職した人は31.4%、「異業種×同職種」に転職した人は35.6%となっていました。
20代後半から30代で異業種に転職した人は6〜7割にのぼっている上、40代以降についても6割程度は異業種に転職しているため、年齢にかかわらず異業種転職の実現は可能と言えるかもしれません。
(※2)出典:株式会社リクルート『「異業種×異職種」転職が全体のおよそ4割、過去最多に業種や職種を越えた「越境転職」が加速』(2023年11月)
https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/2023/1129_12773.html
2回目の転職を実現するための注意点
2回目の転職を実現するために注意したい点の一例を紹介します。
不本意な転職をしないためにも自己分析・企業研究の情報収集をしっかり行う
転職を繰り返さないためにも、転職理由や転職の目的などを明確にする自己分析をしっかりと行うことが大事です。また、情報収集や企業分析もしっかり行うことが必要と言えるでしょう。自身の転職理由や転職の目的をもとに、これまでの経験・スキルや希望条件にマッチする企業を探すことで、不本意な転職を繰り返さずに済むかもしれません。
転職理由でネガティブなことだけを伝えない
転職理由を聞かれた際、現職への不満を伝えるケースも見られますが、「不満が理由で転職をする場合、また不満を感じて転職する可能性がある」と懸念されることもあるようです。転職理由が現職への不満だった場合でも、「不満を解消するためにどのようなことを実現したいのか=転職の目的」を伝えることで、入社後、前向きに仕事に取り組む姿勢をイメージしてもらいやすくなるでしょう。
転職エージェントなどを活用し、客観的な視点を持つ
2回目の転職を実現した場合でも、入社後に「合わない」と感じて再度の転職を目指すケースが見られます。短期離職しないためには、客観性を持って「自身の今後の人生をどのようにしていきたいのか」を考えることが大事でしょう。その上で、「自身にどのような市場価値があるのか」「今後、どのような可能性があるのか」「転職活動でアピールできる強みは何か」を明らかにすることが重要になると言えます。
その際、転職エージェントを活用してキャリア相談をすれば、転職支援のプロの視点から客観的なアドバイスを受けることができるでしょう。また、スカウトサービスを活用すれば、自身の経験・スキルに興味を示す企業や転職エージェントからオファーを受けることもできるため、自身の市場価値を把握しやすくなるはずです。
2回目の転職を実現した事例
20代、30代で2回目の転職を実現した事例を紹介するので、参考にしてみてください。
2回目の転職で大手企業からベンチャーに転職した事例【20代後半の場合】
IT業界の大手企業・営業→IT業界のベンチャー企業・営業
外資系の企業に勤務していたAさんは、「ビジネスパーソンとしての幅を広げたい」と考えて2回目の転職を目指しました。現職では、社内の業務効率化が進み、生産性高く働ける環境ではありましたが、業務内容が細分化・最適化されていたため、「社外で通用するビジネスパーソンとして成長できず、自社のIT営業のキャリアのみで終わってしまうかもしれない」という危機感を抱いたことで転職を決意しました。
大手企業の営業としての経験が評価され、Aさんは成長途上のベンチャー企業への転職を実現。これまでの営業経験を活かしながら、営業の組織づくりやマネジメント、マーケティングや営業企画などの企画部門へも幅を広げやすいと感じたことが決め手となりました。年収はダウンしましたが、現段階では、「自身のビジネスパーソンとしての総合力を高め、将来のキャリアの選択肢を広げていける環境」を優先することに。
2回目の転職で中小企業から大手企業に転職した事例【30代前半の場合】
Web業界のITエンジニア→大手IT企業のITエンジニア
Web業界の中小企業でITエンジニアを務めていたBさんは、サブマネジャーとしてチームマネジメントもプロジェクトマネジメントも数多く経験してきました。経験・スキルの面で成長できる環境があったものの、労働時間が長く仕事中心の生活を送っていたため、「家族と過ごす時間を大事にしたい。ワーク・ライフ・バランスを改善できる環境で働きたい」と考えました。また、自身の役割や責任に対し、納得のいく年収を得られていなかったことも転職理由となりました。
ITスキルに加え、豊富なマネジメント経験が評価され、Bさんは労務管理が徹底されている大手IT企業への転職を実現。残業時間は大きく減少し、年収アップも果たすことができました。また、資格手当、休暇制度など福利厚生が充実していることや、大手企業ならではの大規模かつ認知度の高いプロダクトに携わるやりがいがあることも入社の決め手となりました。
2回目の転職実現を目指す志望動機の例文
2回目の転職実現を目指す場合の志望動機の例文を紹介します。
前職を1年で退職し、現職の在籍期間が1年未満の場合
組織規模の異なる2社でマネジメントを経験した強みを、中長期的な組織拡大で新たなステージに向かう御社(貴社)にて発揮したいと考え、志望いたしました。
前職ではベンチャー企業、現職では大手企業に勤務し、営業部門のマネジメントを経験しました。組織規模の異なる環境で経験を重ねるうち、組織拡大の過程において新たな施策を実行していくことに自分の強みがあると考えました。前職では1年強の在籍期間で、新規顧客の開拓に取り組むプロジェクトをリードし、担当組織の利益を前年比●%に向上させました。また、現職では営業メンバー60名のマネジメントを担当し、●期連続で目標達成をしております。
御社(貴社)が掲げる「今後●年間で●名の人員増」というビジョンにこれまでのマネジメントで得た経験を活かし、組織のスピーディーな成長に貢献したいと考えております。
前職から転職後、3年目で転職を目指す場合
セキュリティ分野で非常に高い支持を得ている御社(貴社)の●●というプロダクトに将来性と魅力を感じて志望いたしました。
現職のSIerに3年間勤務する中、▲業界と■業界を中心にセキュリティ分野のプロジェクトマネジメントを複数経験してきました。御社(貴社)のプロダクトや競合のプロダクトを顧客に導入した経験を通じ、御社(貴社)プロダクトの強みや導入にあたってのポイント、導入によって得られる成果などを顧客にリアルに伝えることができると考えております。
御社(貴社)に入社後は、知見を積み重ねてきた▲業界や■業界などのプロジェクトをリードし、今後の事業展開の幅を広げていくことに貢献したいと考えております。
粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。