転職に「目的」は必要?目的を明確化したほうが良い理由と具体的な方法を解説

転職 目的

転職の目的が曖昧なために、転職活動が順調に進まないということがあるようです。目的を明確にすると、転職に良い影響をもたらすことが期待できます。そこで、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が、転職の目的を明確にする方法や、明確化した転職の目的を転職活動で上手に活かす方法を解説します。

転職の目的を明確にする方法

まずは、転職の目的を明確にするための3つの方法について解説します。

転職で実現したいことは何か、考える

転職の目的を明確にするには、まず「転職で何を実現したいのか」を考えることが大切です。転職したい理由や、退職したい理由を自分の中で掘り下げて、自分が転職に何を求めているのか、転職によって何を得たいのかを整理してみましょう。それがあなたの「転職の目的」と言えるでしょう。
もし実現したいことが複数ある場合は、優先順位をつけておくのも方法です。「MUST(どうしても譲れない必須条件)」と「WANT(必須ではないが『あれば尚良い』条件)」に分類し、「MUST」に入ったものを優先して、目的として設定すると良いでしょう。

現職への不満や不安を掘り下げ、ポジティブに言い換えてみる

現職に対する不満や不安な点から、転職の目的を明らかにする方法もあります。例えば、「給与が少ない」「残業が多い」などといった不満を解消するために転職を選ぶ人もいることでしょう。それ自体は問題ないのですが、不満解消だけを目的にすると、その裏にある「仕事への前向きな思い」に気づかないまま転職先を決めてしまい、入社後にギャップを感じてしまう可能性も考えられます。

例えば、「給与が少ない」という不満の裏には、「努力や成果を正当に評価して欲しい」「もっと責任ある大きな仕事を任され昇給したい」などの思いがあるかもしれません。なぜ不満を感じるのか、その思いを深く掘り下げて、ポジティブに言い換えてみると良いでしょう。

それでも目的が明確にならない場合は?

上記の方法でも、目的が明確にならない場合、自己分析を行ってみるのは一つの方法です。
「モチベーショングラフ」を作成して、「自分はどのようなことに対してモチベーションが上がるのか」「どのような場面でやりがいや楽しさを感じるのか」を明確にして、それを転職の目的とする方法です。

モチベーショングラフの作成例

(※)作成:編集部

下記リンク先記事からダウンロードできる「自己分析シート」を利用するのも良いでしょう。

また、転職エージェントに登録してみるという選択肢もあります。キャリアアドバイザーのカウンセリングを通じて、転職の目的や希望条件などを整理しやすくなるでしょう。

転職の目的を明確にしたほうが良い理由

転職の目的を明確にする主なメリットを4つ、紹介します。

ミスマッチを防ぐことができる

転職の目的をもとに企業選びをすることで、自分に合った企業を絞り込みやすくなります。その結果、ミスマッチの可能性を低減できるでしょう。スカウトサービスや転職エージェントを利用する場合は、担当者に転職の目的を伝えることでよりスムーズに企業を紹介してもらうことができそうです。

応募書類や面接に活用できる

志望動機や自己PRに転職の目的を盛り込むことで、説得力を持たせることができるため、応募書類や面接など選考の場面で役立つと期待できるでしょう。また、企業側に応募者に対する理解を促す効果もあると考えられます。

複数の内定が出た際の判断材料にできる

複数の内定で迷ったとき「どちらのほうが転職の目的を達成できるか」という視点を持つことで、判断がより容易になるでしょう。最終的にどちらの企業に入社するかを判断する際に、転職の目的に立ち返ることで、より高いミスマッチ防止効果も期待できそうです。 

転職後の活躍やその後のキャリア形成に役立つ

応募者自身が「この目的を今回の転職で実現したい」という強い目的意識を持つことで、新しい仕事へのモチベーションが高まったり、新しい環境での学び直しや適応がしやすくなったりすることも挙げられるでしょう。特に管理職以上のポジションを募集する企業は、「早期に高いパフォーマンスを発揮して既存社員に刺激を与えて欲しい」「組織の核となるリーダーシップを発揮して欲しい」といった期待を抱いているケースが多いため、目的が明確なことが転職後の活躍に功を奏する可能性が高いでしょう。

転職の目的別「転職の軸」の考え方【企業選びや志望動機に役立つ】

転職の目的に沿った「転職の軸」を定めておくと、転職活動がよりスムーズに進めやすくなります。ここでは転職の目的別に軸を定めるコツを紹介します。

現職への不満解消が目的の場合

仕事内容や労働環境、給与・待遇、人間関係など、現職に抱いている不満や問題点を整理したうえで、その問題を解消する方向で“軸”を定めると良いでしょう。例えば、成果が評価されにくいことに対する不満解消が目的であれば、評価体制が整備され、成果が報酬に反映される制度が整っていることなどが、“軸”となるでしょう。

キャリアプラン実現が目的の場合 

思い描いているキャリアプランを明確にして、具体的な職種やポジションなどに落とし込むことで“軸”を定めてみましょう。例えば、現職からのキャリアアップを目的としているのであれば、より責任が重く、裁量権のあるポジションであることを“軸”とする、などが考えられます。

ライフステージの変化への対応が目的の場合

結婚、出産、育児、介護、家族の事情など、プライベートでのライフステージの変化に応じて、働き方を変えることが目的であれば、ワーク・ライフ・バランスが整えやすい環境があることを“軸”とすると良いでしょう。例えば、「育児を優先して働きたい」という目的がある場合は、「残業が少ない」「フレキシブルな労働環境」などが考えられます。

転職の目的を活かして志望動機を伝える方法と例文

転職の目的を活かして志望動機を伝える方法を解説します。目的に応じたポイントと、応募書類での例文を紹介しますので参考にしてみてください。

自分に合った環境でやりがいを持って働きたい場合

「今の環境は自分に合っていない」という不満ではなく、前向きな目的や実現したいことを伝えましょう。そして自身の思いだけでなく、応募企業にどのように貢献できそうか、具体的な根拠や理由とともに伝えると良いでしょう。

【自分に合った環境で働きたい場合の例文】

化学素材の法人営業として、既存顧客と信頼関係を構築し、着実に取引拡大につなげてきました。仕事自体にはやりがいを感じていましたが、ルートセールスがメインの会社であることから、自ら新たな顧客を開拓するなど、自社のさらなる業績拡大に貢献できるような働きがしたいと考えるようになりました。

貴社では、化学分野で新たな顧客を開拓し、市場拡大に貢献できる人材を求めていると伺っております。これまでの知識と信頼関係構築力などが大いに活かせると感じ、貴社において市場開拓と取引先拡大という責任ある役割に尽力したいと思い志望いたしました。

スキルアップ、キャリアアップしたい場合

「スキルアップ」や「キャリアアップ」という目的は、人によって方向性や定義が異なるため、転職することで、どのようなキャリアを築きたいのか、どのようなスキルを身につけたいのかを、具体的に伝えるようにしましょう。

【ワーク・ライフ・バランスを充実させたい場合の例文】

現在は総務課長を務めておりますが、人事や情報システム部門など、一通りのバックオフィス経験とマネジメント経験があります。これからも会社を支える基盤となる、バックオフィス領域でより高い視座を持ち、スキルアップしていきたいと考えています。自身の今後のキャリアと成長を考えると、貴社のように新たな成長フェーズに向けて多様なチャレンジができる環境で、より重い責任と裁量権を持って自分のスキルを磨いていきたいとの希望を持っております。

これまでのバックオフィス経験を活かしながら、管理部門全体を管掌できるようなマネジメント力を持つ人材へと成長したいと考え、貴社を志望いたしました。

ワーク・ライフ・バランスを充実させたい場合

家庭の事情などプライベートな事柄は原則伝える必要はありませんが、伝えておきたい事項がある場合は盛り込みましょう。例えば、育児や介護などが理由の場合、家族など周囲のサポート体制や緊急時のフォロー体制を整えていることを伝えれば、採用担当者の「業務に支障が出るのではないか」という不安の軽減が期待できるでしょう。

【ワーク・ライフ・バランスを充実させたい場合の例文】

技術力を活かして独自性のあるプロダクトを多数保有し、各領域で優れた人材が集っている貴社の成長性に魅力を感じております。そこで、現職のエンジニア経験を強みに、人事担当として貴社の新卒・中途採用に携わることで企業価値をさらに高めることに貢献し、将来的には事業・組織の成長を経営観点から実現する、戦略人事としての役割を果たしていきたいと考えております。

現職は長時間労働が常態化しており、ワーク・ライフ・バランスを整えることが難しい環境でした。貴社はフレキシブルな労働環境やサポートがあり、自分の時間を大切にしながら、仕事に全力を注ぐことができる環境が整えられていることに魅かれ志望いたしました。

転職の目的を達成するための、転職先の選び方

転職先を決める際には、本当にその企業で転職の目的を達成できるのかを確認することが大切です。入社先を選ぶ際の、確認のポイントを紹介します。

不満解消が目的の場合

不満解消が目的の場合は、労働条件や社風等、不満の原因となった点が本当に解消されるかチェックしましょう。加えて前述のように、「不満の裏側にあるポジティブな思い」を叶えられるかどうかを確認することも大切です。

もし「社風が合わないことが不満」であり、「実力本位で評価される社風の会社で活躍したい」との思いがある場合は、応募先がその思いに合致するのかどうかを、カジュアル面談の場や面接の雰囲気、職場見学などを通じて確認すると判断しやすくなるでしょう。

キャリアプラン実現が目的の場合

キャリアプランの実現が目的の場合は、社員の平均的なキャリアパスや、昇進例などを尋ねると良いでしょう。スキルアップを狙うのであれば、研修制度なども確認しておくことが大切です。

ライフステージの変化への対応が目的の場合

出産・子育てや介護など、ライフステージの変化に対応するための転職であれば、テレワークやフレックスタイム制の導入、休暇制度の確認などを確認しましょう。企業の求人ページや、面接の逆質問などの機会に確認できるほか、現場の社員との面談の場などで働き方の実態を把握することもできるでしょう。テレワークや休暇制度などについては、制度の有無だけでなく、利用状況を確認することも大切です。

スカウトサービスや転職エージェントの利用も有効

自分だけで「この会社に、転職の目的が叶えられる環境があるかどうか」を確認するのは難しい…と感じたら、スカウトサービスや転職エージェントを利用するのも方法です。
転職エージェントを利用している場合は、担当者に相談することで、応募先企業の詳しい情報を得たり、チェックポイントを教えてもらったりすると良いでしょう。給与額や労働条件など、選考の場では聞きにくいことについて、間に入って確認してもらったり、交渉のアドバイスをしてもらったりすることもできるでしょう。

スカウトサービスでは、自身の経験やスキルに関心を持った企業や転職エージェントからスカウトが届きます。レジュメを登録する際に、転職の目的や希望する条件なども記しておくと、それに沿ったスカウトが届く可能性を高められるでしょう。

リクルートダイレクトスカウトは、リクルートが運営する会員制転職スカウトサービスです。リクルートの求職活動支援サービス共通の『レジュメ』を作成すると、企業や転職エージェントからあなたに合うスカウトを受け取ることができます。レジュメは経験やスキル、希望条件に関する質問に答えるだけで簡単に作成可能です。一度登録してみてはいかがでしょうか。
アドバイザー

粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。