
転職エージェントの利用を開始する際には、担当者と「面談」を行うことが一般的です。しかし初めて利用する方の場合「何を聞かれるのだろう」「何を話せば良いのだろう」と、疑問や不安を感じることがあるかもしれません。そこで、転職エージェントが面談を行う目的や、面談に臨むにあたっての準備、面談の流れ、面談を最大活用するポイントなどについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目次
転職エージェントが面談をする目的
転職エージェントの役割は、求職者が希望するキャリアや転職を実現するために、さまざまなサポートを行うことです。そして、登録後の初回の面談は、そのために必要な「情報収集」「情報提供」「関係性の構築」などを行うことを目的としています。面談にかける時間は1時間程度が一般的です。
大まかな面談の流れとしては、自己紹介やサービス内容の紹介が行われた後、登録情報や履歴書などだけでは把握しきれない求職者の経歴や経験・スキル、キャリアプラン、転職の目的、転職先企業に求める条件、転職活動に関する困りごとなどについてのヒアリングが行われます。
次に、ヒアリングによって把握した「求職者の価値観」「転職で何を実現したいのか」という情報を元に、転職やキャリアに関する提案・アドバイス、具体的な求人の紹介などの情報提供が行われます。同時にこれらのやりとりを通じて相互理解を深め、転職活動を伴走していくための信頼関係を構築していきます。
転職エージェントと面談を行う方法
転職エージェントと面談を行う手段には次の3つがあります。
オンライン面談
オンライン会議ツールなどを使って面談を行う方法で、現在は多くの転職エージェントがこの方法を採用しています。履歴書・職務経歴書の受け渡しや、求人情報の紹介もメールなどで完結し、対面面談と同様のサポートを受けることができます。忙しい求職者にとっては、転職エージェントのオフィスまで出向く必要がなく、場所を選ばず面談に臨める点がメリットです。
電話面談
求職者がオンライン環境を準備できず、転職エージェントのオフィスに行くことも難しい場合は、電話で面談を行うこともあります。電話面談はオンライン以上に場所を選ばず、準備も最小限で済みますが、音声のみのコミュニケーションになるため、伝えたい思いや希望を事前にしっかりと整理し、言語化しておくことが必要です。
対面面談
転職エージェントのオフィスや指定された場所で、担当のキャリアアドバイザーと直接会って話す方法です。互いの表情や言葉のニュアンスが伝わりやすく、コミュニケーションが取りやすいのがメリットです。最近はオンラインで面談を行うケースが多く見られますが、転職エージェントによっては希望すれば対面面談を設定してもらえることもあります。
転職エージェントの面談までの流れと事前準備
転職エージェントに登録してから面談までの流れと、面談までに準備しておきたいことについて解説します。
登録から面談までの流れ
以下は転職エージェントと面談を行うまでの流れの一例です。ただし、転職エージェントによっても手順は異なるため、詳細は各社のホームページなどで確認しましょう。
- 転職エージェントに登録する
- 転職エージェントとの面談予約を行う
- 転職エージェントに履歴書や職務経歴書を送付する
- 面談の日時など詳細の連絡を受け取る
転職エージェントとの面談に望むにあたって、準備しておくと良いことを以下にご紹介します。
事前に履歴書や職務経歴書を送付する
転職活動を開始する際はまず、これまでの職務経歴(所属企業・所属部署・担当業務)をすべて書き出し、成果や実績、身につけたスキルなどを整理しましょう。それらを履歴書・職務経歴書に反映し、まとめた上で、可能な限り面談の前に転職エージェントへ送っておくことが望ましいでしょう。
そうすることで経歴を一から説明する時間を省き、自身の強みや今後のキャリアビジョンの深掘り、求人案件の検討のやりとりに時間を使うことができます。すでに作成している場合は、事前に送付したほうが良いか、どのような方法で送付すれば良いかを、転職エージェントの担当者に確認しましょう。
転職を検討するに至った経緯を整理する
転職を検討するに至った経緯がわかると、転職エージェントの担当者はより的確にアドバイスできるようになります。面談までに、退職を考えたきっかけや、これまでの経緯についてまとめておくとスムーズです。まだ転職するかどうか迷っている場合も、迷っている理由を伝えて担当者と対話することで、思考が整理され、キャリアの方向性が見えてくるかもしません。
仕事への思いや働き方の志向などを整理する
職務経歴や得意領域・分野のほか、「仕事において大切にしたいこと」「理想とする働き方」といった志向についても考えを整理しておくと良いでしょう。自身の志向や価値観を転職エージェントに理解してもらうことにより、単なるスキルマッチではなく、カルチャーがマッチする企業の紹介を受けられる可能性が高まります。
希望条件を整理する
転職にあたっての希望条件を明確にしておきます。その場で思いつくまま話すと、条件が膨れ上がってしまい、焦点がぼやけてしまうこともあります。今回の転職で何を実現したいのかという「軸」を定めた上で希望条件を挙げ、優先順位をつけておくと良いでしょう。条件項目については、下記を参考にしてください。
業界
職種・仕事内容
役職・ポジション
企業属性(大手/ベンチャーなど)
社風
年収
勤務地
勤務時間/働き方
入社希望時期
そのほか、転職エージェントに聞きたいことを整理する
面談で聞き忘れが生じないように、面談前に「興味がある業界・職種の転職市場動向」「年収相場」「自身と同様のキャリアの求職者の転職事例」「転職活動の進め方」など、転職エージェントに聞いておきたいことをピックアップしておきましょう。
面談当日の服装と持ち物
転職エージェントとの面談ではスーツを着用する必要はなく、オンライン・対面ともに、カジュアルな服装でもかまいません。もし、面接時の服装について担当者からのアドバイスを希望する場合は、実際の面接を想定した服装で臨んでも良いでしょう。
また、オンライン・電話・対面に関わらず、面談中に提供された情報やアドバイスを書き留めるための筆記用具やメモ帳を手元に置き、今後の予定を確認できるもの(スケジュール帳やスマートフォン)も用意しておくと安心です。
転職エージェントのオフィスなどへ面談に赴く場合は、当日に履歴書や職務経歴書を持参したり、求人や資料を渡されたりすることがあるため、A4サイズが入る鞄を持参すると便利です。
面談の一般的な流れと聞かれること
転職エージェントとの面談は、オンライン・電話・対面のいずれのスタイルであっても、一般的に次の流れで進みます。
自己紹介
まずは互いに自己紹介を行います。担当キャリアアドバイザーからは、これまでの支援実績や自身の経歴を説明されることもあります。求職者は、数ある転職支援サービスの中でも、なぜ転職エージェントを利用するに至ったのかを伝えておくと、キャリアアドバイザーも支援の要望を汲みやすくなるでしょう。また、サポートの流れについてなどで疑問や不安があれば、ここで質問しても良いでしょう。
経歴のヒアリング
自己紹介などでアイスブレイクを行った後、職務経歴の確認から始めるのが一般的です。キャリアアドバイザーから「これまでのキャリア」「成果・実績」「得意とする分野・スキル」などについてのヒアリングが行われます。
転職の目的や条件を確認
今後のキャリアビジョンを踏まえ、今回の転職の目的、転職先に求める条件、転職時期の希望などについての確認が行われます。
すでに転職活動を進めている場合は、その手段や進捗状況も伝えておきましょう。他の転職サービスを利用して選考が進んでいる求人の状況も共有しておけば、今後のスケジュール調整に反映してもらえるでしょう。
転職の方向性の提案
転職の目的や希望条件を踏まえ、転職エージェントから転職の方向性や選択肢が提案されるので、すり合わせを行っていきましょう。場合によっては、想定外の業界・企業の選択肢を提案されることもあれば、「今は転職するよりも現職にとどまるほうが良いのではないか」といったアドバイスを受けるケースもあります。
求人の紹介
転職活動を行う意思が固まったら、その場で求人の紹介を受けるケースもあります。面談のタイミングで希望に合う求人がない、あるいは紹介を受けた求人に興味を持てない場合は、後日改めて求人の紹介を受けることもできます。
紹介された求人を断る場合は、「どの部分が希望にそぐわないのか」「どの点に懸念を抱いたのか」などを伝えておくと良いでしょう。次回紹介される求人のマッチング精度が高まる可能性があります。
今後の転職活動の進め方についての案内
今後の転職活動の進め方、大まかなスケジュールなどの案内があります。このとき、連絡を取りやすい方法や時間帯などを伝えておくと、やりとりがスムーズになります。「この時期は多忙なので面接を入れられない」といった状況も共有しておくと良いでしょう。
転職エージェントの面談を活用するポイントと注意点
面談の時間を有意義に使うために、次のポイントを意識してください。
聞きたいことや不安を共有する
転職活動に臨む際には、さまざまな疑問や不安にかられるものです。どのようなことに疑問や不安を感じているかを伝えておくと、適切なフォローをしてもらいやすくなるでしょう。
できるだけ本音で正直に話す
転職を検討するに至った事情や、転職先の条件など、話しづらいこともあるかもしれません。しかし、転職エージェントにはできるだけ隠さず、話せる範囲で正直に話すことが大切です。複雑な事情などにも留意しながらサポートしてくれることが期待できます。
希望するサポートのスタイルを伝える
転職エージェントにどのようなサポートを期待するかを伝えておきましょう。例えば「希望条件にマッチする求人のみを紹介してほしい」「多様な選択肢を検討したいので、希望に合致する可能性がある求人を幅広く提案してほしい」といったように、求めるサポートのスタイルを共有しておくと、やりとりがスムーズになるでしょう。
転職活動の状況を伝える
転職エージェントとの面談では、他の転職エージェントや転職サイト、スカウトサービスなどの利用状況、応募企業や進んでいる選考など、転職活動全体の情報も伝えることをおすすめします。他サービス経由での転職状況も共有しておくことで、同一求人への応募を防げたり、転職活動の状況を整理できたりするからです。
なお、他の転職エージェントや転職サービスとの併用を続ける場合は、こまめに他サービスを経由して応募した企業の選考状況を共有すると良いでしょう。
経歴や年収などは事実を伝える
経歴や年収について見栄を張ったり、話を盛ったりすることは避け、正しい情報を伝えるようにしましょう。うそをついてしまうと、転職エージェントは適切なマッチングができないだけでなく、虚偽の経歴で求人に応募した場合、経歴詐称になってしまうので注意が必要です。
前職(現職)への不満に終始しない
転職理由を聞かれた際に、前職(現職)に対する愚痴や不満は最小限に抑えることをおすすめします。本音を伝えることも大切ですが、ネガティブな話に終始すると、「転職先でも同じことを繰り返すかもしれない」などのマイナスな印象を与えてしまう可能性があります。また、転職やキャリアに関する面談という本筋から外れ、面談時間を有効に使えなくなるかもしれません。未来を見据えた建設的なスタンスで臨みましょう。
無断キャンセルや連絡なしの遅刻はしない
転職エージェントに対して、マナー違反の対応をすることは避けましょう。面談を無断でキャンセルしたり、連絡もなしに遅刻をしたりするなど、ビジネスパーソンとして信用を損ねる行為をすれば「企業に推薦すべき人ではない」と判断されてしまう可能性があります。
転職エージェントとの面談に関するよくあるQ&A
転職エージェントとの面談に関して、よくある疑問にお答えします。
面談にお金はかかる?
転職エージェントは転職が成立した際に、企業側から成功報酬を受け取るビジネスモデルとなっています。そのため、求職者が転職エージェントのサービスを受ける場合は、面談から求人紹介、職務経歴書の添削や面接対策といった転職活動のサポートまで、すべて無料で利用できることが一般的です。
土日や業務時間外の面談もできる?
転職エージェントによって異なりますが、土日祝日や平日夜間も面談が可能なケースもあります。登録時に相談してみてください。
面談で言ってはいけないことはある?
基本的にはありません。他の転職エージェントともやりとりをしている、知人に誘われている企業も検討しているといったことは「言いづらい」と思う方もいるかもしれませんが、できる範囲で伝えたほうが、転職エージェントから適切な提案を受けやすくなります。
希望勤務地が現住所と離れている場合はどうする?
大手・総合型のエージェントは全国に拠点展開をしているため、遠隔地の求人情報も保有していることがほとんどです。UターンやIターンを検討する場合も、さまざまな地域の情報が得られるでしょう。面接をオンラインで受けられる、あるいは最終面接では現地に赴く交通費を支給してもらうなど、転職エージェントを通じて企業に確認や相談してもらうことも可能です。
転職するか迷っていても面談を受けて良い?
転職の意思が固まっていない状態でも、転職エージェントとの面談は可能です。面談の結果、転職エージェントから「今は転職しないほうが良い」とアドバイスすることもあります。相談することと転職することは必ずしも同じではありません。キャリアについて迷っていることを相談してみましょう。
面談後の流れはどうなる?
転職活動をすることを決意した場合、希望にマッチする求人の紹介を受け、応募するかどうかを検討します。応募先が決まったら、その企業が求める人材像などについて情報提供を受け、面接対策をサポートしてもらいましょう。面接日程の調整など、応募企業とのやりとりも転職エージェントがサポートできます。
スカウトサービスの利用も有効
転職エージェントと同時にスカウトサービスにも登録しておけば、自身で求人を探す時間を省くことができるだけでなく、経験・スキルに注目した企業や転職エージェントのスカウトにより、意外な求人やポジションに出会えることもあります。 転職エージェントからスカウトを受けた場合、サービスによっては、選考に進む前に担当者との面談を申し込むこともできるでしょう。ぜひ、スカウトサービスの活用もご検討ください。
粟野友樹(あわのともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。