メガバンク3行が大幅な人員削減・店舗数の削減を合わせて進めるなど、金融機関の苦戦が伝わってきます。人員削減に伴い、労働環境が変化していくことも考えられます。金融業界から転職を検討している場合、まずは情報収集から始めましょう。この記事では、金融機関出身の方の転職先や、転職先で求められているスキルをご紹介します。金融業界からの転職における注意点もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
金融業界の転職事情
金融業界から転職を考える方が増えています。金融機関の業績低迷や、ポスト消失、ワークライフバランスを重視する方が増えているという背景がありそうです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
転職希望者は増加傾向にある
金融機関から転職する方は増加傾向にあります。全国銀行協会の発表によると、職員数は2007年3月末から微増しています。しかし金融商品等を販売する資格「特別外務員」の登録数は約61.4%も減少しました。特に販売部門での人員整理が進んでいるようです。
全国銀行協会 職員数 |
281,989人 (125行ベース、2007年3月末) |
294,279人 (115行ベース、2019年3月末) |
日本証券業協会 特別外務員数 |
210,660人 (2006年12月末) |
81,321人 (2018年12月末) |
全国銀行協会 当期純利益 |
3兆3,980億円 (125行ベース、2007年3月末) |
2兆2,131億円 (115行ベース、2019年3月末) |
背景には金融機関の業績低迷がありそうです。この間、銀行全体の純利益は約34.9%下落しました。低金利が長期化し、貸出による利ざやが減ったことや少子高齢化など、構造的な理由が考えられるでしょう。
さらに、近年では業務にAI等のIT技術を活用しようとする動きがあります。FinTech企業の台頭もあり、競争力を維持するため、効率的な経営が課題となっています。人員整理の波は今後も続くことが予想されます。
参考URL:
一般社団法人 全国銀行協会
https://www.zenginkyo.or.jp/stats/year2-01/2006-terminal/
https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/abstract/stats/year2_01/cont_2018_terminal/stat0535.pdf
一番社団法人 日本証券業協会
https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/kaiinsu.html
銀行から転職 よくある転職理由
- 店舗数の減少に伴うポスト減少の懸念
- ワークライフバランスを重視したい
- 将来のために経験を増やしたい など
銀行は店舗の閉鎖を進めており、ゆうちょ銀行以外の銀行は、2000年から有人店舗数を約11.4%減少させました。当然「支店長」の数も減り、銀行員の出世先であるポストの減少を懸念する方がいます。そのため、銀行でのキャリアを懸念し転職を考える方は多いと言えるでしょう。
次に、ワークライフバランス重視の社会的潮流があります。一般的に、銀行員は激務といわれています。厚生労働省の「働き方・休み方改善ハンドブック」では、忙しい業種の例として「金融業(地方銀行業)」が挙げられました。転職を検討する銀行員は増えやすい傾向にあると言えます。
また、銀行では手に入らない経験を求めて転職される方もいます。銀行業務の中でより魅力的な業種や職種に触れ、「クライアント側の業務を経験したい」「自分が事業を進める側になりたい」などの理由からです。
どのような業界へ転職するのか
金融業界からは、どのような業界へ転職しているのでしょうか?それぞれ業界と求められるスキルについてお伝えします。
同業種(金融から金融)の場合
同じ金融業界への転職の場合、求められるのは即戦力となります。営業職や渉外職なら折衝力や営業成績、また審査部や融資部等なら財務諸表を読み解く力等が問われます。
これまで培ってきたスキルをそのまま活かせる点が同業種への転職ではメリットですが、厳しく見られる可能性については留意したいところです。また、証券アナリストやCFPなど、高位の金融系資格の保有も望ましいでしょう。
異業種(金融から異業界)の場合
金融から異業界への転職で、よくある業界の例
- コンサルティングファーム
- 監査法人
- 企業の管理部門
- 不動産業
- FinTech企業、IT企業 など
リクルートキャリアのレポート「2020年版転職市場の展望」によると、金融業界から異業種への転職は2019年上期(4-9月期)で約6割に達しました。特に「銀行・信託銀行・政府系金融機関」からでは約7割が非金融への転職でした。コンサルティング業界や監査法人では、金融業で得た財務知識やスキルが求められています。企業の管理部門においても同様でしょう。
不動産業は、ローン・借入れなど、やや金融業に近い業種でもあります。不動産に関する知見や宅建業資格などの保有によって、より一層価値を高めることができるでしょう。FinTech企業への転職など、IT業界への転職も考えられます。特に資金調達などの面で金融業界の知見を持つ人材が求められています。
職種で見ると、コンサルタント、経理財務、営業、ITエンジニアといった採用が多いと言えます。異業種への転職でも、金融業で培ったスキルや経験が期待されているようです。
金融からの転職を成功させるために
金融業界からの転職活動で、注意しておきたい5つのポイントをおさえましょう。
業種を絞りすぎない(業種に絞らず、自分のキャリアとの共通点を探す)こと
金融業界で培ったスキルや経験は、さまざまな業種で活かすことができます。「この業種では自分の経験を活かせない」という先入観を持つ前に、まずはこれまでのキャリアとの共通点を探してみる方が、発展性のある転職先を見つけることにつながるでしょう。
仕事の進め方や社風について確認すること
金融業界は「社の方針に従い、ノルマや業務をこなす」など、トップダウンが強い傾向にあります。転職先の企業が、同じ社風を持つわけではないという点は注意しましょう。
企業によって、「自ら提案し実行する力」や「スピード」を重視する社風の企業もあります。仮に「課せられた目標は100%以上に上げられるが、新しい提案を自ら考えて行うのは苦手」という方が、「どんどん提案してほしい」という企業に入社した場合、得意が合わず、評価を得にくいことがあります。これまで1社で長く働いてきた方は、本人が自覚している以上に、「これまでのやり方」が染みついていることが多いものです。業種や待遇面以外に、仕事の進め方が合いそうか、しっかり確認するようにしましょう。
年収が下がる可能性を気にしすぎないこと
金融業界はもともと年収が高い傾向にあります。年収面を重視し過ぎると本質的な意味での転職の妨げになってしまうかもしれません。
何をもって転職成功とするかを考えると、年収以外の要素も大きいもの。業界・事業の将来性や自分のキャリアビジョン、またワークライフバランスも大切な要素になってくるでしょう。年収だけにこだわらず、総合的に判断するようにしましょう。
家族の理解を得ること
転職は大きな決断です。金融業は一般的に年収が高い傾向にあり、「就職したら生涯安泰」といったイメージもまだ少なからず残っています。そのため、自分のみならず家族にとっても重要なイベントとなるでしょう。家族の理解がないと思わぬ不和を招きかねません。
家族に知らせなくても転職活動自体は進められますが、内定が出てからの相談では遅いでしょう。できるだけ事前に家族の理解を得ることをおすすめします。
転職エージェントを利用すること
転職エージェントは、中途採用を行う企業と求職者を仲介する存在です。金融業界からの転職は、転職エージェントの利用をおすすめします。転職エージェントは転職に関するノウハウを蓄積しています。企業ホームページなどではわかりにくい社風や待遇面、キャリア等に関する知識を提供してくれるため、転職活動のサポートになるでしょう。
また、転職エージェントは独自の非公開案件を持つ場合が多く、独力で求人案件を探すより有利な案件に触れられるかもしれません。
まとめ
金融業界から転職する場合、同業界への転職はもちろんですが、異業種への転職の場合も金融業界で得た経験や知識が役立つ場面が多くあります。
転職先を検討する際には、「次の転職先で一番叶えたいことは何か?」を整理して、幅広く企業を見てみることをおすすめします。事業・キャリアの展望が描けそうか、ご自身の強みを発揮できそうか…年収にこだわりすぎると今の会社から動けなくなってしまうこともあるため、総合的に判断しましょう。
転職は重要な決断です。家族や転職エージェントに相談しながら、慎重に判断することをおすすめします。