転職回数は選考に影響する?経験社数が多い場合の転職活動のポイント

応募者の転職回数は、選考にどの程度影響するのでしょうか。この記事ではアンケート調査の結果などをもとに、転職回数が選考に与える影響や、転職回数が多い場合の転職活動のポイントなどについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

データで見る年代別の転職回数の傾向

株式会社リクルートが実施した正社員として働く全国のビジネスパーソン18,022名へのアンケート調査によると(※1)、20代で「転職したことはない」と回答した人は62.3%ですが、30代になると転職未経験者は44.5%に減少し、半数以上の人が転職を経験していることがわかります。また、転職回数は年代を追うごとに増加し、50代では3回以上の転職をしている人が約4割を占めています。

年代別の転職回数

(※1)出典:株式会社リクルート「転職回数と採用実態の関係」 
https://www.r-agent.com/data/survey/times/

転職回数は選考に影響する?

上記の調査結果でもわかるように、ビジネスパーソンが複数回の転職を経験することは決して珍しくはありません。業界や職種によっては、採用する企業側も求職者の転職回数を以前よりも重要視しないことがあり、筆者が支援した企業だと、特にIT業界やWeb業界など比較的新しい領域の企業や、成長中で中途採用を積極的に行っている企業、外資系企業などでは転職回数よりも経験・スキルを重視した選考が行われているようです。 

リクルートワークス研究所のレポート「なぜ転職したいのに転職しないのか」(※2)によると、過去の転職回数の多寡によって、転職活動者の転職確率が変わるかを調査した結果、男女の正規雇用者ともに転職回数が多い人ほど1年以内に転職する可能性が高いという結果になりました。「つまり、転職回数が多くても転職の妨げになっていないと言えるだろう」と、同調査から読み取ることができます。 

労働力人口が減少し、多くの企業が人手不足に課題感を覚えている昨今、転職回数だけで不採用となるケースは少ないと言えるでしょう。 でも、Bのケースは直近5年間で3回の転職をしています。採用担当者から「なぜ直近で転職を繰り返しているのだろう」「入社後すぐに離職するのでは」といった懸念を抱かれてしまうことも少なくありません。

ただし、トータルの転職回数よりも「直近の転職頻度・在籍期間」を重視されることはあります。例えば、同じ「社会人歴15年・転職回数4回」でも、下記の2つのケースでは、採用担当者の受け取り方は大きく変わる可能性があります。 

A:直近の5年間は1社に勤めている場合
B:直近の5年間で3社に勤めている場合

トータルの転職回数が同じでも、Bのケースは直近5年間で3回の転職をしています。この場合、採用担当者から「なぜ直近で転職を繰り返しているのだろう」「入社後すぐに離職するのでは」といった懸念を抱かれてしまうことがあるようです。 

(※2)出典:リクルートワークス研究所「なぜ転職したいのに転職しないのか」 (2023年10月)
https://www.works-i.com/research/report/item/tenshoku.pdf

転職回数が多くても重要視されないケース

複数回の転職経験があっても、以下のケースに当てはまる場合は、採用選考の際に重要視されにくいようです。

キャリアに一貫性がある

さまざまな業界や企業での転職を重ねている場合でも、例えば「経理職でキャリアを築いている」「営業職で多様な経験を積んでいる」などキャリアに一貫性が見られれば、入社後の活躍を採用担当者がイメージしやすくなります。 

キャリアビジョンが明確

転職のたびに業界や職種が変わっていて、一見キャリアに一貫性がないように見えても、例えば「◯年後には新規事業の立ち上げに関わっていたい」など、転職の背景に明確なキャリアビジョンがあれば、「キャリア構築のための転職だったのか」と採用担当者が納得するケースがあります。

専門性の高い経験・スキルを持っている

例えば、「さまざまな業界でのマネジメント経験が豊富」「AIの分野で高いスキルを持っている」など、専門性の高い分野で培ってきた経験・スキルは一定のニーズがあるため、転職回数が多くても採用されやすい傾向があります。

転職回数が多いと思われるおおよその目安

冒頭で紹介した「年代別転職回数の割合」を見ると、20代の転職回数は0回が62.3%、1回が23.0%です。すなわち、転職回数が1回までの人が8割以上を占めています。 

30代では転職回数が0回~2回、40代・50代の場合は0~3回までの人がそれぞれ約8割を占めていることがわかります。 

これらはあくまでも目安ですが、自身の転職回数と照らし合わせて参考にしてみてください。 

長く働くことができる会社を見つける方法

長期就業を望んでいるが在籍してきた企業が自分に合わず、転職を繰り返してきたという方は、「次こそは自分に合う職場を見つけたい」と考えているのではないでしょうか。自分に合う職場を見極める方法として、主に以下の2つの方法が挙げられます。 

風土・カルチャーに注目して企業研究をする

経験・スキルはマッチしていても、企業風土やカルチャーが合っていないと居心地の悪さを感じ、早期離職につながることがあるようです。 

企業風土やカルチャーになじめるかどうかを見極めるためには、次のようなポイントに注目して企業研究を行いましょう。 

  • 企業が掲げる「理念」「パーパス」「ミッション・ビジョン・バリュー」 
  • 社員同士のコミュニケーションのスタイル 
  • 仕事の進め方(個人での活動中心・チームワーク、スピード重視・慎重に計画を練るなど) 
  • 人事評価の基準 

これらの多くは、企業のホームページや採用情報ページで確認できます。企業や経営者のSNS、インタビュー記事などもチェックしてみるといいでしょう。 

選考過程で、「一緒に働くメンバー」と話をさせてもらう 

興味を持った企業に応募して選考に進んだら、先輩社員と話をさせてもらえるように交渉するのも一つの手です。最近は「カジュアル面談」を取り入れている企業もあるため、応じてもらえる可能性は高いと思われます。 

そして内定の方向へ話が進んだら、より働くイメージを深めるために、現場で働くメンバーとの面談のセッティングを依頼すると、自分に合う職場かどうかの判断がつきやすくなるでしょう。 

転職回数が多い場合の職務経歴書の書き方のコツ

「転職回数について企業から不安を抱かれるのではないか」と不安を感じている場合は、職務経歴書では次のような工夫やアピールすることも有効です。 

職務経歴は時系列ではなく「キャリア式」でまとめる

職務経歴書は履歴書と違い、時系列で職歴・経歴を書く必要はありません。転職回数が多く、書く内容が多い場合は、時系列で企業ごとに経歴を並べる「編年体」よりも、職種・業務・プロジェクトごとに書く「キャリア式」の職務経歴書のほうが、応募先企業にアピールできる経験・スキル・実績を整理して伝えることができます。核となる強みをアピールしやすく、転職理由や転職回数が多いことの背景なども伝わりやすくなるでしょう。

目的意識を持ち、転職でスキルを磨いてきたことアピールする 

明確な目的や目標を持って転職したのであれば、転職回数が多くても納得を得やすいでしょう。そして転職先で目的を達成し、ステップアップを果たしていれば、むしろプラスに評価されることもあります。 

職務経歴書でアピールする際には、転職回数を重ね経験・スキル、実績を積んできたこと、そしてそれらが応募先企業にマッチし、入社後に貢献できるということを、志望動機欄などで伝えるといいでしょう。 

今後のキャリアビジョン(キャリアプラン)を伝える

転職回数が多い場合、企業が懸念するのは主に「定着性」です。「せっかく採用しても、またすぐ辞めてしまうのでは」という不安感は、どうしても抱かれやすくなります。 

それを払拭するために、応募先企業で実現できそうな自身のキャリアビジョンを伝えるといいでしょう。これまでの転職経験を踏まえ「応募先企業で何を目指したいのか」を明確に伝えると、「当社で腰を据えて頑張ってくれそうだ」との印象を持ってもらいやすくなるでしょう。 

面接で転職回数の多さを問われた場合の回答例

転職回数が多いケースでは、その理由を問われることもあります。回答例をご紹介しますので、面接の際の参考にしてみてください。

回答例(キャリアの一貫性を伝えるケース)

公認会計士として監査法人での監査業務、大手事業会社の経理財務、スタートアップ企業の経理財務および事業企画、別業種のスタートアップ企業の経営企画を経験してきました。さまざまな企業規模や業界で、監査・アドバイザリー・経理財務だけではなく、事業企画・経営企画といったビジネスサイドを成長させる経験をしてきたのは、スタートアップ企業で、経理財務面だけではなくビジネスサイドの知見も持ったCFOを目指しているからです。 

解説

経理財務、事業企画、経営企画などでの転職を重ねてきた理由に、スタートアップ企業のCFOを目指すという「キャリア形成の一貫性」を感じ取ることができます。 

全て自責にする必要はありませんが、あまりにも他責要素が多い発言をしてしまうと、「会社や他人への不平不満が多い」「少しでもいやになると辞めるような短絡的な性格」と思われ、「今回も同様にすぐ辞めるだろうな」という印象を与えてしまう可能性があるため注意しましょう。 

転職回数が多くても転職を実現させた事例を紹介

転職回数が多くても、アピール方法などを工夫して希望に合った転職を実現したケースをご紹介します。

事例1:豊富な経験と一貫性をアピールし、コンサルティングファームに転職

Web系企業の財務部マネジャーを務めているAさんは、30代半ばで転職回数は5回に上り、これまでに務めたのは監査法人やコンサルティングファーム、事業会社など業界がバラバラでした。ただ、「40代で経営層として活躍したい」という明確な目標があり、そのために経理・財務領域における自身の専門性を深めたい、そしてさまざまな業界・領域での経験値を上げたいとの思いでキャリアを歩んできました。

そして、さらに経理・財務領域の経験を積むために、コンサルティングファームへの転職を目指し、6回目の転職活動に挑戦。経理・財務における専門性の高さ、コンサルティングファームと事業会社双方の経験を持っていることをアピールするとともに、キャリアビジョンをもとに一貫性を持って転職してきたことを説明。希望通り、財務・会計系コンサルティングファームへの転職が決まり、現在はヴァイスプレジデントとして活躍しています。

事例2:さまざまな環境で営業スキルを磨いてきたことを伝え、外資系企業のマネジャーに

40代前半で転職回数7回のBさん。ベンチャーから大手、外資とさまざまな環境で一貫して営業としてのキャリアを積んできました。20代のときに、勤務先の倒産や事業縮小、買収されたことによる転籍というやむを得ない理由で3回の転職を余儀なくされ、30代以降はより高い年収を目指してステップアップ転職を重ねてきました。

今回の転職活動では、営業のプロとしての実績、営業力の高さを表彰歴や達成率、売上数字などの数字で示すとともに、論理的思考力やプレゼンテーション力、交渉力などの高さもアピール。面接では、キャリアに一貫性があることを改めて伝えるとともに、「どのような商品・サービスでも、どうすれば顧客に納得して買ってもらうかを考え、実践するのが得意」という自身の強み・持ち味もアピールし、転職回数の不安を払拭。外資系IT企業に営業マネジャーとして入社を決めました。

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アドバイザー

粟野友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。