
同じように転職活動を行っているのにも関わらず、志望する企業にすんなり転職できる人もいれば、長期にわたり転職先が決まらず焦ってしまう人もいます。転職活動がうまくいかない人には、どのような共通点があるのでしょうか。転職先が決まらない人に良くある傾向と、内定を得るための対策ついて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目次
転職先が決まらなくても焦らなくて良い
転職活動を進める中では「想定外に転職先が決まらず、焦りを感じている」という方もいるでしょう。しかし、焦って安易にミスマッチな転職先を選択してしまうと、入社した後に後悔するなど、本末転倒になりかねません。
一般的な転職先が決まるまでの期間
一般に転職活動の期間は「3カ月前後」と言われており、「もうすぐ3ヶ月なのにまだ決まらない」などと不安になる方も多いと思います。ただ、株式会社リクルートの調査(※1)によると、転職活動開始から入社までの期間は30代で平均3.6カ月、40代で平均4.1カ月、50代で平均4.2カ月。6カ月以上かかった人もそれぞれ20.2%、24.6%、26.8%と2割を超え、時間をかけて転職を実現するケースは少なくありません。
焦って決めるよりも、納得できる企業に転職することが大切
転職先が決まらなければ焦りや不安を感じるのは当然ですが、視点を変えれば、企業研究をしたり求人に応募したりするプロセスの中で、より多くの選択肢やチャンスに出会えると考えることもできます。企業を見る目を磨き、経験値を積み、自身を見つめ直すことで、最終的に希望に合致する転職先が見つかれば、その後はより満足度の高いキャリアを歩むことができるでしょう。
株式会社リクルートが行ったミドル世代の転職動向の調査(※2)によると、ミドル世代(本調査では40~59歳をミドル世代とする)の転職者数は2014年を1とすると、2023年は5倍に増えていることがわかります。伸びている理由の一つとして「企業の採用ニーズが増加している」ということが考えられ、経験豊かなミドル世代の人材を即戦力として採用する企業も見られます。
したがって、今の転職活動のボトルネックがどこにあるかを確認し、しっかりと対策を打てば、自身にマッチする転職先を見つけられる可能性は高くなるでしょう。
転職先が決まらない人の5つの特徴と傾向
まずは、これまでの転職活動をなるべく客観的に振り返ってみましょう。転職先がなかなか決まらない人には、いくつかの傾向があります。ここでは、転職が決まらない人の特徴や陥りがちなポイントについて一例を紹介します。
1.転職の軸が定まっていない
「転職して事業を立ち上げたい」「○○の専門性を磨きたい」といった「転職の軸」が定まっていないことは、転職先が決まらない主な要因のひとつと考えられます。特に年代が上がるほど、年収、ポジション、企業規模など、どうしても希望条件が多くなりがちです。最終的に何を優先するのかをあらかじめ決めておかないと、年収などの好条件につられて応募企業を選んでしまったり、面接に進んでも志望動機等をうまく伝えることができずに選考を通過できなかったりと、転職活動が思うように進まない可能性があります。
2.周囲の影響や不満だけを理由に転職活動を始めた
「こんなキャリアを積みたい」という明確な目的がなく、「同年代が転職して年収や役職が上がったから」などと周囲に影響を受けて転職活動を始めたケースなどが該当します。特に転職経験がない人や、若い頃に一度転職を経験し、その頃のイメージのまま転職活動をしている人に良く見られるようです。
この場合は志望動機が曖昧になりやすく、キャリアの棚卸しや自己分析にもあまり熱心でないことから、自己PRも単なる経験の羅列になりがちです。ある程度の経験を積んでいる人材を求める企業にとっては響くものがなく、なかなか採用に至りづらいかもしれません。
また、転職を希望する理由が「会社への不満」のみであるケースも、転職先が決まらない要因になることがあります。面接で転職理由を聞かれたときに、会社や上司に対する批判や不満が噴出してしまえば、「入社後も社内の人を批判するかもしれない」という印象を与えるかもしれません。さらに「不満を感じたらすぐ辞めてしまうのではないか」と定着性に懸念を持たれる可能性もあるでしょう。
3.転職先に求める条件が高すぎて応募数が少ない
希望条件があまりに高い人も、転職先がなかなか決まらない傾向があります。特に、現職(前職)の待遇が良く、「現職と同等かそれ以上でなければ」と条件にこだわりすぎると、条件に見合う求人がとても少なくなってしまいます。選択肢が少ないことに加えて、待遇の良い求人には応募者が集中するものです。求人を厳選して人気企業ばかり応募していると、なかなか選考を通過することができず、想定していた以上に転職活動が長引く可能性が考えられます。
4.応募書類や面接でのアピールが足りない
応募書類や面接でのアピールが足りないことも考えられます。「準備不足や練習不足で上手に伝えることができていない」「アピールしているポイントが、企業の求める人物像とマッチしていない」「多くのアピールポイントを伝えようとして、人物像が一貫していない」など、アピール不足にはいくつかの原因が挙げられるでしょう。
また、複数回の転職を経験している場合、転職理由やキャリアの一貫性に関する説明やアピールが足りないと、それが一因となり、選考に進むのが難しくなる可能性があります。複数回の転職は、以前ほど珍しいことではなくなり、採用企業側も業界・職種によっては求職者の転職回数を重要視しなくなってきています。とはいえ、新卒採用中心の企業などでは、定着性の観点から、依然として転職回数を気にする傾向があるようです。
5.応募企業への理解や関心が薄い
ミドル世代で転職に苦戦する人に見られるのが、「自分の職歴・実績のアピールが中心となり、応募企業への理解や興味・関心が低い」傾向です。
「アピールしたいこと・できること」が多く、「この条件は外せない・こういったことをしたいし、できる」という希望条件や軸が明確になっているものの、採用する企業側からすると、「スキルセットなどはぴったりだけど、自社に対する志望度がよくわからない」と捉えられてしまうケースです。自己アピールを強調した結果、「自分を評価してくれる企業ならどこでもいいように見える。それなら、職歴や実績が多少不足していても、しっかり調べて質問や提案をしてくれる熱意ある人材を採用したい」という判断になることもあるでしょう。
原因別・内定を得るための対策
転職活動に苦戦している人が内定を得るためには、これまでの何を見直し、どのような対策を講じればいいのでしょうか。対処法の一例をご紹介します。
自身の市場価値を正確に把握し、条件を整理する
自身の市場価値を高く見積もりすぎて、条件の良い人気企業にばかり応募していると、他の応募者と比較されて、なかなか選考を通過できないケースがあります。特に、結婚や育児、介護など、さまざまなライフイベントが発生している場合、転職先に対して譲れない条件が多くなることが一般的です。まずは自身の市場価値を冷静に分析した上で、「譲れない条件」と「望ましい条件」を整理し、優先順位を明確にすることで、選択の幅も広がるでしょう。
転職方法を見直し、応募数を増やすことも視野に入れる
転職活動の方法はひとつに絞る必要はありません。どうしても希望条件に合致した転職を実現したいのであれば、応募数を増やすことも一案です。転職エージェントからの紹介を受けながら、自分でも転職サイトに登録して希望に合致した求人に応募する、ビジネス系のSNSに経歴を入れてオファーを待つなど、さまざまな方法を積極的に活用することがおすすめです。
また、現在は「リファラル採用(社員の紹介で人材を採用する手法)」を導入する企業も見られます。知人を経由して応募することができれば、採用に至るまでのプロセスを短縮できる可能性もあるでしょう。
企業へのアピールポイントを整理する
ある程度経験のある人材を中途採用する企業の目的は、「組織の業績改善」「事業の立ち上げ」「若手育成」など非常に具体的であり、求める人物像も明確です。したがって、どれほど高度なスキルを多く備えていても、アピールするポイントが企業の求める人物像とマッチしていなければ、評価には繋がりません。まずは求人情報などを熟読し、企業の募集背景を把握したうえで、求められる能力と紐づいた自分の経験・スキルを洗い出し、書類や面接で伝えるべきポイントを整理しましょう。
また、「自分ができること」を主張するだけでなく、「入社したら○○をしたい」「○○で貢献したい」といった志望意欲を見せることも大切です。特に、管理職の採用は入社後の周囲への影響力が大きいため、組織や事業に対してコミットする意欲があるかどうか、「この人と働きたい」と思えるかどうかも、企業にとって重要な判断材料となるからです。
転職回数が多い場合は対策を練る
近年は、転職回数の多さで選考が不利になるとは限りませんが、転職回数が多いことが気になる方は、対策を練っておくと安心です。転職の理由を聞かれた時の回答を準備して、面接の練習をしておくと共に、職務経歴書の書き方も工夫しましょう。職務経歴書は必ずしも勤務先を時系列で記載する必要はありません。履歴書のように時系列で1社ずつ職歴を書いていくと転職回数が目立つため、職歴を「営業」「開発」といった業務内容ごとにまとめ、メリハリをつけるという方法もおすすめです。
また、転職回数が多くても、自身のキャリアビジョンが明確であれば、マイナスに評価されることは考えにくいでしょう。例えば、「飲食店ビジネスに興味があったので、飲食店で現場経験を積み、店舗拡大のノウハウを学ぶためにチェーン展開をしている企業に転職、その後、経営を学ぶためにコンサルティングファームに転職」など、キャリアが一貫していることを採用担当者に対してアピールすることをおすすめします。
なお、スキルや実績重視で転職回数をあまり気にしない企業もたくさんあります。特に、IT・Web業界、外資系、成長段階のベンチャー企業などはその傾向が強いので、業界・企業の選択の幅を広げてみても良いでしょう。
面接対策を見直す
プレゼンなどで話すことに慣れている人ほど、あまり面接の練習をしない傾向があります。しかし、一問一答で自身のことを相手に伝えていく面接は、プレゼンとは別物。準備が足りなかったせいで、採用担当者に「なぜ?」と深掘りされて同じ答えを繰り返してしまったり、要点がまとまらないまま長く話し、内容が薄くなってしまったりする失敗も多いものです。
限られた時間で強みや意欲をアピールするには、やはり事前準備と練習が大切です。「転職理由」「志望動機」「自己PR」といった代表的な質問に対する回答を原稿にまとめ、何度か繰り返し口に出しておけば、本番でも慌てずに対応することができるでしょう。
また、経験が豊富な管理職や専門職などの場合、積極的なアピールが裏目に出て自信家に見えてしまったり、言い方に尊大さが出てしまったりするケースもあります。面接でへりくだる必要はありませんが、印象で選考が通らないのはもったいないことです。「一緒に働きたい!」と思ってもらえるよう、笑顔を交えて表情を柔らかくするなど、伝え方を工夫してみましょう。
転職活動から離れてリフレッシュするのも一つの方法
転職先が決まらずに「疲れてしまった」「メンタルが保たない」と感じる場合は、一定の期間を決めて、転職活動から距離を置くのも一つの方法です。
基本的に転職活動が行き詰まっているときは、視野が極端に狭くなる傾向があります。休止することは勇気がいるかもしれませんが、メンタルを整えるためには大切なことです。その間は家族との時間や趣味を楽しんだり、初めての場所を訪れたりなど、視点を変えて物事を見る機会を持ってみましょう。自身を客観視し、思考が整理されることで、再開後の転職活動は案外スムーズに進むかもしれません。
転職が決まらず焦っているなら転職エージェントやスカウトサービスも利用を
転職先がなかなか決まらない時は、第三者に相談するのが有効。キャリアのプロである転職エージェントに相談することもおすすめです。
転職エージェントでは、転職活動の棚卸しを行い、「何がボトルネックになっているか」を客観的に整理・分析すると共に、転職理由や転職の軸、キャリアプランなどを整理して、転職活動の方向修正をサポートしてくれるでしょう。さらに、転職市場の動向やマッチする企業の情報提供、応募書類の改善や面接対策など、転職支援のプロの視点から転職活動全般についてアドバイスを受けることができます。
スカウトサービスを通じて転職エージェントを利用した場合も、同様のサービスを受けることが可能です。転職実現のための心強い味方になってくれるでしょう。
粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
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