転職活動の際、面接時間の長短が合否に関係するのかが気になる方は少なくないでしょう。そこで、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏に、面接の平均時間や合否との関係性、さらに、面接が長くなるケース・短くなるケースや、長くなった場合に失敗しやすい注意点などを聞きました。多忙な中で面接の日程調整をする際に、気をつけたいポイントについてもご紹介していきます。
目次
転職面接の平均時間は?長さは合否に関係する?
最初に、一般的な面接の平均時間及び、時間の長さと合否との関係性について解説します。
平均時間はおよそ30分〜1時間
業種や職種にもよりますが、一般的な面接の所要時間は30分~1時間程度です。企業の方針や採用担当者の考え方によっても変化しますが、必須とする質問項目をすべて聞けるような長さに設定していると考えていいでしょう。また、応募者数が多い場合は、なるべく多くの応募者に会うために、一次面接などの選考を30分で区切っている企業もあります。
オンライン面接の場合、あらかじめ時間が設定されているケースも
オンラインによる面接時間の長さも、対面による面接と大きな違いはありません。しかし、接続トラブルなどを想定し、面接時間を長めに設定しているケースもあります。そのため、予定時間より短く終わることもあるでしょう。
また、オンラインの場合はシステム上で面接時間の終了時刻を設定しているため、長引かせることなく、予定していた時間通りに終わらせる傾向があります。さらに業務全般をオンライン化している企業では、次の業務や面接に向けて別室に移動する時間が不要のため、終了時刻の直後に予定を詰め込み、時間厳守で面接を終えるケースも少なくはありません。
「面接時間が長いと採用に有利」というわけではない
基本的には、面接時間の長さは合否に関係ないと考えていいでしょう。後述するように、単純に面接担当者が話好きのために長引くケースもあれば、応募者の回答が浅いなどの要因から、掘り下げに時間が掛かるケースもあります。一方で、企業側の採用への意思が強い場合でも、応募者の志望度の高さや他社の選考状況などを探るために細かい質問を重ねて長引くこともあれば、採用判断の最終確認として短く終えることもあります。
いずれもケースバイケースのため、面接時間の長短を気にするよりも、常に的確な回答を心掛け、アピールしたい要点を伝えきることが重要です。
面接が長くなる場合・短くなる場合をケースごとに紹介
面接時間が長くなる場合や、短めで終わる場合、具体的にどのような理由が考えられるでしょうか。ケースごとに詳しく解説しましょう。
面接時間が長くなるケース
面接時間が長引く場合に、考えられるケースを紹介します。
採用担当者が話し好きの場合
採用担当者の中には話好きなタイプもいます。自分自身の実績や経験を話しすぎてしまったり、事業や仕事についての説明が丁寧すぎたり、アイスブレイクや世間話でつい盛り上がってしまい、気づいたら面接終了時間を過ぎているパターンも少なくありません。とはいえ、一般的に面接には客観的な評価基準があり、採用担当者と話が合ったために時間が長くなったとしても、それと結果とは関連がありません。逆に、枝葉の話が多すぎて「重要なことを聞いてもらえない」「聞けていない」と不安になる場合は、応募者から逆質問をするなどして、会話の主導権を握るのも1つの方法でしょう。
掘り下げに時間がかかる場合
「職務経歴書の内容が薄い」「質問に対する応募者の回答が的を射ない」「回答が短く表面的」といったことから、採用担当者がさまざまに角度を変えて質問をしなければならない場合、一つ一つの要素の掘り下げに時間がかかり、面接時間が長引くことがあります。また、応募者側の準備不足というよりも、採用担当者の経験不足が原因で、的確な質問ができず、掘り下げに時間がかかるケースもあるでしょう。
採用の意思が強い場合
予定していた質問を終え、企業がほぼ採用の意思を固めた場合、応募者の志望度の高さや他社の選考状況、希望する年収や条件などを探るために、細かい質問を重ねて時間が長くなることがあります。また、自社の魅力や入社するメリットについて理解してもらおうと採用担当者が説明を重ね、面接が長引くケースもあるでしょう。その場合は、ほぼ良い結果に結びつくことが多いですが、応募者は最後まで気を緩めずに対応することが大切です。
管理職・専門職の場合
組織のマネジメントを任される管理職や、高度な専門性や知見が求められる専門職の場合、企業側の確認事項が多いために、面接が長引くこともあります。募集しているポジションの求人要件を満たす経験・スキルがあるか、企業文化とマッチするかを判断するため、より具体的に掘り下げていくので、そもそもの面接時間を長めに設定する企業も多いでしょう。逆に、管理職や専門職に就いている応募者が多忙であることに配慮し、個々の要望に応えて一回の面接時間を短くし、回数を増やすケースもあります。
面接時間が短くなるケース
面接時間が短くなる場合に、考えられるケースを紹介します。
応募者数が多い場合
大手企業や人気企業の求人で応募者が多数いる場合は、1人当たりの面接に多くの時間を使うことが難しいため、できるだけ多くの応募者と会うために、面接の時間を短めに設定することがあります。また、未経験者を受け入れる募集や、若手人材を多数採用する場合などは、スキルよりも人柄や人物タイプを重視することが多いため、1人ひとりの枠が短くなる傾向があるようです。
採用担当者が多忙の場合
企業の採用担当者が他の業務も兼任しているなど、多くの仕事を抱えている場合や、新卒採用、年度末などで多忙な時期の場合は、面接にあまり多くの時間をかけることができません。また、面接を担当するのが、現場の営業部門や技術部門の管理職や、役員クラスの人である場合も、本来の業務が忙しいという理由で、面接が短めに切り上げられるケースがあります。
採用の意思が固まっている場合
採用の意思が固まっている場合、先述したように面接が長くなることもありますが、逆に短く終わるケースもあります。たとえば、応募者のスキルが求めるレベルに十分達しており、面接では最低限の必要事項や、人物タイプを確かめるのみでOKという場合。また、採用判断の最終確認として経営層と顔合わせをするだけで終えることもあります。「早く次のステップに進んで、他社より先に内定を出したい」という気持ちの表れでもあるでしょう。
面接時間が長引く失敗ケースと、管理職・専門職の注意ポイント
ここでは、面接時間を長引かせて失敗するケースと、気をつけたい点をご紹介します。また、管理職・専門職が特に気をつけたい注意ポイントも合わせて解説します。
応募書類の内容が薄いケース
応募書類の内容が薄いために、経験やスキルレベルに対する的確な判断ができないケースはよくあるものです。採用担当者は、さまざまな角度から質問を重ねることが必要になるため、面接時間も長引きやすくなります。応募書類に書く内容を再考し、アピールしたい要点をしっかりと盛り込むように意識しましょう。
管理職・専門職の注意ポイント
管理職・専門職の場合、豊富な経験・スキルがあるために応募書類に書くことが増え、情報量が多い一方で、内容が薄くなってしまうケースがよく見られます。過去の経験・スキルや実績を整理し、企業側の求める人材要件を考えた上で、マネジメント力、専門性などのアピールにつながる要点をしっかり書くことが重要です。
応募者が一方的に盛り上がるケース
「会話が盛り上がって長引いた」と思っていても、実際には、「盛り上がっていたのは応募者だけ」というケースは少なくありません。それによって採用担当者が所定の質問項目をすべて聞くことができなくなれば、採用判断の材料が減り、応募者自身にとっても不利になる可能性があるでしょう。
また、退職理由を質問され、現職や前職の職場に対する愚痴が止まらなくなる方も少なくはありません。ネガティブなテーマを長引かせることがマイナス印象につながることもあるので注意しましょう。面接後には、自分自身で振り返りを行い、独りよがりの内容になっていなかったかを客観的に分析しておくといいでしょう。
管理職・専門職の注意ポイント
質問に対して話せる経験やエピソードが豊富なため、次々に話してしまうケースがあります。また、マネジャーやプロジェクトリーダーとして会話の中心に立つことが多いために、一人で気持ち良く話し続けてしまう失敗ケースもあります。応募企業が求めていることを想定し、アピールしたいエピソードを整理しておきましょう。また、自分の持ち時間を意識し、「聞かれたことに対して、客観的かつ端的に回答すること」もポイントです。
概要のみしか話さないケース
実績や成果を“概要”としてまとめて話してしまうことで、応募者自身の工夫点や挙げた成果が具体的に伝わらず、掘り下げることに時間が掛かってしまうケースもあります。反対に、曖昧・抽象的な言葉でしか語ることができない場合も同様のことが言えます。アピールしたいエピソードを軸に、「どう考え、どう創意工夫し、どのような成果を挙げたのか」というプロセスが伝わるよう、話の展開をまとめておきましょう。また、経験したことの幅や深さ、客観的な実績を伝えるために、携わった案件の規模が伝わる数字や共通認識を持てるキーワードを盛り込むこともポイントです。
管理職・専門職の注意ポイント
営業職での経験が長いなど、話すことに慣れている方は、「その場に行けば話せるだろう」と考えて準備不足で臨み、いざ面接の場では概要しか語れなくなってしまうケースがあります。経験してきた仕事の概要を話すだけでは、スキル・知識のレベル感や仕事に対する取り組み方・価値観などが伝わらないので、プロセスや考え方、工夫点まで伝わるエピソードを準備しておきましょう。より多くの判断材料を企業に提供することが大事です。
採用担当者の人数が多いケース
採用担当者の人数が多く、さまざまな角度から質問をされるケースです。人事担当者、現場の責任者、役職者などが同席していた場合、それぞれの立場からより掘り下げた質問をされるために、面接時間が長引くこともあります。たとえば、現場担当者には実務レベルの視点、役職者には事業レベルの視点で、面接担当者の職位に合わせた想定問答を考えておき、臨機応変に対応することがポイントです。端的な回答を心掛け、質問者にきちんと意図が伝わったかどうかを確認することで、一つひとつの質問をクリアしていきましょう。
管理職・専門職の注意ポイント
管理職・専門職は、企業において重要なポジションとなるため、一回の面接に対し、社内の多くの関係者が採用担当者として参加することがよくあります。早い段階から役職者が出てくることも多く、経営理念や業界の展望などについての質問にうまく回答できず、長引くケースがあります。応募先の企業や業界に対する理解を深めておくことがポイントです。
面接時間の設定・日程調整で気をつけたいポイント
最後に、面接時間の設定・調整をよりスムーズにするために知っておきたいことを解説します。
面接日程を現職の仕事に影響させない方法
面接は、早朝・夜間などの業務時間外で日程調整してもらうこともできます。特に、管理職・専門職などは採用人数が少なく、経験・スキル・実績からすでに候補者を絞り込んでいることも多いため、業務時間の前や昼休みなどの時間帯にも対応してくれるケースがあります。また、役職者が面接を担当する場合、相手も多忙であるため、「業務時間外の方がスムーズに調整できる」というケースもあります。
応募企業から指定された面接時間に対応できない場合
現職の業務が多忙な管理職・専門職などは、応募企業から指定された「1時間」などの面接時間に対応できないケースもあるでしょう。まずは、応募企業の人事担当者に相談してみましょう。1時間の面接を「30分ずつ、2回に分けて実施する」など、柔軟に対応してくれる企業もあります。
調整のやりとりを迅速に進めることも重要
「仕事が忙しいから」と日程調整の返事を後回しにせず、迅速に進めるように心掛けましょう。特に、管理職・専門職の場合、「忙しいからこちらに合わせてほしい」と考えてしまう方もいますが、「志望度が低い」「調整能力が低い」などのマイナス印象を与える可能性があります。また、他の候補者の選考を優先的に進めるケースもあるので、迅速にやりとりすることが重要です。どうしても調整が難しい場合は、現在の状況を伝えると同時に、「○月○日以降なら調整しやすい」など調整可能なスケジュールをきちんと連絡しましょう。
転職エージェントの活用で、面接時間の調整もスムーズに
面接の日程や時間は、転職エージェントを活用することでスムーズに調整ができます。企業とのやりとりを一任することができ、転職エージェントが進捗状況を把握してくれているため、連絡が遅れたり、うっかりメール返信を忘れたりするミスも防げます。また、早朝・夜間など、イレギュラーな面接時間の調整は、企業に直接相談しにくいものですが、転職エージェント経由であれば相談しやすく、効率的に転職活動を進めることができるでしょう。
粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。