【社労士監修】転職先が決まっている場合、失業保険を受け取ることはできない?

ハローワークを通じて転職活動を行っている人は、一定の条件を満たすことで「雇用保険の基本手当(失業保険)」が給付されます。では、内定が出てすでに転職先が決まっている人は、失業保険を受け取ることができるのでしょうか。ここでは、失業保険の受給要件について触れたうえで、転職先が決まっている人が失業保険を受け取れるかどうかについて詳しく解説します。

雇用保険の基本手当(失業保険)の受給要件

雇用保険では、失業中の生活を心配することなく新たな仕事を探し、できるだけ早く再就職できるように、ハローワーク窓口で職業相談・職業紹介を受けるといった求職活動を行うことを条件に給付を行っています。「基本手当」と言われる通常の失業保険を受けるためには、以下の2つの受給要件を満たす必要があります。

  • ハローワークに来所し、求職の申込みを行い、就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても、職業に就くことができない「失業の状態」にあること。
  • 離職の日以前2年間に、被保険者期間が通算して12カ月以上あること。ただし、特定受給資格者又は特定理由離職者については、離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6カ月以上ある場合でも可。

(出典:厚生労働省職業安定局 ハローワークインターネットサービス)

転職が決まっている場合は、失業保険を受け取ることはできない

上記の受給要件からも分かるように、失業保険を受けるためには、就職先が決まっておらず、ハローワークを通じて求職活動を行っている状態であることが条件になっています。そのため、すでに転職先が決まっている場合は、失業保険を受け取ることはできません。

特に自己都合で退職した場合は給付制限期間が設けられているため、受給を申請してもすぐに失業保険が受け取れるわけではないので注意しましょう。給付制限とは、会社を自己都合で退職し、「待機期間7日+2カ月または3カ月間、失業保険を受給できない期間」を指します。

転職先が決まっている場合は「再就職手当」も該当しない

退職前に転職先が決まっている人のなかには、「失業保険を受給できない代わりに、再就職手当が受け取れる」と考えている人がいるかもしれませんが、こちらも該当しません。なぜなら、雇用保険における「再就職手当」は、失業保険を受給している人が、その給付日数を一定以上残して早期に再就職できた場合に支給されるものだからです。そもそも失業保険の対象外である人に支給されることはありません。

では、すでに内定が出ているにも関わらず、失業保険の受給を申請し、そのうえで再就職手当を受けようとした場合にはどうなるのでしょうか。

再就職手当を受給するための要件の中には、「失業保険の受給資格決定前から採用が内定していた事業主に雇用されたものではない」という項目があります。そのため、失業保険の受給前から内定が出ているケースでは、再就職手当を受給することはできません。再就職手当の支給申請書には、再就職先となる企業が採用内定日を証明する欄が設けられており、虚偽の記載をした場合には不正受給となります。

失業保険を受給しないのに「離職票」は必要?

転職先が決まっている場合は、失業給付を受けることはできません。そのため、「前職の勤務先から離職票を受け取らなくていい」と考えている方もいるかもしれませんが、以下の2点の理由から受け取っておくと安心です。

転職先で求められることがある

離職票とは、勤務先の事業所を管轄するハローワークで発行されるもので、失業給付を受けるために必要となる書類です。離職したことを証明する公的な文書であり、基本的に会社が手続きを行い、ハローワークから届いたものを退職者が受け取ります。

すでに転職先が決まっており、退職後すぐに働き始める場合は離職票は不要です。しかし、雇用保険の取得手続きにあたり、転職先から「雇用保険の被保険者証や被保険者番号」を求められます。被保険者番号は、被保険者証やマイナンバーでも確認できますが、離職票にも記載されています。手元にあると便利でしょう。

転職先をすぐに辞めた場合、失業保険の受給で必要となる

転職したにも関わらず、思い描いていた職場とは違い、すぐに離職してしまうというケースは決して珍しいことではありません。転職先を短期間で辞めてしまった場合、退職日以前の2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して12カ月以上(会社都合の場合は6か月以上)なければ失業給付を受けることができないため、前職の被保険期間と通算する必要が出てきます。

転職先だけでは被保険期間の要件が満たせない場合であっても、前職の期間を通算すれば要件を満たす可能性が高まり、より多くの失業保険を得られる可能性があります。万が一、転職先を早期に離職した時のことも考え、被保険期間を通算できるように離職票を保管しておくと安心です。

【監修】

村松 鋭士(むらまつ さとし)氏

社会保険労務士

2010年に【TFS&SPIRAL社会保険労務士事務所】を開業。また、社労士事務所と併せてチームビルディングを主体とした人材育成研修やコンサルティング、コーチングを行う【株式会社スパイラル・アンド・ゴーゴー】を設立。社労士として15年以上、企業の人事労務に携わってきた経験をもとに、労務相談や人材育成研修、評価制度などを一体的に実施。

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