雇用保険被保険者証とは?必要なタイミングと再発行の方法【社労士監修】

オフィスで働く人の様子

転職時に必要になる書類の一つに「雇用保険被保険者証」がありますが、会社に入社するときや、退職するとき以外に目にする機会があまりないため、いざ必要になったときに「どこにあるのだろう?」と慌ててしまう方も多いかもしれません。ここでは、雇用保険被保険者証とはどのような書類か、いつもらえるのか、必要となる場面、紛失した場合の対処法などを、社会保険労務士の岡佳伸氏が解説します。

「雇用保険被保険者証」とは

まず「雇用保険被保険者証」とはどのような書類なのかを解説します。

雇用保険の加入者に交付される証明書

雇用保険被保険者証とは、雇用保険に加入していることを証明する書類です。従業員を雇った時に会社がハローワークで雇用保険への加入手続きをし、ハローワークから交付されます。正社員だけでなく、契約社員やパートなどの非正規雇用でも、次の要件を満たしていれば、事業主は従業員を雇用保険に加入させる必要があります。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
  • 31日以上の継続した雇用が見込まれること
  • 学生ではないこと(夜間、通信制の学生を除く)

雇用保険被保険者証の見本と記載内容

雇用保険被保険者証には次の情報が記載されています。

  • 11桁(4桁−6桁−1桁)の被保険者番号
  • 被保険者の氏名(カタカナ)と生年月日

●雇用保険被保険者証の見本

雇用保険被保険者証の見本

被保険者番号とは、雇用保険に加入している被保険者一人ひとりに付与される番号です。雇用保険に初めて加入するときに発番され、一度発番されると、転職して会社が変わっても番号は変わることがありません。原則として同じ番号を一生使い続けることになります。

※出典:ハローワークインターネットサービス「雇用保険の具体的な続き」

健康保険証や離職票とは違うので注意

退職・転職の手続きに関連して、雇用保険被保険者証と間違われやすいものに、健康保険証や離職票があります。これらは全く別の書類なので注意しましょう。

健康保険証

医療機関を利用するときに提示する健康保険証は、正式名称を「健康保険被保険者証」と言います。雇用保険被保険者証と似ているので混同しないようにしましょう。健康保険は、会社を辞めた時点で脱退し、新たに入社した会社の健康保険に加入するため、退職する際には健康保険証を会社に返却します。

●健康保険証の見本

健康保険証の見本

※出典:全国健康保険協会「健康保険証(被保険者証)の交付」

離職票

離職票は、離職したことを証明する書類で、ハローワークで失業保険(雇用保険の基本手当)を申請したり、国民年金の保険料免除申請や、雇用保険の教育訓練給付制度を利用したりするときに必要なものです。通常は、退職後2週間〜1カ月ほどで会社から郵送又はメール等で送られてきます。

●離職票の見本

離職票-1の見本

※出典:ハローワークインターネットサービス「雇用保険の具体的な続き」

「雇用保険被保険者証」が必要になるタイミング

雇用保険被保険者証は、どのような場面で必要になるのかを解説します。

転職して新しい会社に入社するとき

転職して、新しい会社で雇用保険の加入手続きをする際には、雇用保険被保険者番号が必要になります。前の会社から交付された雇用保険被保険者証を一度提出し、返却された後は自分で保管するのが一般的です。なお、雇用保険被保険者証が手元になくても、雇用保険被保険者番号がわかれば、それだけで手続きすることも可能です。

教育訓練給付金を申請するとき

教育訓練給付は、一定の条件を満たす在職中の人や離職した人が、指定の教育訓練講座を自己負担で受講したときに、かかった経費の一部についてハローワークから給付金を受けられる制度です。この給付の申請の際に、雇用保険被保険者証が必要となります。

老齢厚生年金の決定請求をするとき

65歳未満の方が老齢厚生年金の決定請求をする際は、年金請求書と共に、雇用保険の被保険者番号を証明することのできる書類を添付する必要があり、雇用保険被保険者証が必要になります。

「雇用保険被保険者証」はいつもらえるか

雇用保険被保険者証は、会社に入社した際に、会社がハローワークへ雇用保険の加入手続きを行うことで、ハローワークから交付されます。入社手続きが終わった後は、原則として会社から本人に手渡され、本人が保管することになっていますが、中には紛失を防ぐために会社で保管し、退職するタイミングで渡されるケースもあるようです。会社が預かっている場合は、退職する時に必ず受け取るようにしましょう。

「雇用保険被保険者証」がもらえないケース

雇用保険被保険者証が手元にない場合、会社が預かっている以外にも、次のようなケースで交付されていないことがあります。

雇用保険の加入要件を満たしていない

雇用保険の加入要件は、原則として週20時間以上、かつ31日以上継続して雇用されることです。この条件に当てはまらない条件で働いていた人は、雇用保険の被保険者になる資格がないため、雇用保険被保険者証も交付されません。

会社の役員である

会社役員、取締役といった立場の人は、原則として雇用保険の対象にはなりません。

公務員である

正規の公務員は雇用保険の適用対象外と定められているため、雇用保険に加入できません。民間企業に転職した上で加入要件が満たされれば、雇用保険の対象となり、雇用保険被保険者証が交付されることになります。

会社が雇用保険の加入手続きを怠っていた

本来あってはならないことですが、会社が入社時の雇用保険の加入手続きを忘れていたため、ずっと未加入だったというケースもあります。雇用保険料が天引きされていなかった場合、遡って加入できるのは最長で2年までですが、雇用保険料が天引きされていて、記録が給与明細などに残っている場合は、上限なく何年でも遡って加入手続きをすることが可能です。

「雇用保険被保険者証」の有効期限

離職してからフリーランスになったり、育児や介護によるブランクがあったりした場合、再就職をせずに7年以上が経過すると、発番されていた被保険者番号がハローワークで使用されなくなります。そのため、雇用保険被保険者証の有効期限も切れてしまいます。離職後7年以上経過してから再就職する場合は、雇用保険に再加入する際に、ハローワークで新たな雇用保険被保険者証を発行してもらうよう会社に依頼しましょう。

「雇用保険被保険者証」がない場合の対処法

転職や退職など、雇用保険被保険者証が必要になった場合に、手元になかったり紛失してしまったりしたときの対処法を解説します。

会社に問い合わせる

まずは、雇用保険被保険者証を会社で保管していないか、または雇用保険の加入手続きがきちんとされているかどうかを、会社に問い合わせてみましょう。雇用保険被保険者番号が必要な場合、在職中であれば勤務先が把握しているので、会社に直接確認するのが早道です。離職した人も、以前働いていた会社に問い合わせるといいでしょう。

マイナポータルで被保険者番号を確認する

雇用保険被保険者証の現物がなくても、雇用保険被保険者番号さえわかれば、多くの手続きが可能です。マイナンバーカードを持っている人が、在籍している会社や、これまで在籍していた会社にマイナンバーを届け出ている場合は、マイナポータルで雇用保険に関する手続きの履歴(資格取得・喪失など)を確認することができます。そこには、雇用保険被保険者番号の情報も含まれています。

ハローワークで再発行の手続きをする

雇用保険被保険者証を紛失してしまい、上の方法で被保険者番号を調べることもできない場合は、原則として住所地を管轄するハローワークで、雇用保険被保険者証を再発行してもらうことができます。窓口まで足を運ぶ必要がありますが、即日無料で再発行が可能です。手続きには、前に働いていた会社の正式名称と連絡先、本人確認ができる身分証明書、印鑑が必要となります。

なお、新しい会社に入社するときに雇用保険被保険者証も離職票も手元になく、雇用保険被保険者番号がわからない場合でも、会社が雇用保険加入の手続きを行う際に、ハローワークに照会してもらうことが可能です。その場合は、本人の姓名、生年月日、履歴書に記載した前の会社の正式名称から調べてもらうことになります。

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社会保険労務士法人 岡佳伸事務所 岡 佳伸(おか よしのぶ)氏

大手人材派遣会社、自動車部品メーカーなどで人事労務を担当した後に、労働局職員(ハローワーク勤務・厚生労働事務官)としてキャリア支援や雇用保険給付業務、助成金関連業務に携わる。現在は開業社会保険労務士として活躍。各種講演会講師および記事執筆、TV出演などの実績多数。特定社会保険労務士、キャリアコンサルタント、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。