転職活動では、「つらい」と感じることもあるかもしれません。しかし、ネガティブな気持ちで活動していると、面接の場で採用担当者に伝わり、本来の力が発揮できない可能性があります。転職活動をつらく感じるときにはどのように対処すれば良いのか、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
「転職活動がつらい」と感じる4つの理由
転職活動を「つらい」と感じる場合、その要因に解決策のヒントがあるかもしれません。まずはなぜ「つらい」と感じているのか、自身の心理状態を冷静に見つめ直してみましょう。よく見られるケースとしては、主に次の4つが挙げられます。
仕事と両立する場合、心身ともに余裕がなくなる
転職活動は、応募書類の作成、求人情報収集、応募企業の検討・選択、面接対策など、やらなければならないことが多くありますが、これらの作業を進めるのは負担がかかります。また、面接時間を捻出するために、時間のやりくりの面で余裕がなくなっていることもあるでしょう。その期間が長引いてくると、気力・体力共に消耗してしまうケースがあります。
不採用が続き、自己肯定感が失われている
不採用が続くと、自身の経験・スキル、さらには人間性まで否定されたような気分になり、落ち込むことがあります。焦る気持ちから、経験・スキルにマッチしていない求人にも応募してしまい、さらに不採用を重ね、悪循環にはまってしまうケースも見られます。転職活動の方向性を見失い、さらに焦燥感が強くなる人は少なくないでしょう。
希望の求人が見つからず、閉塞感を覚えている
希望にマッチする求人がなかなか見つからないと、自身の可能性が閉ざされたように感じ、将来への不安が募ってくるものです。様々な事情により、望む条件や希望する仕事を変えられない場合、なおさらでしょう。
転職活動が長引き、先の見えない不安に襲われている
様々な理由で転職活動の期間が長くなってくると、「いつになれば転職できるだろうか?」と先の見えない不安に襲われることがあります。特に、すでに仕事を辞めている場合は、ブランク期間の長期化や安定的な収入を得られないことへの不安を強く感じるようになるかもしれません。
つらい気持ちを乗り越えるための対処法
転職活動が「つらい」と感じるとき、どのように対処すれば良いのでしょうか。つらさの解消につながるヒントをご紹介します。ご自身の状況に応じて取り入れてみてください。
選考対策を見直してみる:不採用が続く場合
不採用が続いている場合、選考対策を見直してみることは方法の一つです。例えば、次の方法で、各選考プロセスの対策を見直してみましょう。
職務経歴書をブラッシュアップする
書類選考を通過できない場合は、職務経歴書の内容や書き方を見直しましょう。所属企業・部門・担当業務の経歴を列挙するのみで、「強み」が伝わっていない場合もあるかもしれません。転職サイトで紹介されている書き方見本を参考にする、転職エージェントに添削してもらうなどの方法でブラッシュアップを図ってみることも有効です。
面接での「伝え方」を見直す
面接で不採用となるケースが多い場合、「伝え方」を見直してみましょう。自身の受け答えを動画に撮って話しぶりを客観的に見てみる、あるいは、転職エージェントで面接対策のサポート を受けてみるといった方法があります。また、「成果」だけをアピールしている場合、成果に至ったプロセスも語れるように整理してみましょう。
転職活動の方針を見直してみる:希望の求人が見つからない場合
希望の求人が見つからない場合、転職活動の方針を見直してみることは一つの手段と言えます。例えば、次の方法で方針を再検討してみましょう。
希望条件を緩和する
転職エージェントやスカウトサービスに登録している場合、いくつかの条件を外したり、希望年収を下げたりすることにより、紹介やスカウトが増える可能性があります。その結果、「条件を下げてでも入社したいと思える企業に出会えた」といったケースは多々あります。
情報入手ルートを拡大する
転職エージェントやスカウトサービスなど、複数の転職支援サービスを利用する、SNSを活用する、知人に声をかけて「リファラル採用(従業員が自社に対し、友人・知人を入社候補者として紹介すること)」の可能性を探るなど、情報入手ルートを広げていくという手もあります。
リフレッシュする時間を設ける
疲弊した状態で転職活動を続けると、顔色や表情に表れることもあり、面接で覇気がない印象を与えてしまうかもしれません。無理をすると、体調を崩す恐れもあります。気力・体力が損なわれてきたと感じたら、転職活動を一時中断し、リフレッシュの時間を設けてみましょう。その場合、あらかじめ中断期間を決めておくと、転職活動への復帰もしやすいでしょう。期間を決めたら「この期間は休む」と気持ちを切り替えましょう。
ただし、転職活動に全く関わらなくなってしまうと、転職活動を進める気力を取り戻すのに時間がかかる可能性もあります。状況や心境によっては、次のような取り組みは継続しても良いかもしれません。
- 転職サイトや転職エージェントからの新着求人情報はいつでも受け取れる状態にしておく
- 空き時間に、転職やキャリア関連の書籍やサイトの記事などを読む
- 空き時間に、キャリア関連のオンラインセミナーなどを視聴する
第三者に相談する
一人で転職活動を続けていて視野が狭くなり、転職活動がうまく進まないケースもあります。その場合、第三者への相談が、無意識のうちの思い込みをリセットする、あるいは、新たな視点を得られるなどの効果をもたらす可能性があります。友人や知人、転職エージェントなど、頼れる第三者に相談してみましょう。具体的な相談先や相談方法などは次項で紹介します。
また、「第三者の意見を取り入れる」という点では、「相談」以外にも方法はあります。転職関連のWebサイトでは、転職事例や転職経験者の体験談などが紹介されているので、それらを読んでヒントを得ても良いでしょう。
心身に負荷が高い場合は転職活動を中断する
つらさの度合いが深刻である場合、転職活動を中断して仕切り直すのも手です。転職活動で感じていた負荷は、時間が解決してくれることもあるでしょう。
そして、現職にお勤めの方の場合は、現在勤めている企業で、今一度、集中して業務に取り組んでみるという選択肢もあります。新規プロジェクトに手を挙げる、異動を願い出る、研修制度を活用して資格取得に挑戦するなど、新たなアクションを起こしてみても良さそうです。
そうして現職の業務に集中することで成果を挙げ、評価を得ることで、新たな展開が見えてくる可能性もあります。現職でやりがいを見出し、転職する必要がなくなったり、転職活動を再開した際に成果をアピール材料として活用できたりするかもしれません。
転職活動のつらい思いを相談できる相手とその方法
転職活動がつらくなったときに相談できる相手には、友人や知人、転職エージェントなどが挙げられます。それぞれ、どのような存在か、また、どのような相談をすると助言をもらえたり、気持ちが軽くなったりする相手なのか紹介します。
友人・知人や家族に相談する場合
友人や知人、家族など、一定の信頼関係があり、自分の長所などもよく理解している人には、心情面の相談することでつらさを軽減できる可能性があります。相手が受け止められる範囲でつらい気持ちを吐き出したり、今の心情を本音で話したりしてみましょう。その気持ちに共感してくれたり、励ましてくれたりするかもしれません。
他方で、転職活動支援やキャリア形成支援に関連する職業に就いている人でない限り、専門家ではないので、転職活動やキャリア形成に関する具体的・実用的なアドバイスは求めすぎず、期待しすぎないようにしましょう。もしアドバイスを受けたとしても「そういった解決策もあるかもしれない」と参考意見の一つとして受け止めるようにしましょう。
転職エージェントに相談する
心情面への寄り添いではなく、つらさの要因となっている課題の具体的な解決策や助言をもらいたい場合は、転職エージェントに登録し、担当者に相談することも方法の一つです。特に、次の場合に相談すると、転職支援のプロとしての客観的観点から助言をもらえる可能性が高いでしょう。
- 転職活動がつらいと感じているが、どのように対処すれば良いのかわからないとき
- つらくなっている原因は理解しているが、解決策がわからないとき、あるいは、すでに解決行動をしているが解消されないとき
相談する際はなるべく、自分の現状を取り繕ったり、恥ずかしがったりせずに、包み隠さず話しましょう。不採用になった企業数を少なめに伝える、面接対策や書類添削をしてもらいたいのに強がって言わないなどの対応をとって自己開示や情報共有が不十分になってしまうと、転職エージェントの担当者は的確なアドバイスができなくなってしまうかもしれません。
また、スカウトサービスを介して求人の案内(スカウト)を受ける形で転職エージェントとのつながりができることがあります。その場合、転職エージェントの担当者との関係は、「案内を受けた求人について」を軸としたものになるため、自ら転職エージェントに登録して相談する場合と比較すると、相談できる内容の幅や悩みの受け止められ方が異なる場合があるかもしれません。他方で、スカウトサービス自体は、自分では気づかなかった求人に関してスカウトを受ける場合があるなど、自分の新たな可能性を知るきっかけの一つになり得るものです。自身の市場価値を知る機会として活用することも一案です。
粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
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