転職活動をしているうちに「疲れた」と感じる方は多いようです。疲労感を抱えながら転職活動を進めると、企業選びの判断を誤ったり、面接で本来の強みを発揮できなかったりする可能性があります。転職活動に疲れたとき、どのように気持ちを立て直せばよいのでしょうか。転職活動に疲れてしまう「原因別」と、「年代別」の対処法を、組織人事コンサルティングSegurosの粟野友樹氏にアドバイスしていただきました。
転職経験者の約半数は「疲れた」と感じたことがある
20代~50代の転職経験者を対象としたアンケート調査(※)で、「転職活動をしていて『疲れた』と感じたことがありますか?」とたずねたところ、「ある」と答えた人は約47%と、ほぼ半数に達しました。「どちらかといえばある」と答えた人は約28%。合わせると8割近くの転職活動者が疲れを感じていることになります。
(※)【調査概要】「リクナビNEXT」がジャストシステムを通じてネット上でアンケート調査を実施。
調査対象:正社員・契約社員として働く20~50代の男女730名 期間:2019年2月6日~2月13日
参考記事:転職活動、どんなときに疲れた?やる気が出ないときの進め方をプロがアドバイス
転職活動においては、求人情報の収集・応募先の検討・応募書類作成・面接日程の確保・面接対策…と、やることが盛りだくさん。面接に至るまでに時間とエネルギーがかかるうえ、思うような結果が出なければ、気分も落ち込み、余計に疲れを感じてしまうものです。
転職活動に「疲れた」と感じる原因は、主に以下の3つになるでしょう。
- 不採用が続いて気持ちが落ち込んでしまう
- 希望条件に合う転職先が見つからない
- 転職活動と現職の仕事との両立が辛い
疲れがたまってくると転職活動そのものを億劫に感じ、その結果、転職活動が長期化してしまったり、転職活動そのものをやめたりする方もいるでしょう。転職活動を続けるにしても、疲れを引きずったままだと面接で覇気がなく見えてしまい、マイナス印象につながるおそれもあります。また企業選びの判断力も鈍ってしまうかもしれません。転職活動で疲れを感じたら、現状を認識して、何らかの対策を取ることが大切です。
【原因・年代別】転職活動に疲れたときの対処法
転職活動に疲れる主な3つの原因別に、対処法をご紹介します。また、疲れを感じる原因は年代によっても特徴があるため、年代ごとの対処法も合わせてご紹介しましょう。
原因別の対処法
まずは、原因別の対処法を解説します。
不採用続きで気持ちが落ち込むとき
書類選考が通らなかったり、面接で不採用が続いたりすると、転職活動に疲れを感じる方が多いようです。「書類選考が通過した」「面接が控えている企業がある」などの場合は「前進感」もありますが、全く結果が出ない状況だと、「自分はどの企業にも必要とされないのだろうか」などと落ち込んでしまうのは無理もありません。
このような場合、そのまま転職活動を続けても意欲的に取り組むのは難しく、面接でも十分な力を発揮できない可能性が高いため、一旦転職活動から離れてリフレッシュすることをおすすめします。1、2カ月ほど休んで意欲が出てきたら、また始めれば良いでしょう。次に始める際は、これまでの転職活動を振り返ってみるのも一案です。改善点があれば、転職サイトへの登録内容を見直す、希望条件を考え直す、書類を作り直すなどで、仕切り直しをしてみましょう。
希望条件に合う転職先が見つからないとき
情報収集を頑張っても、なかなか希望条件に合う応募先が見つからなかったり、応募したい求人が見つかっても、競争率が高くて書類が通らないことが続いたりする場合。「希望通りの転職先などないのでは」という無力感にさいなまれて、疲れてしまうことも多いようです。
そのような状況を改善するには、以下の4つの点を見直してみましょう。転職エージェントに相談し、プロのアドバイスを受けることもおすすめです。
- 希望条件全てを満たす求人を探すと、どうしても選択肢は少なくなります。「譲れない条件」と「妥協できる条件」の優先順位を明確にして、求人の選択範囲を広げましょう
- 求人を探す方法が限定的になっている可能性があります。転職サイト、転職エージェント、ビジネスSNS、知人友人など、できるだけ多くの情報源に当たってみましょう
- 自身の経験・スキルを活かすことができない求人や、自身と企業との共通点が少ない求人ばかり選んでいることも考えられます。転職の方向性をもう一度確認しましょう
- 転職を希望するポジションに対して、経験・スキル・実績が十分ではない可能性もあります。今一度、自身の市場価値を把握して、求人選びに活かしましょう
現職の仕事との両立が辛いとき
仕事を続けながらの転職活動は、経済的には安定しますが、スケジュールがハードで心身共に疲れてしまう方も少なくありません。企業研究や書類作成、面接準備などをするために、睡眠時間や余暇の時間が削られてしまい、ストレスを感じることもあるでしょう。
忙しい方が効率的に転職活動をするには、すき間時間の活用が有効です。例えば毎日20~30分程度の空き時間を利用して、少しずつ職務経歴書を書くなど、無理のない範囲で取り組めば、精神的な負荷が少なく、疲れも感じにくいでしょう。もう一つの方法は、他の人のサポートに頼ること。例えば転職エージェントを利用すれば、求人検索や日程調整、条件交渉などを代行してもらい、求職者は自分にしかできないことに集中できます。
また、「両立が辛い」という方は、何に対しても完璧を目指す傾向がありますが、それは不可能なことだと割り切るのも一案です。「企業研究で分からなかったことは面接で聞こう」「面接対策はこの一時間限定でやろう」など、自分の中でルールや期限を決めておくと、無理なく転職活動が進められるでしょう。
年代別の対処法
次に、年代別の対処方を解説します。
20代の場合
20代の方の場合は、企業からポテンシャルを評価されるケースも多いので、これまでの業界・職種経験を活かす転職も、異業界・異職種へキャリアチェンジする転職も、どちらの道を選ぶことも可能です。つまり選択肢が豊富なゆえに、迷いすぎて疲れてしまう傾向が見られます。
迷いを少なくするためには、まず転職の「軸」を明確にしましょう。これまでの経験を振り返り、次のようなポイントを整理してみてください。
- これまでの仕事でどのような成果を挙げてきたか。その成果につながったのは、自身のどのような強みが発揮されたからなのか
- どのような仕事でモチベーションが上がるのか
- どのような課題や状況でやりがいや楽しさを感じるのか
- 上司・先輩・取引先などから褒められたのはどのようなことか
自分一人で振り返るよりも、第三者との対話のなかで引き出してもらうほうがスムーズに整理できるものです。転職エージェントに相談して、経験やキャリアの「棚卸し」を手伝ってもらうのも有効な手段です。対話によって浮かび上がった自分の強みや志向、そして転職エージェントの客観的なアドバイスが、軸の明確化につながるでしょう。
30代の場合
30代になると、応募企業からは即戦力としてのスキル・実績が求められるようになります。一方、求職者側も結婚、育児、住宅購入などのライフイベントを迎えると、転職先への希望条件が増えていきます。そのため、お互いの条件がなかなかマッチせず、疲れてしまうことがあります。
そのような場合は、企業選びの軸を見直し、緩和できる条件は緩和してみると、選択肢が広がる可能性があります。また、自身の経験・スキルのうち、どの強みを活かすかを考え直すことで、新たな選択肢が見つかるかもしれません。転職エージェントのアドバイスも活用し、選択肢を広げる工夫をしてみてください。
40代以上の場合
40代を迎えると、30代以上に即戦力性が求められるうえ、40代以上が主な対象となる専門職・マネジメントポジションの求人は数が多くありません。応募したい求人がなかなか見つからず、不安感とともに疲労感を感じるようになりがちです。
従ってこの年代の場合、短期集中というよりは、「中長期視点」で転職活動に取り組む方が向いているケースもあります。希望条件に合う求人が出たらすぐに情報が入ってくるように、信頼できる転職エージェントとつながっておくといいでしょう。
転職活動に疲れないための動き方・考え方
転職活動に疲れてしまわないために、どのような心構えが必要なのでしょうか。3つのヒントをご紹介します。
同じタイミングで複数社に応募する
1社に応募し、不採用であれば次の1社に応募…というペースで進めると、なかなか決まらない場合、疲れを感じやすくなります。1社に期待が集中する分、不採用になったときの精神的なダメージが大きくなるからです。
このような疲れを防ぐには、複数の企業に同時に応募する進め方が有効です。短期的には面接数が一気に増えることで忙しくなるかもしれませんが、転職活動を凝縮して進めることができるので、疲れが出る前に決まる可能性が高くなります。また、複数企業に応募していると、1社で不採用になっても「他がある」と思える上に、「○社中○社不採用」など数値で捉えることもできるので気が楽になります。「複数の選択肢から自分で選べる」という感覚も持つことができ、精神的負担が軽くなり疲れを感じにくくなるでしょう。
自分一人で抱え込まない
自分一人で転職活動を進めようとすると、やることが多すぎて時間も手間もかかります。転職エージェントを活用し、代行してもらえる作業は代行してもらいましょう。「経験・スキルにマッチした求人の選定」「面接日程調整」などは転職エージェントが進めてくれます。また、精神的に負担がかかる「条件交渉(給与・待遇など)」も任せることができます。
また、情報収集も、転職エージェントのサポートを受けることで効率化を図ることができます。応募先企業について、採用背景や抱えている課題、選考で重視しているポイントなどの情報を入手することで、独自で企業研究を行う時間を短縮できます。
その他、知人に声をかけて「リファラル採用(従業員が自社に対し、友人・知人を入社候補者として紹介すること)」の可能性を探ることでも、チャンスを得やすくなるでしょう。
マイナスに捉えず、発想を切り替える
転職活動で疲れる原因は、何よりも「不採用による気分の落ち込み」ではないでしょうか。この精神的な疲れは、発想を切り替えることで解消・予防が可能になります。
不採用になると「評価されなかった」「否定された」と、悲観的な気持ちになることもあります。しかし、必ずしも「評価が低かったから不採用になる」とは言い切れません。例えば「面接の評価は高かったが希望年収が合わない」「総合的に高いスキルを持っているが、今回は特定領域の専門知見を求めているのでマッチしない」「入社時期が合わない」など、何らかの経験や条件が「合わなかった」ケースも多いものです。自信を無くさず、「どこが合わなかったのか」を分析し、「合う企業を探す」という発想に切り替えましょう。
また、「転職成功」をゴールに定めると、転職活動が長引くほど、疲れを感じます。そこで、内定を得ることだけを目標とするのではなく、「自己成長」を目標に置いてみてはいかがでしょうか。
転職活動のプロセスで、自身のキャリアの強みを見つめ直したり、これから目指すことを考えたり、様々な企業を知ったりすることは、それだけでも新たな発見があり、自己成長につながります。転職活動を、成長機会・成長手段と捉え、前向きに考えてみてはいかがでしょうか。
粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
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