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人事時代に求めていた“半導体専門の転職エージェント”を、自ら設立。
約21年間、半導体メーカーに勤めていた私は、人事時代に採用業務も担当しており、半導体業界における企業と人材のマッチングを間近に見てきました。多くの求職者にもお会いしてきましたし、複数の人材紹介会社にもお手伝いいただいていましたが、半導体業界は非常に専門性の高いスキルや経験が前提となるため、常に採用には苦労していましたね。当時は半導体業界を専門としたエージェントが少なく、残念ながら企業のニーズと求職者の持つスキルを深く理解したマッチングが実現できていないのではないかと感じていたのです。それならば、私が半導体業界出身のエージェントになることで、採用に困っている企業や、自分らしいキャリアを歩みたい個人のお手伝いができるのではないか。そう考えて起業したのが約10年前のことです。
技術が分かる立場で企業が求める人材要件を読み解き、求職者がお持ちのスキルや経験を客観的に正しく評価した上でご紹介できるのが私の強み。しかし、これを前提にしながらも、一人ひとりの仕事・キャリアにおける価値観を丁寧に導き出すことで、スキルと価値観を掛け合わせた紹介を行っています。半導体業界は特定の業務経験や専門知識が前提となるからこそ、複数の企業で限られた人材を取り合う構造になりやすく、スキルさえマッチするならどの求人でも受かるというケースも少なくありません。しかし、長い目でみると、働く本人がその会社で働く意義を感じ続けられることが、企業・個人双方にとって重要です。そのためには、求職者自身がモチベーションの源泉としているものは何なのかを導き出し、実現できる会社とお会いいただくことが大切。「自分の実力に見合った報酬を得たい」「今よりも技術力を高めたい」「魅力的な仲間やリーダーから刺激を受けたい」といった個人の価値観と、企業の個性のマッチングを心がけていますね。
転職するかどうかに関係なく、長期的なお付き合いを築いていきたい。
これまでにキャリア相談でお会いした方は2500人ほど。その中でも印象深いご支援となった事例をお二人ご紹介させてください。
Aさんに初めてお会いした時は、お勤めだったB社の業績不振により転職を余儀なくされていたタイミングでした。豊富な経験をお持ちで、そのスキルを評価してくれそうな企業は確かにありましたが、キャリアアップできるか、志向性が合うかという観点では、残念ながらそのタイミングではマッチする企業の求人がなく、結局は他エージェントからの紹介でC社に転職をされたのです。しかし、転職後も私は定期的にコンタクトし、情報交換を続けていました。そして3年後、C社の事業再編に伴って再び転職を考えた時に私を頼ってくださり、ご志向にあう求人をご紹介。無事に新たな会社への入社が決まり、最初の出会いから3年越しと時間は掛かりましたが、ベストなマッチングを実現することができました。このように、ご縁があってお会いした方とは、転職する・しないに関係なく長期的にキャリアを支援していくというのが私のスタンス。たとえ他のエージェントで転職を決めた方であっても、分け隔てなくお会いし続けています。
もう一人のDさんは、今から9年ほど前に私からのご紹介で転職された方。転職後3ヶ月ほど経ったある日、「本当に良い会社なんだけど、もう限界です」とお電話をいただきました。疲れ果てた声に驚き、詳しく話を伺ってみると、品質保証のエキスパートであったDさんは、新しい会社のカルチャーや業務のやり方に慣れる間もなく、膨大な量の仕事を任されていたのです。そこで私はDさんに対し、一緒に仕事を整理し「この業務はアウトソースしましょう」「この業務フローを見直しましょう」と業務支援を行いました。振り返ってみると、あの時期はDさんにとって一番の踏ん張り時。どんな人でも一度は壁にぶつかり、それを乗り越えることで成長するものですが、Dさんはたまたまそれが入社後間もなくというタイミングだったのです。
その後、60歳を超えた今も品質保証の責任者として活躍中のDさん。安易に新しい会社を紹介するのではなく、長期的に活躍していくための方法を一緒に考え抜くことが、真のキャリア支援だと感じられた出会いとなりました。
変化の激しい業界だからこそ、“目先の転職”に惑わされず、10~20年先を見据えてほしい。
半導体業界にいらっしゃる方であれば実感されていると思いますが、この業界はマーケットの変化が激しく、企業が大胆な決断をしたり、事業再編を余儀なくされるケースも珍しくありません。しかし、現代社会に必要不可欠な半導体がなくなることはないでしょうし、世界全体でみれば需要は確実に伸びている成長マーケットです。
ここ最近は縮小傾向にあった国内のメーカーも、中長期で見れば巻き返しを図るための準備期間であり、変化の大きなタイミングにはチャレンジングな仕事はつきもの。困難を乗り越えることで一気に成長したいという方にはぜひ挑戦していただきたいフィールドですね。また、外資系の企業はスピーディーな事業判断をされるところが多いので、市場のニーズを読んだタイムリーな開発・製造を実現する力を養いやすい環境。いずれにおいても企業ごとにカラーは異なりますから、あなた自身の志向にあわせてベストな選択を行うことが大切です。
そのためにも、転職したくなってから動くのではなく、悩みがあるならまずはご相談いただきたいですね。ご自身の市場価値は、社内での評価と必ずしもイコールではありません。外の空気を一度吸ってみて、客観的な尺度で自分を測ってみた上で、本当に転職活動をするかどうか決めても良いと思います。
企業のニーズは常に変化していますから、ベストマッチする求人に出会えるかは、運と縁もあります。「今すぐ転職せざるを得ない」というタイミングになって慌てて活動するのでは、満足行く結果にならないリスクもありますので、10年~20年先を見据えて気軽にご相談いただき、機会をうかがっていかれることをお薦めします。
HRC株式会社 代表取締役
松垣 潔さん
東洋大学工学部卒業後、外資系半導体メーカーの日本法人である「日本テキサス・インスツルメンツ株式会社」に入社。プロダクトマーケティングエンジニアを11年務めたのち、人事に異動。組織戦略の企画立案を手掛けるかたわら、自社の採用活動も担当し、半導体業界の様々な求職者を面接してきた。10年間の人事経験を経て2007年に同社を退職し、HRC株式会社を設立。半導体業界に特化した転職エージェントとして、これまでの相談者は2500名以上にもなる。