試用期間中の退職は可能?退職する場合の手続きと注意点

転職先の会社に入社後、数カ月間は「試用期間」に設定されるケースがあります。入社後まもなく、会社に対して違和感を覚え、「退職したい」と考えた場合、退職することはできるのでしょうか。 試用期間中に退職する場合の手続きや注意するポイントについて、組織人事コンサルティングSegurosの粟野友樹氏にアドバイスいただきました。

試用期間とは

試用期間とは、企業が従業員を正式に採用するかどうかを決定するために、入社後に設定する期間を指します。試用期間中、選考過程では判断できなかった能力・適性などを見極めようとします。試用期間の長さについて法律やルールなどはなく、一般的には1カ月~6カ月、最長で1年程度と、企業が独自に設定しています。

企業が入社者を見極めようとするのと同様、入社者にとっても実際に働いてみての感触を確認する期間といえます。ミスマッチであることに気づいた場合、試用期間中に退職することも可能です。試用期間中/正式採用後にかかわらず、労働者には「退職の自由」が認められています。とはいえ、試用期間中だからといって、即日に退職できるわけではありません。しかるべき手続きをとる必要があります。

試用期間の退職の手続き方法

試用期間中の退職の手続きは、正社員と同様です。多くの会社では「就業規則」において、退職する際は事前に申し出なくてはならないといった規定を設けています。申し出る期間は企業によって異なりますが、一般的に退職希望日の1~2カ月前が多いようです。就業規則を確認し、規定に従って手続きをしましょう。

最低でも2週間前に退職の意思表示をする

労働者が退職したい場合は、民法で最低2週間前に会社に告知することが定められています。企業の就業規則で規定された申し出の時期と、民法が規定する「2週間前」では、法的には後者が優先されます。退職を決意したら、退職したい日の2週間前には会社に退職意思があることを相談しましょう。

ただし、採用されたポジションが重要であるほど、後任人材の採用は難易度が高く、時間がかかる可能性があります。会社が早期に採用活動を始められるよう、なるべく早いタイミングで退職意思を伝えた方がいいでしょう。

仕事の引き継ぎを進める

退職の意思を固めたら、後任者に引き継ぐ準備を進めておきましょう。業務に使用する資料やマニュアルなどを整理し、自身が担当した業務やプロジェクトなどの進捗状況を記録しておくと引き継ぎがスムーズです。

会社から指示された退職手続きを行う

退職までの流れやスケジュールは企業によって異なります。提出する書類やその書式、提出する時期などを確認し、会社の指示に従って手続きを進めてください。

試用期間中の退職の注意点

入社後にミスマッチに気づいたら、なるべく早く軌道修正を図りたいと考えるのも無理はありません。しかし、試用期間中の数カ月で退職すると、次の転職活動にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。原則として、試用期間中に退職しても「職務経歴」として履歴書に記載する必要があります。在籍期間の短さに採用担当者が不安を抱き、退職理由を聞かれる可能性が高いでしょう。そこで採用担当者が納得できる説明ができなければ、選考で不利になるかもしれません。

このように、マイナスの影響も考慮して、早期退職は慎重に判断してください。最初は「合わない」と思っても、しばらくこの会社で働いてみることで得られる経験やスキル、キャリアなど、プラスになるポイントに目を向けてみてはいかがでしょうか。また、入社したばかりでまだ慣れていないだけ…ということも考えられます。不満を抱いていることは、自身の思い込みであったり、上司に相談することで改善できたりする可能性もあります。いきなり退職を申し出る前に、悩んでいることを上司に相談してみましょう。

それでも退職に踏み切り、転職活動に臨むのであれば、なぜミスマッチが生じてしまったのか、前回の転職活動を振り返って考え、次の転職先選びに活かしてください。

試用期間中に退職した場合の履歴書の職歴欄の書き方

先にも触れたとおり、試用期間中に退職したとしても、企業への入社・退職歴はすべて履歴書に記載するのが基本ルールとなっています。もし、入社・退職歴を記載しなかった場合、その「ブランク」の期間をどう過ごしていたか、面接で問われるでしょう。そこで事実が判明した場合、「経歴詐称」と見なされる恐れもありますので、職務経歴を省くことは避けましょう。

なお、履歴書に記載する際「試用期間中に退職」などと書く必要はありません。
通常の入社・退職歴と同様に記載します。

<書き方例>

「令和○年○月 株式会社*** 入社」
「令和○年○月 株式会社*** 退職」

履歴書を見た採用担当者は、前職の在籍期間の短さに目を留め、懸念を抱く可能性があります。退職した理由が正当なものであれば、履歴書の備考欄や職務経歴書などに理由を記載しておいてもいいでしょう。「入社前に聞いていた条件と異なっていた」「家庭の事情の急変」といった理由は、納得を得やすいといえます。

「正当な理由である」という納得を得る自信がなければ、職務経歴書に「入社前の企業研究不足、面接での確認不足」について反省を述べる一文を入れておく手もあります。また、短期間ながらも担当した業務を通じて学んだことを書き添えてもいいでしょう。

【アドバイザー】

組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

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