世界的なIT企業であり、転職希望先としても注目を集めている Google。実際に中途入社した人たちは、何を求めて Google へ飛び込み、その環境でどのような手応えを感じているのでしょうか。今回は、大学の研究職からソフトウェアエンジニアに転身し、「Google検索」の開発を手がけている浜田玲子さんにお話を伺いました。
アイデアを製品化して社会に届け、ユーザーの役に立ちたい
――浜田さんが Google に入社されたのは2012年と伺っています。前職でのご経験と、転職に踏み切った理由を教えてください。
以前は大学や研究機関で、情報処理分野の研究職を務めていました。
研究者の役割にやりがいを持っていましたが、「こんなアプリケーションがあれば皆さんの役に立つはず」というアイデアを持っていても、学会で論文を発表するところで終わってしまうことに寂しさを感じていました。
あるとき、ベンチャー企業に勤務する知人が私のアイデアに興味を持ってくれて、「チームを貸すから、試しに作ってみよう」と。そこで実際に開発を体験したら、すごく楽しかったんです。「チームで一つのものを作り上げることは自分に向いている」と気付き、ソフトウェアエンジニアへの転向を考えました。
―― Google を選んだのはなぜですか?
転職にあたり、「チームで働ける」「扱うプロダクトのユーザーが多い」「最先端」などを希望軸としていました。
Google に興味を持ったのは、研究者としてデータ量と速さに一目置いていたからです。当時、大学から発表されるような最新テクノロジーは、企業が実装・製品化して一般ユーザーに届くまで10年ほどかかると言われていました。その頃、Google のあるプロダクトが大学の最新研究を超えているのを目の当たりにし、衝撃を受けたんです。「Google の中身を見てみたい」と面接を受けてみたところ、採用されました。
――入社前と入社後では、Google へのイメージは変わりましたか?
入社前のイメージは、「世界中から集まった頭のいいエリートの集団」であり、「失敗したら怒られそう」。ところが、予想外に皆さんフレンドリーで驚きました。「サポートするために仲間がいるんだよ」と、どんな質問にも気軽に応じてくれて、失敗にも寛容で。すごく助けられましたね。
最初は英語での議論についていくのも大変でしたが、追いついていないときはフォローしてもらえたし、発言もしっかり聞いてもらえました。
今も外部の人から「外資系は競争が激しくて、失敗したら追い出されるんでしょ」なんて言われることがありますが、Google はまったく逆。「助け合う」カルチャーが根付いています。
また、入社前にはブラックボックスのように情報が閉じられたイメージを抱いていましたが、入社してみるとグローバル単位であらゆる情報がものすごいスピードで共有されていて、情報の透明性も高いと感じました。
「論破」し合う議論は皆無。同じ目標に向け、アイデアを出し合う
――現在のお仕事内容、仕事の進め方を教えてください。
ソフトウェアエンジニアとして、プロダクトの開発を行っています。Google 製品には「Google Maps」「Chrome」「YouTube」などさまざまなものがありますが、私のチームの担当は「Google 検索」。Google で情報を探すユーザーに対し、適切な検索結果を提供するためのアルゴリズムを開発しています。
日本向けではなく世界中のユーザーのために、世界中のオフィスにいる検索開発チームと連携しながら、日々品質向上に取り組んでいます。
Google のエンジニアの役割はプロダクトごとに異なりますが、どのチームにも共通するのは、エンジニア自身が現状の課題分析から提案、設計、テストまで、すべての段階を担うところ。つまり、一通り何でもできることが求められます。
計画段階ではミーティングが多く、実装のタイミングではコードを書くことに専念します。必要なリソースを確保した上でプロジェクトを開始するので、無理のないスケジュールで進められます。
働く時間が個人の裁量に任されているので、柔軟な働き方ができ、希望するワークライフバランスを実現できています。ただ、自由度が高い分、自身のパフォーマンスをいかに最大化するかを常に考えて行動する必要はあります。
――どのような面白さ、やりがい、醍醐味がありますか。
「コーディングに集中している時間が好き」というエンジニアも多いですが、私は転職理由でもあった「チームの仲間と一緒に作り上げる」ことに喜びを感じます。
アイデアを出さなければならないときも、1人で考えるより、誰かと対話しながら導き出すことが多いですね。
「ブレインストーミングセッション」と呼んでいますが、何人かに「私のアイデアを聞いて」「こんな悩みがあるから一緒に考えて」などと呼びかけると、快く応じてくれます。
どれぐらいのメンバーでセッションを行うかは個々の自由ですが、私は6人程度のメンバーで行うことが多いです。
最初はテーマに興味がある数人からスタートし、進むにつれて人数を増やして多様な意見を集めることが多いですね。あるいは、アイデアに関するドキュメントをシェアし、好きな時間にコメントを返してもらうときもあります。
「論破してやろう」という人はいなくて、全員が「どうしたらユーザーがハッピーになるか」という同じ目的を見据えてアイデアを出し合うので、議論がとても楽しいんです。
そしてもちろん、大規模なプロダクトやサービスをローンチしたときに大きな反響が得られるのもやりがいの一つです。世界のユーザーに届けられる Google だからこその醍醐味です。
無意識のバイアスが取り払われた、フラットな組織
―― Google の環境・風土で魅力を感じているのはどのような点ですか?
先ほども挙げたとおり、「助け合う」文化です。チーム内にかぎらず、世界各国のメンバーにも質問や相談をすると丁寧に応じてもらえて、お互いのリソースを活用できる環境があります。
また、DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)が推進されている点も魅力に感じています。性別・国籍・宗教などをはじめ、あらゆる違いや個性が尊重され、情報や機会へのアクセスにおいてすべての人に公平性が保証されています。
社内で評判が高いトレーニングに「Bias busting training」というものがあります。これはアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)を排除するというものです。
私自身、母が専業主婦であるせいか、このトレーニングを通じて「家事・育児は女性の役割」といった無意識のバイアスを持っていることに気付けました。
全員がこうした無意識のバイアスを意識し、少しずつ行動を変えていくことで、フラットな組織が築けていると思います。
そして、自身の業務以外のことにもいろいろとチャレンジする機会が多いのはいいと思います。
例えば、就業時間の20%を、担当業務以外の部署やプロジェクトでの活動に充てられる「20%ルール」。
興味を持ったテーマを実際に体験してみて、「楽しい」「しっくりこない」などとわかるので、次に進む道を見極めながら選んでいくことができます。
異動に関してもフレキシブルで、他のチームや他の国への「社内転職」も可能。どんどん新しいチャレンジをしたい人には魅力的な環境だと思います。
――今後の目標、目指すキャリアとは?
私はその場その場で興味を持った方向へ進み、今に至っています。今後も先のことを決めすぎず、自分に合ったキャリアを柔軟に選んでいきたいと思っています。
最近、上司からの勧めもありマネジャー職に就きました。現在はテックリードとチームマネジメントを兼任しています。
チームの規模が大きくなっていく中で、今までに経験がない課題にも直面するでしょう。新たなチャレンジにあたり、マネジャー向けのトレーニングや、世界のマネジャー同士が相談し合えるコミュニティなどを活用していこうと思います。
――元・研究職のお立場から、Google への転職に興味を持っている研究職の皆さんへアドバイスをいただけますか。
「自分の名前で論文を書き続けたい」という方は、ソフトウェアエンジニアにはその機会がないので志向に合わないと思います。ただ、Google にもリサーチ部門があり、リサーチ職のポジションなら論文を書くこともできます。
そして、論文を書く過程での分析・実験といった経験は、ソフトウェアエンジニアの仕事でも役に立ちます。
Google のソフトウェアエンジニアには、元・研究者や博士号まで取得した人も多数います。特定の専門分野にこだわらず、幅広くチャレンジができる人には、やりがいのある役割だと思います。
Google では「この分野しかやらない」というスタンスでいるのはとてももったいないと思います。いろいろなことにチャレンジできる環境を、どんどん活用してキャリアを広げていってほしいですね。
グーグル合同会社 製品開発部ソフトウェアエンジニア
浜田玲子さん
大学や研究機関で情報処理分野の研究職を務めた後、2012年 Google にソフトウェアエンジニアとして入社。現在は「Google 検索」の開発を担当。
企業の概要
世界最大の検索エンジン「Google」を運営する、グローバルインターネット関連企業。1998年にアメリカで設立され、日本法人は2001年8月にアメリカ国外初の現地法人として設立されました。Google マップやGmail、YouTubeなどのウェブサービスや、Google Chrome、Google ドライブなどのデスクトップ・モバイルアプリケーションなども手掛けています。