事業変革を目指しているが、それをリードできるコア人財がいない…多くの企業が直面する人財課題に真正面から挑み、経営者の頭の中にある人財像を明確化してハイクラス人財を送り込んだのがリージェントの山下氏だ。その中には、お互いの想いをつかめていなければ実現できなかったマッチングがあった――。「GOOD AGENT AWARD 2022」ミドルシニア部門・特別賞を受賞した事例をご紹介する。
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大規模な組織改編を機に、コア人材のニーズを掘り起こす
香川県を地盤とする化学メーカーA社。手掛ける製品は精密機器や電子部品、自動車部品など多方面に使用されており、ニッチ分野でトップシェアを持つ製品もある。創業以来、海外にも拠点を設けるなど、順調に業績を伸ばしてきた。
そんな同社が2022年、大幅な組織改編を実施、新社長も就任した。同社を担当するリージェントの山下裕記氏は、「事業内容も含め、会社が大きく変わろうとしているのではないか」と感じ、新社長に今後の方針について伺うべく行動に移した。
「これまでA社とは基本的に人事課長とのやり取りが中心。社長はもちろん、役員や各部門のトップに会う機会もほとんどありませんでした。しかし、創業来どちらかというと堅実で保守的な経営を続けてきた同社が、大幅な組織改編を敢行し、ホームページには『新規事業の積極展開』など大きな信念やビジョンが掲げられていて、『変わろうとする姿勢』が強く感じられました。是非とも新社長の目指す未来を詳しく聞きたいと考え、自社コンテンツでの取材という名目で社長アポを取ることに成功しました」(山下氏)
社長インタビューでは、海外拠点を含む全メンバーが同じ方向を向いて業績を拡大していく大切さや、地方から世界に発信するために新規事業を積極的に立ち上げていきたいという方針などを聴くことができた。A社は主力製品を軸に取引先を拡大して来たが、近年は成長曲線が緩やかになっており、社長の言葉の端々から「現状のままではさらなる事業成長は見込めない」との危機感も伝わってきたという。その中、事業改革や新規事業立ち上げをけん引するコア人財がいないという課題もつかむことができた。これまで堅実経営を続けてきたA社では、新規事業を立ち上げ、スケールさせる経験をした人がおらず、そういう人財を育てる機会もなかったのだ。
そこで山下氏は、社長の“やりたいこと”から逆算し、そのやりたいことを実現するために不足しているものを洗い出して、具体的な人財要件に落とし込んでいった。
「今まで接点が持てなかった各部門長ともアポを取り付け、仮説立てした人財要件を持ち込んで目線合わせを徹底。人物像を明確化して、コア人財の新たなポジションを複数創出しました。そのうえで、自社内の他のコンサルタントと情報共有を行いながら、A社が求める人物像に合い、かつ理念やビジョンに共感できそうなハイクラス人財とのマッチングに注力しました」(山下氏)
この結果、新規事業推進責任者、M&A兼グローバル財務室長、IT戦略次長、プラントエンジニアリング次長、広報リーダー、ITインフラリーダー、産業保健師など、これまで社内にはいなかったハイクラス人財を含め半年で7名の採用に成功。この間、社長や各部門長との打ち合わせは、30回以上は実施し、細かな目線合わせを行ったという。
「転職を相談したい」…社長経験者からの依頼を受け、即行動
時を少し戻し、A社の新社長に取材を申し込んでいた頃のこと。山下氏はこのタイミングで、化粧品メーカーB社の社長を務めているC氏から転職の相談を受けることになる。
B社は、化粧品事業をゼロから立ち上げたC氏がけん引してきた会社。同社の化粧品は口コミで人気が広がり、芸能人にも愛用者がいるほどで、現在は大手企業のグループ会社となっている。
そんなC氏が親会社の意向によって、社長を退任することが決まり、「次のステップを考えたいので転職をサポートしてほしい」と依頼を受けたのだ。
「社長経験者からの転職相談に驚きつつも、私の頭の中にはすぐA社の新規事業のことが浮かびました。何度もA社と打ち合わせをする中で、新規事業のテーマとして、化粧品などのBtoCビジネスの話が出てきていたからです。何よりC氏は、BtoCの化粧品事業をゼロから立ち上げ、人気商品にまで育て上げた手腕の持ち主。そして、地域の発展に貢献したいという思いも強い方です。A社社長とも目線が近しく、人物タイプも合うだろうと感じました」(山下氏)
早速C氏に、A社の事業方針や社長の思いを共有。そのうえで、新規事業責任者のポジションがあることを伝えたところ、「ぜひやってみたい」との言葉を得た。A社社長も「すぐにでも会いたい」と前のめりで、即座に面談が実現した。
面談の場で、両氏はすぐに意気投合したという。A社社長は、会社のありたい姿、そのために今すべきことなどを一からC氏に共有。新規事業責任者として、0→1の立ち上げはもちろん、すでに芽が出始めている新規事業もスケールさせてほしい、やり方はすべて任せる…と伝えた。C氏は、自分の強みであり貢献できることは新規事業の立ち上げと推進であり、ぜひ任せてほしいと意欲を伝えたという。こうして、社長経験者のマッチングがスピーディーに実現し、C氏のA社への入社が決定した。
「C氏は、業界ではその経営手腕の高さで有名。実は、社長退任の噂が広まると同時に、さまざまな大手有名企業から声がかかったそうです。オファー内容は新規事業の立ち上げや改善などC氏の得意分野が中心で、年収提示額はA社よりも大幅に高い。しかし、C氏は迷うことなくA社を選びました。仕事内容やミッションはもとより、地域の発展に貢献したいとの思いが強く、A社の“地方から世界へ”との思いに心から共感した結果でした」(山下氏)
経営トップの頭の中にある課題をつかみ、必要な人財像を具体化する
入社後のC氏は、社長と密に連携を取りながら、すぐに複数の新規事業を推進し、一部はすでに軌道に乗せることができている。また、次なる新規事業の構想も進んでおり、早くも拠点増設が計画されているという。
C氏本人からは「売り上げへの貢献はまだまだこれからだが、今までの経験をフルに活かしながら毎日面白い仕事ができている」、A社社長からは「C氏は新規事業の立ち上げに関する知識が豊富であり、全幅の信頼を寄せている」と、双方から喜びの声が寄せられている。
山下氏は、今回の事例を振り返ってこう話す。
「経営トップに会い、思い描いている思いや課題を直接つかみに行く大切さを再認識しました。経営者の頭の中にある『こんなことを実現したい』という思いや夢をできるだけリアルにつかみ、それを実現するには何が必要で何が足りないのかを逆算しながら洗い出し、仮説を提案して目線合わせを行うのがわれわれコンサルタントの役割。経営トップの思いがつかめれば、必要となる人財像が精度高く具体化され、企業と求職者双方にとって幸せなマッチングが可能になり、ひいては地域経済の発展にもつながります。入社したC氏も、しっかりとご本人の思いやビジョンをつかんでいたからこそ、スムーズなマッチングにつながったのだと思っています。これからも、地域活性化に貢献すべく、コンサルタントとして介在価値を発揮し続けたいと考えています」(山下氏)
転職者・企業へのメッセージ
【企業様へ】
大切なのは、企業の発展やビジョンを実現するためには何が必要で、何が足りないのかを洗い出すこと。われわれコンサルタントがともに紐解き、本当に必要な人財像を明確化すべくサポートし、選考活動から入社後の活躍に至るまで伴走します。
【転職者の方へ】
求職者の思いに寄り添い、伴奏し続けるのがコンサルタントの役目。まずは何に困っていて、何を実現したいのか、われわれにぶつけてください。手触り感のある親身なサポートをさせていただきたいと思っています。
山下裕記氏
株式会社リージェント
国家資格キャリアコンサルタント。香川県三豊市生まれ。山口県の大学を卒業後、地元へ戻り、繊維系総合商社へ入社。量販店や百貨店を中心とする顧客への法人営業や催事での個人営業に従事した後、「人財採用の領域で人と企業の架け橋になり、地域から信頼される存在であり続ける」というビジョンに共感し、株式会社リージェントに入社。香川・愛媛エリアの求職者と企業へ寄り添い、入社後活躍を目指した転職サポートに取り組んでいる。